cash management system / cash management service / キャッシュマネジメント・システム
グループ経営を行う企業体などで、グループ全体の現金や流動資産を一元的に管理し、グループ各社で生じる資金の過不足を調整することで、効率的な資金利用を図るシステムのこと。
CMSは企業グループの親会社もしくは財務統括会社が導入し、グループ全体の資金を統一管理するシステムである。このとき、親会社・財務統括会社は、“グループ内銀行”の役割を果たすことになる。CMSの導入には金融機関が提供するサービスを利用する方法、ITベンダが提供するソフトウェア・パッケージを用いる方法、独自に開発する方法があるが、多くの企業は銀行サービスを導入している。ただし、一部のグローバル企業では自らが開発あるいはパッケージ製品をカスタマイズするなどして、独自にシステムを運用している。
CMSの代表的な機能としては、「プーリング」「ネッティング」「支払い代行」が挙げられる。そのほかに、残高照会・口座振替・送金指示などのファームバンキング機能や、売掛金消し込み、資金繰り管理などを持つサービスもある。
CMS(cash management service)は、コンピュータと通信技術を活用した銀行サービスとして、米国の大手銀行が1970年代半ばに相次いで投入した。当時は提供されたのは、ロックボックス、ゼロアカウントサービス(=プーリング)、ネッティング、金融・経済情報の提供などである。ロックボックスは、1947年にファースト・ナショナル・バンク・オブ・シカゴが大手電機メーカーのRCAのために開発した小切手現金化サービス(当初は人手によるもの)で、これがCMSの原点であるという。
日本では2000年ごろから連結経営が重視されるようになり、グループ全体の資金を効率運用するとともに、コーポレート・ガバナンスやグループ統制を実現するのためのツールとして、CMSの導入が相次いだ。CMSを導入すると、グループ全体の資金状況がガラス張りとなり、子会社統制の度合いが格段に高まる。さらに、グループ全体の資金調達・運用を一元化することにより、有利子負債の圧縮や支払手数料の削減などで大きな効果がある。
これは銀行にとっては貸付量・手数料収入の減少につながるため、当初CMSの提供に消極的だったが、企業側のニーズの変化に対してメガバンクは企業グループ全体の囲い込み戦略に転換し、国内大手企業のみならず、地方の有力中堅企業などにも積極的な売り込みを図っている。このため、地方銀行などもメガバンクへの対抗上、CMSを展開しつつある。他方、大手邦銀が提供するCMSは世界各国の決済システムとの連携などの面で、欧米の大銀行が提供するシステムに劣るとされている。
このようにCMSが銀行にとっての“武器”となってきたことから、地方の金融機関ではITベンダが持つ既存のパッケージソフトをベースにCMSサービスを開発するところが増えている。また、グローバル取引に対応した国際CMSについては世界の大手銀行間での開発競争が激しくなっており、ITベンダとのパートナーシップの下、開発に取り組む例も見られるようになってきている。
なお、クロスボーダー・マルチカレンシーなグローバルCMSについては、各国の法規制や標準などの違いのため、まだ導入が進んでおらず、これからという状況である。
▼『キャッシュマネジメントシステム導入・運営ガイド――グループ経営の効率化を図るCMS』 中村正史=著/中央経済社/2008年12月
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