仕事に生きた男の悲しい物語：目指せ！シスアドの達人－第2部飛躍編（14）（4/4 ページ）

[山中吉明（シスアド達人倶楽部），＠IT] PC用表示関連情報

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仕事とプライベートのバランス取れてますか？

　園村はその運命の日の出来事を振り返り、坂口に語った。

園村　「彼のその夜の仕事は見事だったそうです。全国の在庫を把握し、どうしても不足する商品は他社の同等以上の類似品を用意して、泰博さんと直接連絡を取って承認を取り付け、明け方にようやく配送計画を完成させたのです。西東京物流センターの事務所で一緒に夜を明かしたメンバーたちからは、大きな拍手が上がったそうです。それから1カ月後、新システムは無事稼働を開始しました。いまも彼は相模原にいて、新システムの運用管理者として、シスアドとして立派に活躍しています」

　坂口の目には涙があふれていた。

坂口　「園村さん、私にどうしてこの話をしてくださったんですか？」

園村　「それは……、あなたの中に小沢くんに似たものを感じたからです。私だけでなく泰博さんもです。あなたは、仕事のために無意識のうちにかけがえのないものを失ってしまうかもしれない、そんな心配がふとよぎったものですから……。後、業務改革には、心の触れ合いと熱意が欠かせませんよ。もっとも、坂口さんはそこのところはすでにご理解されていると思いますがね。……こんな話をしてすいませんでした」

坂口　「そんなことありません！何か大切なことが見えてきた気がします」

園村　「そうですか、それはよかったです。坂口さん、あなたは仕事とプライベートのバランスをうまく取れていますか？自分にとって大切なものに気付かずにいるところはありませんか？ぜひ、考えてみてくださいね」

　坂口は、園村の言っていることが何を意味するのか、おぼろげながら分かりかけていた。

　窓の外には、少し西に傾きはじめた月が、ゆったりと打ち寄せる波をぼんやりと照らしていた。布袋泰博は、まだ同じ場所に立ったままだ。坂口は少し炭酸が抜けたビールを飲みほすと、この時、心からいとおしく感じる谷田のことを思い浮かべるのだった。

坂口　「いま、君に会いたい……」

◆次回予告◆

　次回、松嶋邸でのクリスマスパーティに参加した坂口たちは、楽しいひとときを過ごします。そこで、伊東は谷田に率直な心情を打ち明けます。

　そして、園村の話に心動かされた坂口は、松嶋家のクリスマスパーティで谷田と久々の対面をすることに……。