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» 2012年10月29日 06時00分 公開

目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(21):一番つらくて難しいのは“根回し” (4/5)

[那須結城(シスアド達人倶楽部),@IT]

谷橋と小田切からの相談

 加藤の専任化に合わせて、IT企画推進室の近くの会議室がリリースまでプロジェクトルームとして使用できるようになっていた。坂口がプロジェクトルームで仕事をしていると、谷橋と小田切が相談にやってきた。

小田切 「ご相談があるんですが、いいですか?」

坂口 「もちろんです。需要予測支援システムの詳細仕様決めのことですか?」

谷橋 「いえ。豊若さんから、需要予測支援システムの詳細仕様決めは、クリティカルパスとはなっていない。それよりも、後戻りを避けるため、受注情報の分析をして坂口さんに相談するようにいわれたんです。従来なら、仕様決めやシステム化を急ぐのですが……」

 豊若の指示に半信半疑ながらも、何とか時間を割いて分析を進めたようだ。小田切がまとめた資料を坂口に渡した。

小田切 「それで、PDAからの受注状況、営業企画部からの販売予測情報、そして製造部の生産計画などのデータを突き合わせてみて、分析したんです」

坂口 「それで、何が分かったんですか?」

小田切 「それがですね。数字がずれているんですよ」

 話をまとめると、どうもPDAからの受注情報と、営業企画部からの販売予測情報に2?3割くらいのずれがあるようだ、そして、PDAからの受注情報は、まだ製造部では活用されていないのだが、製造部の生産計画は一部のずれはあるもののPDAからの受注情報に比較的近い数値になっている。どうやら、営業企画部と製造部の間のコミュニケーションに問題がありそうだ。

坂口 「ありがとうございます。それじゃ、営業企画部からの情報も入手して調べてみることにします」

 坂口は伊東と加藤を会議室に呼び、小田切と谷橋から受け取った分析データを渡して、営業企画部の天海部長とコンタクトするように指示した。

 伊東と加藤は、天海部長のアポイントを取り、営業部の会議室で天海に分析データを基にした説明を行った。話を聞き終わると、天海がここぞとばかりに批判を始めた。

天海 「製造部が営業のいう通りにしないから、在庫切れで営業はいつも困っているのよ!」

伊東 「でっ、でも、分析データからは、営業企画部からの販売予測情報は、実際の需要よりも2〜3割くらい多いようですが」

天海 「そりゃそうでしょ! だって、製造ではこちらのいった数値の8割くらいしか作れないというんだから、少しくらい多めにいっておかないと、ますます在庫切れになるでしょ!」

 たださえ、苦手な天海部長である。伊東が尻込みしていると加藤が助け舟を出した。

加藤 「でも、いつも在庫切れになるんですか?」

天海 「そうね、月に数回かな」

加藤 「ということは、7〜8割くらいは、製造部の生産で十分ということですね」

天海 「月に数回でも在庫切れになったら、機会損失が出るのだからダメなのよ!」

加藤 「それで、どんなときに在庫切れが発生するのですか?」

天海 「そうね?。キャンペーンをやったときなどに多いわね」

加藤 「キャンペーンの実施日のデータはありますでしょうか?」

天海 「そりゃ、もちろんあるけど」

 天海部長は会議室から出ると、キャンペーンの実施日のデータを持って戻ってきた。

伊東 「天海部長、この場で分析しますので、恐れながらもう少し時間を頂いてよろしいですか?」

天海 「私は忙しいんだから、ホントに少しだけにしてちょうだい!」

伊東 「は、はい、少しだけです。ご猶予をください」

 そういうと伊東は持参したノートパソコンにデータを入力し、ほかの情報との比較を始めた。加藤は場をつなぐために天海に話し掛けた。

加藤 「もう一点確認させていただきたいことがあるのですが」

天海 「なぁに」

加藤 「キャンペーンがあるときの販売予測情報はどのように製造にお伝えですか?」

天海 「そりゃ、キャンペーンの需要予測をして、そしていつものように少し多めに……」

加藤 「なるほど、分かりました」

 加藤はある推測をしていた。

 その推測を確認しようと伊東のパソコンをのぞくと、伊東も同じ結論に達していたようだ。緊張で汗をにじませながら、伊東がパソコン画面を天海に見せて説明した。

伊東 「お、お待たせしてすいませんでした。分析データの在庫切れのタイミングと、キャンペーンの実施日のタイミングが8割くらい一致しています」

天海 「ほら、見なさい。いった通りでしょ」

加藤 「ありがとうございました。このキャンペーンの実施日の発注データを頂いてよろしいでしょうか?」

天海 「いいわよ。ついでだから、地域ごとの発注データもここにあるから、これも持っていきなさい」

加藤 「ありがとうございます。それではこの情報も含めて詳しく分析し、別途ご連絡します」

 天海部長との話や入手した情報と、いままでのデータを総合して分析した結果、重大なことが分かった。

 すなわち、営業からは、ずっと現地営業で集めた販売予測情報の集計値の2?3割多い数値を製造部に伝えていたのだ。つまり、過去の経緯から、製造側が期待通りの数量を生産してくれないため、多め多めの受注情報を伝えるようになっていたのだ。製造部も製造部で、角野工場長の話と同様、営業からの情報はあまり信用できないからと、経験則で約8割の数量で生産計画を立てていたのである。

 その結果、比較的ずれは少なくなっていたのだが、予想が外れることがあった。話を総合すると、在庫切れになる日はキャンペーン実施日との関連性が非常に強いことが分かった。特に地域ごとのデータで見るとその傾向はよりはっきりし、まさに情報が正確に伝わっていないために、在庫切れや多量の在庫発生という問題が発生していたことが明確になった。

 この結果、直前に生産計画の変更や多量の在庫発生という問題を抱えていたのだった。また、この影響を受けて配送センターでも直前の出荷量の変更が多々発生し、効率化に悪影響を与えていた。

 坂口は伊東と加藤からこの話を聞き、営業、製造、物流で相互に信頼し合う関係構築が必要であり、そしてそのうえで必要な情報をうまく連携させることが重要だと気付き、その対応を伊東と加藤らに指示した。

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