あなたの会社の仮想化が進まない理由特集:仮想化構築・運用のポイントを探る(1)(3/3 ページ)

» 2010年07月05日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]
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仮想化技術は「手段」。今度こそ全社視点で目的を見直したい

 ところで、最近はサーバ仮想に伴うストレージの容量、性能の問題解決に寄与するとして「ストレージ仮想化」も注目されている。

 ストレージ仮想化とは、複数のストレージ装置をまたいで、単一のストレージ装置であるかのようにみせる手法であり、これにより「既存のストレージ装置の容量が不足した際の拡張」や、「異なる機種同士を組み合わせた利用」が可能になるというものだ。だが、こちらにしても実現手段は複数あり、運用にもノウハウが求められる。よって、「ストレージ仮想化の実現方法からバックアップなどの運用方法まで、『どう導入・運用するのか』を、やはり全社的なビジネス要件、システム要件に基づいて考慮することが有効活用のカギとなる」(入谷氏)。

 一方、Windows XPからWindows 7へのスムーズな乗り換えや、セキュリティ面でのニーズを反映して、デスクトップを一元管理できる「デスクトップ仮想化」も企業の関心を集めている。こちらもWindows Serverのターミナルサービスを拡張することで、サーバ側でアプリケーションを稼働し、クライアントPCから操作可能とする方法や、ローカルPCにアプリケーションを一時的にインストールする方法、ローカルPCのメモリにアプリケーションを送り込んで稼働させる方法など、その実現手段は複数ある。

 加えて、デスクトップ環境は、業務内容や使用目的に応じてエンドユーザーのニーズに合わせる必要がある。そうした個々のニーズに答えながら、「一元管理による運用効率向上・運用コスト削減」というメリットを生かすためには、いかにデスクトップ環境の種類を絞り込むかという“標準化”が1つの鍵となる。仮想化のバリエーションはさまざまだが、“全社的なビジネス要件に基づいて、グランドデザインを描き、それに沿って導入し、一元的に管理・運用する”という基本アプローチの重要性は変わらないのだ。

 こうした点を受けて、入谷氏は「ITILの概念にのっとり、今後の情報システム部門は“企業内のサービスデスク”になることを目指すべき」とまとめる。従来のようにサイロ化された運用管理の役割分担で“キカイ的な死活監視”を行うのではなく、「各システムが『どんなサービスを提供しているのか』『どれほどのサービスレベルを提供できているのか』といった情報を共有しながら、よりエンドユーザーに寄った視点で、“一元的にサービスを提供”する姿勢が大切だ」という。

 「いくら仮想化が優れた技術だといっても、テクノロジだけで解決できることは意外と少ない。システム設計・運用の全社的なフレームワークという準備ができていてこそ、仮想化技術は有効に構築・運用できる。クラウドコンピューティングの実現は、その先にある」(入谷氏)


 オープンアーキテクチャにおける仮想化技術は、技術的に先端を行くものであり、享受できるメリットも多い。しかし、あくまで「手段」に過ぎない。ゆえに、その有効な活用・運用方法を突き詰めて考えるほど、結局は「それを使って何をするか」という目的を確認し、その実現・運用方法を整備、明確化するという“IT活用の基本”が強く求められるということなのだろう。

 2008年、サーバ仮想化の黎明期にも「仮想化技術の導入は自社システムや運用を見直す良い機会」といわれていた。サーバ仮想化も一巡し、クラウド化も現実味を帯びてきたいま、“今度こそ”システム活用の在り方を見直さなければいけないフェイズに入ったといえるのではないだろうか。

 とはいえ、“基本”の重要性を認識することと、実践することは、また別の問題である。次回は、今回確認した“あるべき姿”をどう実践に落とし込んでいくか、ガートナージャパンのアナリスト 亦賀忠明氏の見解を紹介したい。

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