インドオフショア開発における危機管理のポイントインドオフショアの裏話(4)(1/3 ページ)

インドオフショア開発は国内開発と違い、物理的な距離や文化の違いなどから、開発過程において“見えにくい点”が数多く存在する。今回は、この見えにくい点をどう見える化するかについて説明する。

» 2009年11月15日 12時00分 公開
[向井永浩,ソフトブリッジソリューションズジャパン]

 さまざまな文化が異なっているインドオフショア開発。インドオフショア開発は日本国内開発と比較すると、問題をもたらす要素が多く潜在しています。

 つまり、インドオフショア開発を成功に導くためには、この要素をどのように危機管理するかが重要なポイントとなります。今回はインドオフショア開発において、見えにくい要素の危機管理=見える化について説明します。

インドオフショア開発は国内開発と比べて見えない部分が多い

 まず初めに認識するべきなのは、「インドオフショア開発は国内開発と比較すると見えにくい要素が多い」という点です。

 原因としては、「物理的な距離」「商習慣の違い」「文化的な違い」「言語の違い」などが挙げられます。

 例えば、物理的な距離が離れていることで、実際の開発室環境のソフト面だけでなく、ハード面のセキュリティ環境が見えにくくなります。国内環境であればハード面のセキュリティ環境は現地確認が容易ですが、オフショア開発では容易にはできません。

 しかし、決して見ることができない要素が多いわけではありません。見えにくい要素が多いのです。これらの見えにくい要素の危機管理=「見える化」をすることによって、成功(つまり、品質維持やコストダウン)へとつなげることが重要なのです。

見えにくい要素を見える化しよう

 見えにくい要素の危機管理=「見える化」の定性的な方法として、「俯瞰図を用いる方法」「チェックリストを用いる方法」「実施の測定項目を用いる方法」の3種類があります。今回はインドオフショア開発における、「俯瞰図を用いる方法」の注意点を解説します。次回以降、「チェックリストを用いる方法」や「実施の測定項目を用いる方法」について説明します。

 俯瞰図を使った方法は、一般的にシステム構成俯瞰図、スケジュール俯瞰図、要員遷移俯瞰図などを使用し、埋没して見えにくくなった全体的な状況を、高い所から正確に把握する方法です。

 日本の開発現場でも、ごく普通に実施されているでしょう。インドオフショア開発ではこれらの資料を作成する際、日本側視点でインドオフショア側を把握するという一方的な視野でなく、インドオフショア側からも日本側を含めて全体が把握できるという視点が重要です。

 また、下流工程または部分的なモジュールをインドオフショア側で実施する場合が多いと思われますが、インドオフショア側にも、全体システム構造概要を理解してもらう必要があると考えます。

 インドオフショア側で、全体に対するインドオフショア作業の位置を理解することは重要です。なぜなら、全体に対するインドオフショア作業の位置を理解せずして、作業優先度、テスト作業項目の洗い出しは危険だからです。

 実施に際して、インドオフショア側でコーディングをする担当者までは必要ないかもしれませんが、少なくとも、インドオフショア側のマネージャには理解してもらう必要があります。以下に、それぞれの資料について詳細を記載します。

システム構成俯瞰図

 図1は標準的なシステム構成俯瞰図の一例です。

 図1において、「B application」と「C application」開発担当がインドオフショア担当となっています。しかし、共通部分applicationはインドオフショア担当ではありません。

 共通部分applicationに不具合があった場合などは、B applicationとC application側から関連個所は再テストをする必要があります。このような可能性をインドオフショア側と事前に協議するためにも、全体を見渡せるシステム構成俯瞰図を共有しておく必要があります。当然と思われるかも知れませんが、意外とできていない現場が多いです。

ALT 図1:標準的なシステム構成俯瞰図

 ある開発現場では、システム構成俯瞰図がインドオフショア側に共有されていなく、インドオフショア側から提供してほしいとの要望が上がってきました。しかし日本側の開発現場では「全体のことを心配する前に、自分たちに割り振られた仕事をやれ」といった陰口が叩かれていました。全体を共有せず、「オフショア側は依頼した部分的な箇所のみを見ていればよい」という考え方は危険です。

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