ネット通販時代のコンタクトセンターに求められる要件日本アバイア、コンタクトセンター戦略の説明会を実施

» 2009年12月04日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本アバイアは12月4日、「ネット通販時代のコンタクトセンター」について説明会を行った。今後、通販各社が効果的に顧客を囲い込んでいくためには、「インターネット、電話、紙媒体といったコンタクトチャネル同士を連携させ、申し込み、問い合わせといった目的に応じて最適なチャネルに誘導したり、どのチャネルからコンタクトしても一元的な対応を実現できるといった差別化が不可欠になる」と指摘した。

Webと電話による案内を連携

 通販の申し込み手段は数年前まで電話がトップだったが、昨今は時間を選ばず買い物ができる利便性からインターネットが中心となっている。一方、媒体別売り上げ構成比は、企業の販売戦略によっても異なるが、各チャネルに散らばる傾向にある。例えば通販業界の売上高ランキングで毎年上位に入る「ジャパネットたかた」の場合、2008年度は紙媒体が43%、テレビが29%、インターネットが23%、ラジオが5%を記録したという。

写真 日本アバイア システムエンジニアリング部 システムエンジニアリングマネージャーの幸崎真一氏

 日本アバイア システムエンジニアリング部 システムエンジニアリングマネージャーの幸崎真一氏は、「コンタクトチャネルはさまざまだが、こうしたデータは、企業や商品の認知度、信頼度を向上させることに適したメディアや、販売チャネルとして適したメディアなど、メディアごとに特性があることを示している。通販企業の競争が激化している中、各メディアを個別に活用するのではなく、連携させて、それぞれの特性をミックスすることで、より効果的に顧客を囲い込んでいくことが重要だ」と解説した。

 その具体策として、「Webサイトにおけるチャネル誘導」が挙げられるという。Webサイトはユーザー側から働きかけるユーザー主導のメディアのため、目的とする商品や情報に自分の判断で到達しなければならない。むろん、注文完了に向けてストレスなく顧客を誘導できるよう、各サイトとも使い勝手を高めているが、それでもなお目的とする情報に到達できない消費者もいる。ある国内モバイルキャリアによる携帯端末での通販サイトでは、トップページの訪問客のうち、注文完了に至った顧客は全体の3%にとどまったという調査結果もあるという。

 「もちろん、このデータには商品力などの問題も絡んでいるが、スムーズに誘導できていれば、販売につなげられた顧客もいたことは確実だ。例えば、1日1万人が訪れるWebサイトで、1回の購入平均単価が1万円の場合、全訪問客の2%を救済できれば年間6000万円の売り上げ増加につながるという試算もある」(幸崎氏)

 幸崎氏はこう述べたうえで、Webサイトと電話による音声での誘導を連携させる方法を提案した。具体的には、Webサイトの画面上に『この商品を電話でオーダー』『この商品について電話で相談』といったアイコンを配置し、それをクリックするとコールバックの申し込み画面が現れる。そこに顧客が名前と電話番号を入力すると、後でオペレータが掛け直し、顧客とWeb画面を共有しながら音声で案内するといった具合だ。問い合わせが混み合っているときには、PBXの機能によって、予測待ち時間や接続される順番を表示することもできるという。

 単純な問い合わせについては、IVR(音声自動応答装置)を使った自動案内が可能だ。例えば『商品の変更・キャンセルの仕方が分からない場合はこちら』といったアイコンを用意し、それをクリックすると1回だけ有効なワンタイムパスワードと受付電話番号を表示する。顧客がその電話番号に電話してパスワードを入力すると、案内が始まると同時にWeb画面も連動、「商品変更の場合は1を押してください」といったガイダンスを、Web画面と音声の両方で案内する。

 「こうした工夫により、顧客のストレスを大幅に軽減し、販売機会損失も低減できる。また、Webサイトからオペレータに接続する際、顧客がWebサイトで閲覧していた情報を引き継げるため、スムーズかつ短時間での案内が可能となり、対応効率にも貢献する」(幸崎氏)

重要な顧客から優先的に電話をつないでCSを向上

 2つ目の提案は、顧客セグメンテーションに基づくコンタクト・ルーティングの仕組みだ。専用の管理ツールで任意に設定したルールを使い、購買履歴や購入金額など顧客の属性情報を基に、重要度の高い顧客から優先的に電話をつなぐことができるという。

写真 任意のルールに基づいて、重要度の高い顧客から電話をつなぐ

 また、同一の顧客から複数回電話がかかってくることがあるが、そうした際、電話するたびに違うオペレータにつながるのが一般的であり、顧客に「また同じことを説明しなければならない」といったストレスを与えがちだった。その点、オペレータの顧客対応履歴を参照して、それまで対応していたオペレータに自動的に接続する「ラストエージェント・ルーティング」がCS向上に有効だという。

 そして3つ目の提案は、社内外のシステムにおけるビジネスプロセス連携だ。業務システムを提供する各ベンダがオープンアーキテクチャを採用している近年、異なるベンダ製品を連携させることが一般的になっている。そこで、通販企業のWebサイトの機能と、社内外の関連システムのサービスを連携させ、CS向上につながるサービスを確立することができるという。

写真 社内外のシステムと連携し、CSに役立つ情報を顧客に提供

 「例えば、通販企業のWebサイトにおいて『商品到着予定時間』の問い合わせ機能を用意し、これを物流会社の配送管理データベースと連携、SOAPを使って必要な情報をやり取りすることで、顧客が求めている情報を、人手をかけずに提供することができる」(幸崎氏)

20〜50席規模の中堅・中小向けのソリューションの展開

 なお、こうした中でも現在、特にニーズが大きいのは、通販企業のWebサイトと物流会社の配送管理データベースを連携させるといった、ビジネスプロセス連携だという。一方、Webと電話の両方で顧客を案内したり、どのチャネルからのコンタクトにも一元的に対応する“マルチチャネル・コンタクトセンター”機能については、日本国内では2000年ごろから注目されていながら、いまだに浸透しているとはいえない。

 この点について幸崎氏は、「Webで注文した商品について、電話で問い合わせをするといったチャネルを越えたアプローチが一般的になっているいま、スムーズに対応できる体制は、CS向上を図るうえで不可欠となっている。チャネル連携の重要性は多くの企業が課題として認識しており、今後、取り組む企業は確実に増えていくはずだ」と話す。

 また、幸崎氏はこのほか、電話、メール、Webでの対応履歴などのデータを、BIを使ってリアルタイムに分析し、短いスパンで販売戦略、マーケティング戦略に生かしていく手法なども紹介し、「現在の技術、商品ラインナップで、こうしたことがすべて実現可能になっている。今後はこうしたサービス上の差別化、アプローチの工夫が、CS向上のうえで大きな意味を持つようになるはずだ」と力説。今後は20〜50席規模の中堅・中小のコンタクトセンターもターゲットに入れ、「顧客ロイヤリティを効果的に高められるソリューションを、具体的な活用シーンとともに提案していきたい」とまとめた。

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