BI製品の拡充と中小企業の攻略に注力するSAP2010年の経営戦略を発表

» 2010年04月08日 00時00分 公開
[伏見学,@IT]

 SAPジャパンは4月8日、2010年の事業戦略に関する説明会を記者およびアナリスト向けに開催した。ギャレット・イルグ社長は、ビジネスインテリジェンス(BI)分野の強化および中堅・中小企業(SME)ビジネスの拡大に注力していくと意気込んだ。

2010年の事業戦略を説明するギャレット・イルグ社長 2010年の事業戦略を説明するギャレット・イルグ社長

 同社が提供するBIツールの中核となるのが、2007年に買収したBusinessObjects(BO)の製品群である。高度なビジネスデータ分析機能を持つBIアプリケーション「BO business intelligence solutions」や、分析基盤である「NetWeaver Business Warehouse Accelerator」と検索モジュール「BO PoleStar」を組み合わせたデータ検索ソフトウェア「BO Explorer」など、ユーザーの企業規模や業種に応じてさまざまなランナップをそろえる。

 現在、BO単体でのビジネスは好調に推移しており、今年は同事業に特化した営業部門を設置し、20人以上のBIおよびEPM(Enterprise Performance Management:企業パフォーマンス管理)専任の営業を業種別に展開するほか、BI領域でパートナー企業との協業などを進めていく方針だ。すでに富士通とクラウド型の情報分析サービスを共同開発するなどの動きを見せている。「SAPはただ製品を売るだけではない。BOを通じてユーザーに価値を提供していきたい」とイルグ氏は強調する。


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顧客の価値創出が第一

 その背景にあるのが昨年来掲げている顧客中心の戦略だ。顧客の課題解決につながる提案をするためには、何よりも顧客とのコミュニケーションの改善が不可欠だととらえ、同社はさまざまな取り組みを実施している。例えば、SAP本社の開発部門と世界各国のユーザーやパートナー企業が共同で国際会計基準(IFRS)やクラウドなどに関する製品を開発するプログラム「Customer Engagement Initiative(CEI)」や、ITプロジェクトの企画力や推進力を習得するための無償トレーニングコース「バリューアカデミー」などを立ち上げた。また、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアを活用してユーザーから直接意見をもらうことで、今後の製品開発や事業展開に生かしている。

 これらはグローバルでの取り組みであるが、あるサードパーティーの調査によると、2008年から2009年にかけて最も顧客満足度が向上した地域は日本だったとイルグ氏は胸を張る。

 「2009年は世界的に厳しい市況だったが、パートナーやユーザーと良好な関係を築くことができ、結果的にビジネスが広がった。2010年も引き続き顧客の価値を最優先に考えていく」(イルグ氏)

SME市場の新規開拓に力を注ぐ

 SMEについては、これまで大手企業の顧客がメインだった同社にとって新規開拓分野という位置付けである。日本での総売り上げに占めるSMEの割合は現在2割程度だが、3割に拡大していく意向を示した。

 具体的に2010年は、SME専任の営業部門および内勤営業の増強に加えて、チャネル専任営業部の設置や、SME市場向けの販売パートナープログラム「PartnerEdge」を通じたチャネルパートナー販売の強化を図る。

 製品も充実させる。SME向けソリューション「BO Edge」シリーズの新製品をリリースするほか、アジア地域として初めて月額利用料金のライセンスモデルを提供する。

 「SAPにとってSME市場は大きなチャンス。大手企業と同様、SMEも日々厳しい企業競争にさらされている。彼らがグローバルで勝ち残るためのツールを提供することは、われわれにとっても新しいビジネスの創出となるのだ」(イルグ氏)

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