サイベース買収でモバイル活用でもNo.1に〜SAP CEOSaaS型ERPの提供遅れの原因はインフラ

» 2010年05月17日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 5月17日、連日15度程度で過ごしやすい時期のドイツ・フランクフルトで、独SAPの年次イベント「SAP SAPPHIRE NOW」が開幕した。2010年2月に同社の共同CEOに就任したジム・スナーベ(Jim Hagemann Snabe)氏に話を聞いた。

 今年のSAPPHIREは、独フランクフルトと米オーランドでの同時開催だ。フランクフルトをスナーベ氏が担当し、オーランドはもう1人の共同CEOであるビル・マクダーモット(Bill McDermott)氏が担当・講演している。両会場はオンラインで結ばれ、フランクフルトとオーランドで両氏が掛け合いながら行う講演も予定されている。

サイベース買収は46億台のモバイル端末へ利用機会を広げるため

スナーベ氏写真 独SAP 共同CEO ジム・スナーベ氏

 スナーベ氏は、共同CEO就任から100日が経過したが、この100日間に5万の既存顧客とのコミュニケーションを強化したほか、5月14日に発表した米サイベース買収によってイノベーションを示すよい機会にもなったと語った。

 サイベース買収の目的について同氏は、「いまやモバイル端末は全世界で46億台普及していると言われている。われわれはビジネスアプリケーションやビジネスアナリティクスのアプリケーションは持っているが、PCからの利用が中心だった。それをモバイル利用へと拡大するために、最善の選択だったと考えたからだ」と説明した。

 つまり、SAPにとってはモバイル利用拡大の足掛かりとなり、サイベースにとっては顧客に対してモバイルで利用するビジネスアプリケーションを具体的に提案できるようになるため、Win-Winの関係になるというのだ。

 また、同社の買収は「最近低下気味だと指摘されているSAP社員のモチベーション管理面で考えても、社内に対して“当社は戦略的に計画を実行している”という姿勢を示す良い機会になった」(同氏)といった側面もあるとした。

インメモリ技術は他社よりも1年半先んじている

 スナーベ氏は、昨今の技術変化によって「クラウドコンピューティング」「インメモリコンピューティング」「モバイルコンピューティング」の3つの技術が特に重要になってきたと指摘した。

 特にインメモリコンピューティングには早くから取り組んでおり、他社に先駆けて製品化している、と説明。「インメモリ技術に関しては、他社と比較して技術的に1年半は先んじている。特にビジネスアプリケーションをインメモリ上で有効活用する方法を知っている。この点では、ビジネスアプリケーションベンダとして長年インメモリ技術に取り組んできた“一日の長”があるのだ。ビジネスアプリケーションとビジネスアナリティクスの活用ノウハウによって、例えば複数のシミュレーションをインメモリを有効活用して実施することなどが容易になった」と語り、ビジネスアプリケーションベンダとしてインメモリに早くから取り組んできたメリットを強調した。

Business ByDesignの遅れは「インフラを完全な状態にしたいから」

 また、ドイツ、米国、英国、フランス、中国、インドの6カ国で先行提供中の中堅企業向けのホスティング型ERPサービス「SAP Business ByDesign」については、日本での提供が遅れている理由を説明した。

 Business ByDesignは、中堅企業向けのERPをSaaS形式で提供するというもの。すでに前述の6カ国では提供されている。日本でも当初は2009年末からの提供が予定されていたが、提供開始予定は2011年中頃にずれこんだ。

 遅れの理由について、スナーベ氏は「SAPが提供するからにはインフラを完全な状態にしてからスタートさせたいからだ。現在、インフラを整備中だ。日本はモバイルインターネットが他国よりも進んでいるため、モバイル環境についても十分に充実させたうえでの提供を考えている。それに先駆けて、2010年7月末にはBusiness ByDesignの新バージョンであるバージョン2.5をリリースする予定だ。このようにBusiness ByDesign自体は順調に進化を続けている。日本でも環境が整い次第提供を開始したい」と説明した。

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