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» 2009年11月19日 00時00分 公開

アプリがあなたにつぶやきかける「salesforce chatter」セールスフォースがエンタープライズ向けFacebook、Twitter

[大津心,@IT]

 米セールスフォース・ドットコムは11月18日(米国時間)、同社の年次プライベートイベント「Dreamforce'09」を米国サンフランシスコで開催。同社CEO マーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏が基調講演を行った。昨今規模の縮小が目立つイベントが多い中、年々拡大している同イベントの今年の登録者数は1万9000人を超え、1万人収容できるモスコーニセンターサウスの会場は立ち見が出るほどの盛況だった。

時代はプラットフォームのクラウド化へ

ベニオフ氏写真 ダイナミックな語り口で講演を行う米セールスフォース・ドットコム CEOのマーク・ベニオフ氏

 ベニオフ氏は冒頭、基調講演開始直前に登録者数が1万9000人を超え、1万人のメイン会場と3000人のサテライト会場が埋まる盛況ぶりに感謝の意を述べた。来場者は60カ国以上から来ており、300以上のセッションが予定されているという。

 次に同社の売り上げの現状などを説明。2009年の売上高は13億ドルを達成する見込みで、前日に発表した第3四半期の売上高は前年比20%増の3億3100万ドル、同期に獲得した新規顧客は6万7900社に及ぶという。ベニオフ氏はこの点について、「いまや、3万人規模の企業から100人以下の企業まで、幅広く利用されている。これは、マルチテナント、従量制というSaaS形式ならではの特徴で、あらゆる企業規模にフィットするからだ。従来製品であれば、大企業向けは大企業向け、中小企業へは中小規模向けバージョンとそれぞれ用意する必要があった」とコメントした。

 続いて同氏はクラウド環境の現状を解説。エンタープライズコンピューティングの環境は、メインフレームからサーバ/クライアントへ、そして現在ではエンタープライズクラウドが中心になりつつあると強調。さらに、アプリケーションだけでなく、プラットフォームやアプリケーション開発環境も着々とクラウド化しているとした。

インフラとしてforce.comが成熟してきた

 そのエンタープライズクラウド環境を支えるのが、同社のクラウドプラットフォームに発展した「force.com」だ。force.comはインフラとしてまず重要なセキュリティを強化。全社的にISO 27001を取得し、99.999%稼働を実現して信頼性も評価されているという。

 最近では、「5minutes Upgrade」を実装。これは同社が世界3個所に持つデータセンター間で連携を図り、1個所で問題が発生すると、数分間でほかのデータセンターがバックアップするという仕組み。「通常アップグレードする際には数時間程度サービスを止める必要があったが、この機能を使って、データセンターAをアップグレード中はデータセンターBを動かし続けることで、サービスをほとんど止めずにアップグレードを実現した」(ベニオフ氏)という。

新サービス「Sales Cloud2」はレポートや分析機能を強化

 そのforce.com上で動くのが、「Service Cloud2」「Sales Cloud2」「Custom Cloud2」、そして新サービスの4つだ。

 Service Cloud2は8000ユーザーが利用しており、市場シェア55%を誇るCRM。CRM機能だけでなく、FacebookやTwitterなどのソーシャルサービスを統合している点が特徴だ。新版の「Service Cloud 2」ではこれらの機能に加え、Force.com上で稼働するナレッジベースである「Salesforce Knowledge」、ソーシャルコミュニティサイトにQ&Aコーナーを設置・運営できる「Salesforce Answers」、自社に関連する“つぶやき”をリアルタイムで検出して管理するサービス「Salesforce for twitter」の3つを新たに提供する。

 ベニオフ氏は、「会社はコールセンターにいまだに投資しなくてはならない。例えば、私は先日新しいBlackBerryを買い、ヘッドセットと連動するように設定しようとしたが、そのやり方が分からずに何時間もかかってしまった。このようなユーザーはまだ古い形のサポートサービスを必要としているからだ。新サービスではGoogleとFacebookとTwitterをすべてつなげられるのが特徴だ」と説明した。

 Sales Cloud2は同社のSFA(Sales Force Automation)の最新版。従来より、Salesforce.comではさまざまな営業支援機能を提供していたが、新しい分析機能を追加するほか、レポート機能も強化したという。

