日本CAは5月25日、ITサービス・マネジメント製品の最新版、「CA Service Management」を発表した。構成アイテムの関係性などを管理する構成管理データベース「CA CMDB」をはじめとする6製品からなり、ITシステムの状態を可視化することで、ITサービス・ライフサイクルの品質、コスト効率を向上させるという。
企業間競争が激化している近年、ビジネスに対するITの費用対効果、品質向上を求める声は年々高まっている。こうした中、多くの企業が注目しているのが、システム投資や運用状況を改善するための手法、ITサービス・マネジメントだ。特に、そのベストプラクティスをまとめたITILは、1989年に英国中央コンピュータ・電気通信局による初版が公表されて以来、その利便性の高さから、英国や米国、オーストラリア、日本など各国の企業で導入が進み、いまやサービス・マネジメントのデファクトスダンダードとなっている。
特に、厳しい競争に世界的な不況が重なっているいま、品質とコストの両立に対する企業のニーズは強い。ITILは2001年にITIL V2、2007年にはITIL V3と新版の公開が続いているが、これらの導入を考える企業が非常に多いのも、「ITサービス・マネジメントの在り方こそが、自社の存続や伸展を左右する」という認識が深く浸透しつつあるゆえだろう。
今回、日本CAが発表した製品群「CA Service Management」も、そうした状況を受けてリリース。これまでもITサービス・マネジメント関連製品は提供してきたが、課題ごとに個別製品として提供していたスタイルをあらため、企業をより強力に支援できるよう、6製品に統合、機能強化して再リリースした。
中心となるのは、構成管理データベース「CA CMDB」。構成アイテムの検出をはじめ、アイテム同士の関係性を可視化し、変更があればその履歴を記録する。これにより、アイテム変更に伴うITサービスの問題を未然に防ぐとともに、ビジネスへの影響も把握できるという。
CMDBの仕様基準「CMDB Federation」に準拠した製品については、IBMやマイクロソフトなど、CA以外の他社製品とも情報連携・統合できる点が大きな特長だ。CA CMDB自体はこれまでも提供していたが、今回は完全日本語対応を行った。
一方、ITILで「サービスサポート」範囲として定義されている、「インシデント」「問題」「構成」「リクエスト」「変更」といった各プロセスを管理するのが、「CA Service Desk Manager r12.1」だ。インシデント受付・記録や、それに対応可能な担当者へのエスカレーションなどを行う「サービスデスク管理機能」を持つ。また、過去の問題と回避策をまとめたFAQの作成・公開、ITユーザー自身による自己解決を促す自然言語検索機能などを提供する「ナレッジ管理」機能や、サービス品質の計測・レポートを行うBI機能もある。ちなみに、この製品は、ソフトウェアのITIL対応状況を判定するPink Elephant社提供の「Pink VERIFY」認定をITIL V3ベースで取得しているという。
「CA IT Client Manager r12」は、サーバやクライアントPCなど、所有資産の把握、管理を支援する。サーバをはじめとする各種資産を可視化するインベントリ機能をはじめ、ソフトウェアやパッチを配布する機能、OS自動インストール機能のほか、集中管理したWindows/Linuxデスクトップをリモートコントロールできる遠隔保守機能などを備えている。
このほか、IT資産の申請から配布、廃棄までのライフサイクルに渡って、資産の構成情報、利用ソフトウェア、所有者、所在、利用状況などを追跡・管理できる「CA IT Asset Manager」、IT運用に管理会計手法を導入し、ITサービスの依頼から提供までの流れと掛かったコストを計測・可視化する「CA Service Accounting r12」をそろえ、サービスレベルとともに、「財務の視点でもITサービスの現状を正確に把握し、改善に役立てられる」。
また、“ITは日々の業務を支えるもの”である以上、IT部門とユーザー部門のスムーズな連携も重要だ。その点でも、IT部門の複雑な業務やプロセスを分かりやすく整理し、ユーザー部門と共有したり、IT部門が提供できるITサービスを“カタログ”としてユーザーのデスクトップに公開できる「CA Service Catalog r12」を用意した。ユーザ部門からのリクエスト受付や、サービス供給のためのワークフローをコントロールする機能もあり、ITサービスの提供状況を可視化することで、無駄なプロセスの排除や両部門の連携を支援するという。
サービスマネジメント・ソリューションのほか、インフラマネジメント・ソリューション、PPM(プロジェクトポートフォリオマネジメント)ソリューションを担当する営業部長の川崎晃司氏は、「いま、弊社では“潜在価値を引き出す、スリムなIT”──『Lean IT』をテーマに各種製品を提供しているが、CA Service Managementも、“スリムなIT”を実現する重要な製品として位置付けている。本製品によって、顧客企業のIT生産性を25%以上向上させることを目標に、導入事例も交えたより実践的な提案活動を行っていく」と述べた。
CA CMDBは5月25日、CA Service Desk Manager r12.1をはじめとするほかの5製品は6月下旬に発売予定。参考価格はCA CMDBとCA Service Desk Manager r12.1のセット価格で最小25ユーザーの場合1680万円から。CA Service Desk Manager r12.1単体の場合、最小10ユーザーで600万円(ともに税抜き)からとしている。なお、CAの従来のサービス・マネジメント関連製品をすでに導入している場合も、「通常価格より低価格で、容易にマイグレーションできる」という。
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