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» 2009年09月18日 12時00分 公開

特集:実用フェイズに入った仮想化(5):仮想化最大の利点はビジネスのスピードアップ──パイオニア (1/2)

仮想化技術の導入により、ビジネスのスピード向上とコスト削減を果たしたパイオニア。同社では、「仮想化のメリットを引き出すためには、最適なリソース配分ができる管理体制と、管理者の技術力が鍵になる」という。

[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]

Xenでシステム開発のスピード向上とコスト削減を狙う

 フラットテレビ、DVDレコーダーなどのホームエレクトロニクス事業、カーナビゲーションシステムなどのカーエレクトロニクス事業を柱に、連年堅調な販売実績を築いているパイオニア。同社では2008年1月、ノベルのサーバOS「SUSE Linux Enterprise Server 10 SP1」(以下、SLES 10)を導入、同製品が標準サポートする仮想化ソフトウェア「Xen」を活用して、仮想環境の本格展開に乗り出している。

 現在は日本ヒューレット・パッカードのブレードサーバ「HP ProLiant BL460c」を使って21台のホストOSを稼働。その上で60台の仮想マシンを運用し、既存サーバの移行と新規システムの構築を行っている。パイオニア 情報戦略部 統括部 企画グループ 副参事の中村正彦氏は仮想化技術を導入した経緯について次のように語る。

 「仮想化の検討を開始したのは、取引先とのBtoBシステムの構築に効率化が求められていたためだ。弊社では以前から部材サプライヤと電子商取引を行っており、ユーザー側の要請を受けて、発注システムなど取引業務に必要なシステムを、われわれ情報戦略部が開発・構築してきた。ただ、ビジネスにはスピードが求められるため、開発は常に時間との戦いになる。一方でコストとのバランスも考えなければならない。これをどう両立するかがかねてからの課題だった」(中村氏)

ALT パイオニア 情報戦略部 統括部 企画グループ 副参事の中村正彦氏

 システム開発では、要件定義や設計作業のほか、ハードウェアのサイジングや調達に一定の時間がかかる。加えて、市場動向に追従するために新規の開発案件は日常的に発生し、システムを支えるハードウェアは加速度的に増加していた。 

 「例えば1つのシステムを作るにもアプリケーションサーバ、Webサーバ、DBサーバと最低でも3台のサーバを要する。さらにバック アップ用のサーバも含めると、1つのシステムに5台のサーバが必要だ。設置スペース、ハードウェア購入費、電力消費量は以前からの懸念事項だった。2004年、仮想化に先駆けてブレードサーバを導入したのもそのためだ」──仮想環境の開発・運用を統括する情報戦略部 第二開発部 先進開発グループ 主事の小澤雅幸氏もそう付け加える。

MSとノベルの提携が本格展開のきっかけに

 時間に追われる開発作業、案件に比例して膨んでいくサーバ台数とコスト、そして機能要件に対して明らかに余っているリソース──これらの問題を解決するためには、やはり仮想化が有効だ。そこで同社でも早くからヴイエムウェアやマイクロソフトの仮想化ソフトウェアに注目し、実際に使ってもみたが、「本格導入にはなかなか踏み切れなかった」(中村氏)という。

 同社の情報戦略部には、中村氏、小澤氏をはじめ、高度な技術力を持つスタッフが多数在籍している。それを生かして、一般のベンダ製品より総所有コストが安いオープンソースの製品を以前から積極的に取り入れており、LinuxとWindowsを併用していたためだ。

ALT パイオニア 情報戦略部 第二開発部 先進開発グループ 主事の小澤雅幸氏

 「これらを仮想環境で確実に稼働させられるのか、ヴイエムウェアやマイクロソフトの製品を本格導入するためには、それなりのコストが掛かることも考えると、動作保証の面で不安が残った」(小澤氏)

 しかし2006年11月、マイクロソフトとノベルが提携し、「仮想化技術も含めて、WindowsとLinuxの相互運用を可能とする」と発表。これはすなわち「無償の仮想化ソフト、XenにおけるWindowsとLinuxの動作保証がなされる」ことを意味していた。コスト面でも以前からXenに注目していた同社にとって、まさしく“渡りに船”となった。

 2007年1月、小澤氏は米ノベルに赴き、Xenのトレーニング・プログラムを受講。実際にソフトウェアを稼働させて完成度を検証し「使える」と判断、中村氏とともに本格的な検討に入った。そして同年6月、ノベルからXenを標準サポートしたSLES 10が発表されたが、「BtoBシステムの課題解決を考えると、1月の動作検証を終えた時点ですでに心は決まっていた」と両氏は口をそろえる。

開発期間を2カ月短縮!ビジネスのスピードが大幅に向上

 現在は物理サーバの耐用年数を4年と限定し、SLES 10とXenを組み合わせた仮想環境に古いサーバから順次移行させるとともに、すべての新規システムを仮想サーバ上に構築している。これにより、物理サーバ台数は着実に減少しつつあるが、中村氏は、「仮想化の最大のメリットは、サーバ統合ではなく、ビジネスのスピードが向上したことだ」と語る。

 「従来、BtoBシステムの構築にはハードウェアの選定、発注だけで1?2カ月かかっていたが、いまは20分ほどで仮想サーバを用意できる。バックアップやセキュリティなど、運用上の細かな設定を含めても1時間もあれば十分だ」(小澤氏)。用意するOSも、従来の設定パターンを基に複数のマスタイメージを用意。稼働させるアプリケーションの要件や仕様に応じて最適なイメージを選び、コピーして若干設定を変えるだけで即、提供可能とした。

 「これにより、システム構築期間が従来比で1?2カ月短くなり、サービスインまでのスピードが大幅に向上した。また、システムが不要になっても、仮想サーバならすぐに稼働を停止させて、ほかのシステムにリソースを使い回せる。開発案件ごとに物理サーバを購入していた従来に比べると、コストメリットはかなり大きい」(中村氏)

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