ザカティーコンサルティング 投資プロセスの可視化で経営者に“納得”を提供せよIT効果測定・評価サービス・レポート(7)(2/2 ページ)

» 2012年11月04日 15時39分 公開
[小林秀雄,@IT]
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経営視点のIT投資を実現する“投資プロセス”

 多くの企業では、事業部門別に毎年の予算を作成・確保して、IT投資を行っている。しかし、それでは現場の改善案件が多くを占め、経営視点に立った投資が行いにくい。それが、経営者の納得感が得られにくい要因ともなっている。

 経営に貢献するIT投資を実行するために、同社は、投資管理プロセスのフォーマットを作成することを推奨する(図1)。この図は、まさに投資プロセスを可視化したものである。縦軸に投資プロセスに関与する組織が配置され、横軸に実行すべきことが月次という期間で組み込まれている。こうしたルールに沿って判断と実行を進めていけば経営者が納得できる投資決定が行える仕組みだ。

ALT 図1 投資管理プロセスフローの例(資料提供:ザカティーコンサルティング)(クリック >> 画像拡大

 プロセスやルールを持たない企業はない。しかし、それが全体として整合性がとれていないために、判断に必要な情報が行き渡らないといった問題が生じる。同社のサービスは、整合性がとれたプロセスやルール作成を支援することだ。

 プロセスの明示やルールの文書化に際して大切なことは、「だれが見ても納得できるものになっていること」だと佐藤マネジャーは述べる。それは、例えば、投資の分類がIT部門の分類ではなく、経営者が用いる分類になっているということである。

 さて、投資を決定するためには、投資案件に対して優先順位を付けることが前提となる。事業戦略への効果や実施のタイミングなどを考慮して優先順位を3〜4段階にグルーピングする。それを行うのは企業自身だが、ここでも優先順位付けに必要な情報(経営戦略との関連や、業績指標、その目標値など)を明記することが判断を素早く実行するためのカギとなる。

 IT投資投資としての妥当性を見るのは、優先順位付けによって実行すべき案件が決定されて以降のフェイズであり、投資決定をミッションとする組織(図1では情報システム委員会)で判断を下す。しかも、その際にはITだけを見るのではない。事業戦略を実行するための手段にはさまざまな組み合わせ(ポートフォリオ)がある。例えば、設備投資もあれば、人材の育成・強化もある。また、業務プロセスの改革もある。そして、ITの活用がある。

 佐藤マネジャーは、「事業部門は投資全体のポートフォリオにどうコミットするかを考え、その中でITがどう寄与するかを見ることが重要」と指摘する。そうした案件が情報システム委員会に諮られ、情報システム委員会は、明文化された投資判断リストと俎上に上った案件とをつきあわせてゴーかノーゴーかを決定する。

 以上が、投資判断フェイズを中心とした同社のITガバナンスサービスのアウトラインである。

意思決定のサイクルは月次で

 意思決定のサイクルを短期間で回すことも同社は重視している。これまで、日本企業のIT投資のサイクルは1年間というのが普通だ。経営にスピードが求められているいま、それでは長過ぎると佐藤マネジャーは指摘する。図1で示した「投資管理プロセスフロー」の始まり(エントリー)は随時であり、案件のエントリー、投資候補の選定、投資判断準備、投資判断を月次で回すという短サイクルを実行していくメカニズムを企業内に構築・定着させることが同社が考えるITガバナンスだ。

 とはいえ、多くの企業にとって、いきなり短いサイクルで戦略的なIT投資を決定することは容易ではないだろう。パイロット版の案件で始めて、その効果と課題を把握しながら、適用範囲を広げていくことが現実的な進め方だという。

 実際、ITガバナンスの利用の効果として同社の顧客(主としてマネジメント層)からは、「IT投資に関する意思決定の透明性が実現できた」「意思決定が速くなった」という声が寄せられている。IT投資プロセスの可視化が投資判断のスピード向上をもたらしたといえるだろう。一方、IT部門からは、「どういう情報を経営層に上げたらいいか分かった」という声がもたらされている。投資のフレームワークとプロセスの確立・明示が経営層とIT部門の両者のギャップを解消する手だてとなっている。

 では、同社のITガバナンスサービスを利用する企業はどのような企業なのだろうか。佐藤マネジャーは、「勝ち組企業が多い」と話す。IT投資を判断する際の説明責任のあり方をマネジメントとして確立したいという企業が勝ち組に多いと考えられる。そうした企業が、ITガバナンスサービスを積極的に活用してさらなる競争力の向上に邁進しているようだ。

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小林 秀雄(こばやし ひでお)

東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌「月刊コンピュートピア」編集長を経て、現在フリー。企業と情報技術のかかわりを主要テーマに取材・執筆。著書に、「今日からできるナレッジマネジメント」「図解よくわかるエクストラネット」(ともに日刊工業新聞社)、「日本版eマーケットプレイス活用法」「IT経営の時代とSEイノベーション」(コンピュータ・エージ社)、「図解でわかるEIP入門」(共著、日本能率協会マネジメントセンター)、「早わかり 50のキーワードで学ぶ情報システム『提案営業』の実際」(日経BP社刊)など


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