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» 2011年05月25日 12時00分 公開

“PMOの成果”見える化のススメ(1):PMOの存在意義を見える化しよう!

昨今、多くの企業がPMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)の重要性を認識している。だが、その効果を測ることを忘れてしまうと、PMOの存在意義は経営層や開発メンバーの意識から薄れ、プロジェクトもうまく進まなくなってしまう。ではどうすれば良いのか?――PMOに深い知見を持つ日立コンサルティングの荒浪篤史氏が「PMOの効果の見える化」のノウハウをコラムスタイルで案内する。

[荒浪篤史,日立コンサルティング]

プロジェクトの可視化と、プロジェクトマネジメントの可視化

 さっそくだが、皆さんは「プロジェクトマネジメントの見える化」と聞いて何を想像するだろうか。プロジェクト管理において重要な情報??「ルール、進ちょく、予算、課題、リソースといった情報の収集・更新・共有が定型化され、なおかつ常時最新化されているプロジェクトの状態」を想像したのであればそれは正しい。だが、「プロジェクトマネジメントの見える化」とは、それだけではない。本コラムでは、その少々異質な見える化について話をしてみようと思う。

 例えば皆さんは、こんなことを言われた経験はないだろうか。

 「Aさん、プロジェクトは無事終了したわけだけど、Aさん率いるPMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)はどのくらいプロジェクトの成功に貢献したの?はどのくらいプロジェクトの成功に貢献したの? 今回の成功はプロジェクトメンバーの自助努力の結果じゃないの?」

 つまりはPMOの存在意義を問われているわけだが、皆さんはこれにどう回答できるだろう?

 営利企業の場合、プロジェクトの成否は業績に直結するものが少なくなく、失敗は許されない。このことから、PMOの存在自体を否定されることは少なくなってきたし、常設組織化した企業も多い。しかし、大規模プロジェクトになればなるほど、PMOも相応の人数と期間が必要になり、その投資額に尻込みする経営陣もあろう。

 とはいえ、プロジェクトの失敗は許されない。ゆえにPMOを組織するわけだが、プロジェクトの軟着陸が視野に入ってきて気持ちに余裕が出てくれば、「PMOへの投資は適切だったのだろうか」という経営陣の呟きが耳に入ってくることは十分に想定しておくべきである。実際、筆者はこれを経験している。

 では、プロジェクトを円滑に進める体制を維持する上で、PMOの存在意義、存在価値はどのように示せば良いのだろうか??? これが本連載のテーマである。すなわち、「プロジェクトの見える化」ではなく、「プロジェクトマネジメントの成果の見える化」の方法を、筆者の経験やケーススタディを交えて紹介していこうと思うのである。

PMの効果を見える化しなければ、プロジェクトはうまく進まない

 ちなみに、筆者は前述の質問をぶつけられ、その立証に苦労した経験を持つ。しかし、事前に見える化する対象と、KPIを定義し、その立証に必要なインプットをPMOの定常業務で管理できるようにしておけば、立証はそれほど難しいことではなくなる。また、副次的にプロジェクトマネジメントの品質向上にも寄与することを理解してもらえるはずである。

ALT 図1 経営層はPMOの重要性を理解していながらも、プロジェクトが成功すると、皮肉にもPMOの存在意義が忘れられがちになる。PMOの成果を見える化して「十分な投資対効果がある」ことを実証することが大切だ

 またもう1つ、考えておきたいのは、プロジェクトの成否はQCD(Quality=品質/Cost=コスト/Delivery=納期)で計られるのが一般的であり、「プロジェクトが成功なら、そのマネジメントも成功」と定義されるケースが多い、という点である。であれば、筆者の言う「プロジェクトマネジメントの見える化は蛇足なのではないか?」と思う向きもあるはずだ。だが、少し考えてみてほしい。

 確かにPMBOKをはじめとするプロジェクトマネジメントのフレームワークの標準化と普及が進んだことにより、以前に比べれば、比較的簡単に、誰でもプロジェクトマネジメントは「できる」ものになったのかもしれない。しかし、世の中には一つとして同じプロジェクトはない以上、標準フレームワークを適用するだけでは、必ずしも全てがうまくいくとは限らないはずである。

ALT 図2 PMBOKなどの標準フレームワークにより、プロジェクトは以前よりも進めやすいものとなったが、それでもプロジェクトマネジメントの成果を見える化し、プロジェクトの進め方を改善していくことは不可欠と言える

 よって、プロジェクトマネジメントを見える化し、プロジェクトマネジメントの成果をKPIにより定量的に認識し、成果が不十分であれば、常にプロジェクトの状況にマネジメントをアジャストして行かなければ、プロジェクトは決してスムーズに進めることはできない――これが筆者の持論であり、プロジェクトマネジメントの見える化にこだわる理由である。

 そして、本コラムの執筆を思い立ったのも、皆さんにプロジェクトマネジメントの見える化の方法と効用を理解いただくことで、「皆さんのプロジェクトマネジメントに新たなエッセンスを加えたい」と考えたためなのである。

 なお、本コラムは、以下の3つのケーススタディを通じて、プロジェクトマネジメントの見える化の方法や効果について紹介していこうと考えている。

  1. 課題管理におけるKPI設定例とその効果におけるKPI設定例とその効果
  2. スケジュール管理におけるKPI設定例とその効果におけるKPI設定例とその効果
  3. コスト管理におけるKPI設定例とその効果におけるKPI設定例とその効果

 とはいえ、ノウハウを学術的に解説するようなものではなく、より多くの皆さんに日常的に読んでいただけるよう、“ちょっと空いた時間にさっと読めて、楽しみながら役に立つ”ようなコラムスタイルで進めていきたいと考えている。

 日ごろ、プロジェクトマネージャとしてプロジェクト管理業務に取り組まれている皆さん、プロジェクトマネージャを目指して成長して行きたいと考えている皆さん、そして、今現在、担当しているプロジェクトをもっと良いものにしていきたいと考えている皆さんにとって、きっと有益な内容にできると信じている。ご期待いただきたい。

筆者プロフィール

荒浪 篤史(あらなみ あつし)

日立コンサルティング シニアマネージャー。大手ネットワークベンダーにて、さまざまな業種の企業および団体、官公庁のオープンシステムの設計プロジェクト・マネジメントを手掛け、IT企業の立ち上げにも参画した。2007年より現職。これまで大手メーカのITインフラ再構築プロジェクト、大手商社の全国240拠点のITインフラ構築、運輸運送業情報システム子会社のプレゼンス向上などに携わった実績を持つ。


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