IT投資は、ITだけ独立して判断されるものではない。投資全体のポートフォリオの中で他の要因と整合性や優先順位を加味して判断されるべきものである。そうしたIT投資の“意思決定”と“納得”を得るための仕組みを提供するのが、ザカティーコンサルティングの「ITガバナンスサービス」だ。
経営の実行にITは不可欠──。こうした認識が経営者に浸透している。だが、一方で「ITのことが分からない」という経営者の嘆きの声も絶えない。それに対して、ザカティーコンサルティング(旧社名:日本キャップジェミニ)の佐藤昌孝マネジャーは、「経営者は情報があればきちんと判断できる」と明言する。裏返せば、IT投資に関する情報が経営者に分かるよう説明できていない企業が多いのだ。
経営者がIT投資を適切に判断できるようにすること。そして、継続的にIT投資をコントロールできるようにすること。それを組織の能力として形成することをサポートするのが、同社の「ITガバナンスサービス」である。
同社のITガバナンスサービスのアプローチをキーワード的に示すと、「可視化」と「仕組みの確立」「納得感」である。同社はまず、経営者からIT投資の実態が見えないことが企業の課題だと考える。可視化とは、IT投資の立案から選択・実行・評価に至るプロセスや規定・手順・組織などを文書で定義することだ。それによって、経営者、事業部門、IT部門など、IT投資に関与するメンバーすべてが、いまだれが何を行っているかという実態を把握できる。定義され、可視化されたプロセスに則って投資案件に対する判断を粛々と進めていく。それが、同社のITガバナンスサービスの基本にある考え方である。
定義されたプロセスがないと、IT部門主導の投資が行われがちになる。それでは、経営に貢献する投資が行われないし、企業の競争力を低下させかねない。企業にとって、経営戦略および事業計画と整合性がとれたITガバナンスを確立することが欠かせない。そして、そのITガバナンスの中で事業に対する貢献度を指標として投資案件の優先度を決定し、継続的に効果を評価するフレームワークを提供する。それによって、経営者にIT投資に対する納得感を持ってもらう。これが、ザカティーが提供するITガバナンスの問題意識であり、アプローチである。
では、同社のITガバナンスサービスのフレームワークを見ていこう。
同社は、(1)IT投資計画策定、(2)投資判断、(3)開発導入、(4)投資評価、(5)資産管理の5つのフェイズに区分して、ITガバナンスサービスを提供している。ここでは、(1)のIT投資計画の策定と(2)の投資判断のフェイズを中心に同社の考え方とサービスを紹介していく。
まず、IT投資計画策定のフェイズで、同社は、IT投資が企業の競争優位に関する度合いを評価する。IT活用が戦略実現に効果を発揮する企業もあれば、他の経営リソースによって強さを保っている企業もある。競争優位を実現していくために、「ITに注力すべき企業かそうでないか」(佐藤マネジャー)を見るのである。
その上で、投資案件に対して以下の5つの指標で評価し、管理すべきだとする。
上記の指標のうち、どの指標の配分・比率を多くするかは、企業のステージによって変わるという。例えば、「勝ち組」の企業なら戦略性や有効性を重視し、そうでないなら効率性や経済性を重視すべきだと指摘する。
では、実際にどのように投資決定すべきか。
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