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» 2009年10月09日 00時00分 公開

日本IBM、「IBM Rational Software Conference」を開催:アジャイル開発の有効性を、経営トップが理解すべき

[内野宏信,@IT]

 年々激化する市場競争に昨今の不況も加わり、ビジネスを支えるソフトウェアの開発には品質、コストに加え、スピードという要件も求められるようになった。これを受けて近年、日本でもアジャイル開発手法が注目されてきたが、まだ浸透しているとはいえない状況にある。では、日本におけるアジャイル開発実践の課題はどこにあるのか――10月8日、日本IBMが開催した「IBM Rational Software Conference」に合わせて来日した米IBM バイスプレジデント マーケティング&ストラテジー担当のスコット・ヘブナー氏に話を聞いた。

開発ライフサイクルを一貫する協働体制を構築

 ヘブナー氏は日本におけるアジャイル開発の実践状況について、「採用事例は着実に増えているが、まだ開発作業の“効率化”といったレベルにとどまっている例が多いようだ」と指摘する。

 「アジャイル開発の目的は、要求定義の変更に機敏に対応しながら、高品質なソフトウェアをスピーディに提供すること。この実践のためには開発チームだけがアジャイル開発手法を実践するのでは十分とはいえない。要件定義を行う組織、ソフトウェアをテストし品質管理を行う組織などが協働して、ソフトウェアライフサイクル全般にアジャイル開発の考え方を適用することが重要だ。日本では各組織がサイロ化しているケースが多い。まずはこれを解消することが、アジャイル開発を本格展開するポイントになるのではないか」(ヘブナー氏)

写真 米IBM バイスプレジデント マーケティング&ストラテジー担当のスコット・ヘブナー(Scott L.Hebner)氏

 これは「組織体制を改善すればよい」といった単純な話ではない。企業組織が世界あるいは全国に点在していれば、地理的、時間的な分断もある。加えて、同一の組織内でも業務上の役割や利害関係をめぐる“コミュニケーションの分断”もあり、物理・心理の両面で“壁”が築かれてしまいがちだ。「これを解決するためには、各部門に所属する全関係者がお互いに必要な情報を共有し、納得したうえで業務を進められる、情報共有のプラットフォームを整備することが大切だ」という。

 ヘブナー氏はその具体策として、ソフトウェアのライフサイクル全般にわたって管理機能を提供する「IBM Rational」シリーズの3製品と、それらの統合基盤「Jazzプラットフォーム」を紹介した。

 1つは「IBM Rational Team Concert」。チーム開発のコラボレーション基盤「Jazz」に基づく製品で、ソフトウェア開発における構成管理、ビルド管理、作業管理の機能を1つに統合することで、開発作業の効率・生産性向上に寄与するという。

 2つ目は、要件定義を行うための管理ソフトウェア「IBM Rational Requirements Composer」(以下、RRC)。アジャイル開発は大まかな仕様だけで開発を始め、細かなサイクルで実装・テストを繰り返しながら開発を進める。RRCは、まだ明確になっていないシステム要求を文書だけでなく、視覚的なイメージで管理可能とすることで、「変わり続ける要件の適切な評価、関係者の効率的な合意獲得に貢献する」という。

 そして3つ目は、品質管理担当者に向けたソフトウェアテストの工程管理ツール「IBM Rational Quality Manager」。テスト状況をWebベースで一元管理し、テスト結果から問題解決の優先順位を決め、納期、リソースなどとのバランスを考慮した効率的な対処に寄与するという。

 「これらをJazzプラットフォーム上で連携させることで、要件定義、開発、品質管理を行う各組織が情報連携できる。つまり、組織、場所、時間、役割という壁を超えて、アプリケーションライフサイクル全体にわたる一貫したアジャイル開発体制が築けるわけだ。さらに、3製品によって自動化すべきタスクは自動化し、業務の達成率、進ちょく率なども正確に把握可能となる。品質、コスト、スピードという3要件を十分に満たせる環境が整う」(ヘブナー氏)

経営層がソフトウェア開発に対する理解を深めるべき

 ただヘブナー氏は、「こうした体制は一朝一夕で築けるものではない」とも指摘する。例えば、日本では開発チーム内で部分的にアジャイル開発を採用しているケースが多いが、この適用範囲を開発チーム内で徐々に拡大する、そのうえで要件定義を行う組織と連動する、といった具合に、各関係者の合意を得ながら段階的に採用していくことが現実的だという。

 「企業資産であるソフトウェアの開発ライフサイクル全体にかかわる取り組みとなる以上、アジャイル開発の本格展開は開発チームだけの問題ではなく、企業全体の問題として認識すべき。その意味で、関係者、関係部門間の合意を得るための十分な準備期間が必要だ」(ヘブナー氏)

 また、日本では開発現場が率先してアジャイル開発手法を取り入れるなど、ボトムアップで適用を進めているケースが多い。しかし「企業レベルの取り組みである以上、CIO、CTOをはじめとする経営層がアジャイル開発の有効性を認識し、トップダウンで体制構築を進めるアプローチも大切だ」という。同社でもこの考えに基づき、IT関連企業や製造業などを中心に、経営層や各業務部門の管理層にも、アジャイル開発体制構築の提案を行っているという。

 ヘブナー氏は、「ソフトウェアは企業のビジネスを支える重要な資産。開発の品質、スピード、コストだけではなく、市場環境、業務環境のニーズを俊敏に取り入れて機能面の継続的改善を追求する姿勢も重要だ。アジャイル開発はこれに大きく貢献する。また、そうした開発体制を整えるためには、開発という業務に対し、経営層は理解を深め、現場層はもっと誇りを持つべきだ。IBMとしてはRational製品の提案を通じて、全関係者が納得に基づいて協働できる体制構築を、効果的にサポートしていきたい」とまとめた。

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