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» 2011年06月29日 12時00分 公開

“PMOの成果”見える化のススメ(3):「プロジェクトが遅れない理由」も数値化できる

プロジェクトのスケジュール管理はPMOの重要なミッションの一つ。あらゆることを管理し、いつも苦労しているのだから、その成果をきちんと数値でアピールしよう。

[荒浪篤史,日立コンサルティング]

スケジュール管理の見える化も、まずはKPI設定から

 早いもので本連載も3回目になる。本連載の情報が少しでも皆さんの業務のヒントになればと願っているのだが、いかがだろうか。一般に、どんな仕事でも成果を分かりやすく示すことは、組織のためにも個人のためにもなる。取り入れられる部分があれば、ぜひ実践いただければと願う。

 さて、今回も前回に引き続き、「ケーススタディを交えた具体的な実践方法」を紹介したい。今回は「スケジュール管理」におけるKPIの設定方法やモニタリング方法を解説しよう。

 まず、スケジュール管理の見える化の全プロセスも、第2回で説明した課題管理と同じく、KPI設定→モニタリング→評価と、大きく3つのプロセスで構成される。プロセス設計の留意事項も同じなので、その辺りは第2回分をご参照いただきたい。ここでは各プロセスの具体的な中身を紹介しよう。

KPI設定――PMO業務の“大変さ”が浮き彫りになるKPIを

 さて、まずスケジュール管理のKPI設定だが、これも課題管理と同様、「スケジュール管理は何のためにやるのだろう」と考えると分かりやすい。例えばスケジュール管理の目的は、「進ちょくを認識し、必要に応じて調整や介入を行い、遅延やリスケを防止する」と定義できないだろうか。

 目的の定義ができたら、「“遅延やリスケを防止するために講じた手段”の量や度合い」「達成度を認識できる指標」をKPIとすれば良い。だが、PMOのスケジュール管理は、以下の図1の通り、とても複雑かつ高度な作業である。よって、PMOの成果をアピールする以上は、せっかくなので、その“大変さのポイント”もしっかりと理解してもらいたい。よって、その“大変さのポイント”をKPIに設定できれば一石二鳥ではないだろうか。

ALT 図1 あらためて整理してみると、「スケジュール管理」と一言で言っても、管理すべきことが多く、実に大変な作業であることが分かる。この大変さをKPIを通じて関係者に分かってもらった方が、精神的にもはるかに救われる

 そこで設定したKPIが、「管理対象数」「調整介入数」「マイルストーン順守率」の3つである。それぞれを簡単に説明すると図2の通りである。

ALT 図2 図1に示したPMOのスケジュール管理業務のうち、特に大変なポイントに着目して設定したKPI。数値にすれば、PMOの業務に詳しくない人も「PMOがどれだけ大変なのか」を理解しやすくなる

 なお、課題管理の場合は、「この課題を見逃したら、または放置したらどうなるか」という想定被害から「重み」の付与もできた。これにならってスケジュール管理でも「遅延を放置したら……」という仮説が思いつくが、これはスケジュール管理のKPIとしてはあまりにも稚拙である。そこで、上記の3つ以外にもしKPIを設けるとしたら、「マイルストーンの重要度」などではないだろうか。余裕があれば検討してみてはどうだろう。

モニタリング――手間が掛からない上、マネジメントにも役立つ

 KPIが明確になったら、次は実績をいかに収集・記録するかを考えるわけだが、これは一般的なスケジュール管理のスキームに付加するだけでいいだろう。

 まず「管理対象数」については、PMOで一つ台帳的なものを用意して、最初に計画してあった管理対象数に対して、差分が生じた場合にメンテナンスすれば良いだろう。一方、「調整介入数」には少々力を入れておきたい。「調整介入に至った経緯/課題/対策内容/関連システム数/ステークホルダー数」など、“成果の重み”をアピールできるインプットがあれば都度記録しておこう。マイルストーン順守率は、ステアリングコミッティなど、定期的な活動報告の場に向けて集計しておけば良いだろう。

 このように、定常的モニタリング作業は、各PMOメンバーにとって、さほどの手間にはならない。また、このモニタリング結果は、管理対象数に基づいて各メンバーの負荷を均一化したり、調整介入方法へのアドバイスをしたり、場合によってはメンバーを補完したりといった具合に、PMOのリーダーがマネジメントに活用できる点もミソである。

評価――管理対象数+調整介入数=マイルストーン順守率

 さて、いよいよ成果の評価である。前回も述べたが、われわれの苦労をあまり知らない人たちによる、あの心外なひと言、「Aさん、プロジェクトは無事終了したわけだけど、Aさん率いるPMOはどのくらい貢献したの?」にズバッと回答するのである。

 これには、以上のようなKPIと実績値を基に、「これだけ多くの管理対象について、その進ちょくと整合性を常時監視し、進ちょくや整合性の課題・リスクを検出し、必要であれば調整介入している」結果として、マイルストーンは順守できているのだ、と回答しよう。マイルストーン順守にPMOは大いに貢献しているという論理を数値で示すのである。

ALT 図3 3つのKPIの実績値を使って「PMOの成果」を関係者に説明する

 ただし、「調整介入」が全くなかった場合、「管理しているだけで、プロジェクトに直接的には関与していない」と受けとめられやすい論理でもある。とはいえ、「管理」も大変な仕事である以上、過小評価されないよう、状況に応じてトーンを工夫して伝える必要があるだろう。

 しかし、個人的には「調整介入」こそPMOの真骨頂だと思うので、プロジェクトの進ちょくを消極的に見守るのではなく、ぜひとも積極的なスケジュール管理を志向してみてはどうだろう

 なお、「調整介入数」には「調整介入事案の関連システム数」や「ステークホルダー数」など、“調整の難易度”を示すデータを添えるのも良い。一層迫力、説得力が増すはずである。


 スケジュール管理が難易度の高い作業であることは、経験者はもとより、全関係者も何となくは理解していると思う。だからこそ、その苦労や成果を、全関係者が同じく理解できるよう、明確かつ分かりやすくアピールすべきである。何度も言うが、KPIの積極的な開示は、ユーザーに安心感を与え、他社との差別化に役立ち、さらには、自分たちの活動成果の改善にもつながっていくのだから。

 次回は、「コスト管理」の見える化を紹介する。

筆者プロフィール

荒浪 篤史(あらなみ あつし)

日立コンサルティング シニアマネージャー。大手ネットワークベンダーにて、さまざまな業種の企業および団体、官公庁のオープンシステムの設計プロジェクト・マネジメントを手掛け、IT企業の立ち上げにも参画した。2007年より現職。これまで大手メーカのITインフラ再構築プロジェクト、大手商社の全国240拠点のITインフラ構築、運輸運送業情報システム子会社のプレゼンス向上などに携わった実績を持つ。


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