1つ目の分類として、主要なビジネスアナリシス活動をまとめた3つのKA、「エンタープライズアナリシス(Enterprise Analysis)」「要求アナリシス(Requirements Analysis)」「ソリューションのアセスメントと妥当性確認(Solution Assessment & Validation)」が挙げられます。
これらは、企業組織全体としての要求や個々の利害関係者が持つ要求を、それぞれ明確化し分析したうえで、ソリューション(Solution:ニーズを満たすための解決策)に求められる要求を導き出し、ソリューションを模索する活動です。そして、「そのソリューションが本当に組織に必要とされるものであるのか?」を確認する活動も含まれます。
まさにビジネスアナリシス、組織や業務、また関係者の要求を分析するという活動の本編とも呼べる部分ですね。
2つ目の分類として、前述したビジネスアナリシスの主要活動を支えるための、いわば支援的な活動をまとめた2つのKA、「引き出し(Elicitation)」「要求のマネジメントとコミュニケーション(Requirements Management & Communication)」が挙げられます。
これらは、利害関係者から必要な情報を引き出していく活動や、決めたことや明らかになった要求をしっかり管理し、利害関係者とその内容について合意を形成・維持する活動です。
せっかく要求を明確にして解決策をひねり出しても、それらに対する合意があいまいで、変更を場当たり的に加えることなどしていると、ビジネスアナリシスの活動が破たんしてしまいます。これは、システム開発プロジェクトにおいて、要求管理や変更管理が重要であることとまったく同じです。
3つ目の分類として、主要なビジネスアナリシス活動やその支援活動をどのように行っていくかを計画し、その実行をモニタリングする活動をまとめたKA、「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング(Business Analysis Planning & Monitoring)」が挙げられます。
これは、プロジェクトマネジメントにおける計画や実行監視に相当するものです。ビジネスアナリシスに関するすべての活動は計画に基づいて実行されるものであり、場当たり的に行われるものではないということを意味します。
4つ目の分類として、これらの活動を実施するために、ビジネスアナリストに求められる能力がまとめられたKA、「基礎コンピテンシ(Underlying Competencies)」が挙げられます。
ビジネスアナリシスを実践するためには、知識としてその方法を知っているだけでは十分ではありません。ビジネスアナリスト自身が、論理的な考え方やビジネススキル、コミュニケーション能力を養っていく必要があるのです。
連載の第1回目として、本稿ではビジネスアナリシスが必要とされる背景や、BABOKバージョン2.0全体の概要について紹介しました。
次回から、BABOKバージョン2.0を構成するそれぞれのKAについて見ていくことにしましょう。
後藤 章一(ごとう しょういち)
株式会社豆蔵
数社にてソフトウェア開発業務、技術調査業務、技術講師業務などを経て、現在は主にプロセス改善や標準化に関するコンサルティングを担当。
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