スライド写真 新サービス「Sales Cloud2」の新機能一覧。多数の機能が追加された

 新機能の「Salesforce for Outlook」は、ボタンを押すだけでOutlookと同期できる機能。多くのOutlookユーザーから要望が出ており、ベニオフ氏が説明した際にも会場から大きな拍手で歓迎された。そのほか、ほかのスケジューラーと同期を取って連携できる「Cloud Scheduler」や、顧客同士や営業担当と顧客がどのようにつながっているかを可視化できる「Connection Finder」など、さまざまな新機能が追加された。そして、一番重要なのは次世代のレポーティングツール「Report Builder」だという。

 Report Builderは、従来のレポート機能をさらに強化したものだ。Salesforce.com上の営業データや顧客データを整え、Quoteボタンを2回押すだけでPDF形式のレポートが作成できるという。レポート内のグラフも元データが更新されればすぐに連動するほか、Windows MobileやiPhone、BlackBerryなどのモバイル端末でも見ることができる。

 また、同社ではUIを4年ぶりに全面的にリニューアル。同社 マーケティング&アライアンス担当EVPのジョージ・フー(George Hu)氏は「現在のUIに慣れ親しんでいる現ユーザーのことを考え、操作性を悪くしないために、できる限りいままでと同じ位置にボタンを配置するよう配慮した。ただし、『情報を早く見つけられる』『カスタマイズを簡単に行える』という2点に配慮して改良した。また、多くのユーザーに支持されているFacebookのUIも参考にして、ナビゲーションなどを近づけた点もある。今後1年間でさらに改良を加えていく」と、UIリニューアルのポイントを説明した。

同社の4つ目の柱となるソーシャルクラウド「chatter」

 そして、最大の発表となるのが、同社の4つ目のクラウドサービスとなる「Salesforce chatter」だ。chatterは、エンタープライズ向けソーシャルコンピューティングのクラウド版。

スライド写真 「chatter」のデモ画面。社員のつぶやきがTwitterのようなタイムライン形式で表示されるほか、アプリケーションのフィードやアラートも同じようにユーザーに話しかけてくる

 ベニオフ氏は、その背景について「いま流行しているFacebookとTwitterはかなりのブレークスルーだ。両方のユーザーを合わせると5億ユーザーに達し、私も5000人のフレンズがいる。例えば、Facebookに当社の広告予算について相談すると、すぐに50ものコメントがつく。これはかなり活気的で生産性が高いと感じた。この高い生産性をビジネスに生かすべきだと思った。現在の企業コンピューティングはコンテンツ、アプリケーション、コラボレーション、人々がバラバラになっている。Twitterのパワーがエンタープライズにはないのだ。なぜ私はTwitterで知らない人が映画に行ったことは知っているのに、部下が重要な客を訪問したかどうかを知らないのだろうと思ったので、それを知るためのコミュニケーションツールとしてのchatterを開発した」と説明した。

 chatterは、社内のプロジェクトなど目的別にグループを作成し、そのグループに関係のある社員がTwitterのように会話するもの。特徴は、社員のつぶやきだけでなく、関連するアプリケーションのフィードやアラートもつぶやきのように表示される点だ。

 Facebookにおけるプロフィールのような機能も搭載しているため、社員のプロフィールだけでなく、どの社員がどの社員をフォローしているのかなどが分かる。例えば、社内のプロジェクトAに関するグループであれば、そのグループにかかわる社員によるつぶやきやディスカッションの内容だけでなく、関連する社内データが更新されると、そのアラートもそのグループのchatter画面に表示される。

 chatterには、salesforce.com上のデータだけではなく、FacebookやTwitterのデータやSAPやOracleなどのデータも取り込むこともできる。さらに、ユーザーがchatter用のアプリケーションを独自に開発することも可能だ。ただし、社内情報は、権限やセキュリティが重要なので、それぞれの権限に応じたデータ閲覧設定がされているほか、社外へのエクスポートは基本的にできない。

 chatterは2010年初頭にリリース予定。chatterはforce.com上の基盤として統合されるため、現在のsalesforce.com上のアプリケーションは基本的にすべてchatterに対応する。現在のsalesforce.comユーザーは特に追加料金なしでchatterを利用できるようになる。現在、salesforce.comを利用していないものの、chatterだけ利用したい場合には、1ユーザー当たり月額50ドルでchatterのみのバージョンも提供する予定だ。

 ベニオフ氏は、「まさにエンタープライズコミュニケーションの革命といえるサービスだ。社内のすべての社員やアプリケーションがフィードでつながり、共有もされる。当社は設立10年を迎えたが、これは必ずや次の10年を支えるサービスになるだろう」と展望と期待を述べた。

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