AI翻訳アプリは、ビジネスから、旅行や日常会話のようなプライベートシーンまで活用できるとても便利なツールです。近年の技術向上により翻訳の精度がグッと高まり、より便利な活用シーンや方法も広がったことで、既にプライベートでは欠かせない存在になっているのではないでしょうか。この効果はもちろん、多くの企業、そしてビジネスにも活用しない手はありません。
本記事では、AI翻訳アプリの特徴や仕組み、メリット・デメリットを詳しく解説し、目的に応じたおすすめのアプリを紹介します。どの翻訳アプリが自分の用途に合っているか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
この1ページで理解！ビジネス向けAIツールの主な機能、メリット／デメリット、選定ポイント｜おすすめ製品をタイプ別に比較
目次
AI翻訳アプリとは？
AI翻訳アプリとは、AI（Artificial Intelligence：人工知能）を活用して、異なる言語間のコミュニケーションを円滑にするITツール／アプリケーションです。これらは、PC、スマートフォンやタブレットなど、多くは私たちが使う機器・デバイスを隔てずに利用できるよう設計され、異なる言語でもコミュニケーションをとれるよう、言葉を高精度に自動通訳する機能を提供します。
もっとも、近年に“生成AI”が世界的に流行し、急速に一般化する以前から「翻訳ツール／ソフト」の類いはたくさんありました。従来の音声通訳アプリはパッケージソフト型にせよ、Web検索型にせよ、「あらかじめ登録しておいた既存データ／辞書データ」と特定のロジックに基づいて翻訳する仕組みが主だったと思われます。サービスや製品によって翻訳能力・精度の差や使い勝手に差はあるものの、長い文章や専門的な内容の多い文章の翻訳、あるいは口語・会話の“通訳”には「うーん。まだまだだな……」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
AI技術を用いることでこれら翻訳、そして通訳の能力が革新的に向上しました。ディープラーニング技術によって言語処理能力が飛躍的に向上し、実際の音声を学び、トレンドや新しい言葉、多くの人が活用した成果なども常に学習し続けることで、より自然で精度の高い翻訳を、さらにはリアルタイムな通訳（会話）までを実現するようになったのです。
AI翻訳アプリの特徴
AI翻訳アプリの特徴は、高精度なリアルタイム翻訳が可能になることです。これにより会話や文章を、即座に正しく“ニュアンスなども勘案”したうえで翻訳できること、そしてユーザーのフィードバックや利用履歴に基づいて翻訳精度を日に日に向上させていることがポイントです。
翻訳内容を音声またはテキストとして画面に表示する／テキスト化するといった機能もあります。対面でのコミュニケーションやオンライン会議など、ビジネスシーンでもさまざまな場面で活用できることでしょう。カメラで撮ったものの翻訳（看板、印刷物、メニューなどの翻訳）、紙文書の翻訳といった機能を備えるもの一般的になってきました。
これらの特徴より、AI翻訳アプリは、「言語の壁」を越えられるコミュニケーションニーズに対応できる重要なツールとなりつつあります。特に、グローバル化、人手不足、効率化のようなよくあるビジネス課題を考えるだけでも「言語の壁がなくなる」ことはとても大きいポイントになるのではないでしょうか。
AI翻訳アプリと機械翻訳ソフトウェアとの違い
AI翻訳アプリと従来の翻訳ソフトウェアの最も大きな違いは、その基盤技術にあります。AI翻訳アプリは、機械学習 、特にディープラーニングとニューラルネットワークを活用することで、翻訳精度を飛躍的に向上させ、またそれを学習し続けて成長します。AIは膨大な量の言語データを学習し、そのパターンを認識することでより自然で文脈に合った翻訳を生成します。この継続的な学習能力こそがAI翻訳アプリの大きな特徴です。
AI翻訳アプリは、単語単位ではなく文章全体の意味とともに、文脈やニュアンスも捉えて、それを理解して翻訳できます。これは生成AIが一般化したことと同様の「より人間らしい」文章作成やコミュニケーションができるようになったことにも深く関連しています。
機能で比較「AIツール」おすすめ製品一覧
AI翻訳アプリの仕組み
AI翻訳アプリの根幹をなす翻訳方法には、大きく分けてルールベース翻訳、統計ベース翻訳、ニューラル機械翻訳（NMT）などの種類があります。それぞれの方式は異なる原理に基づいており、得意とする翻訳の種類や精度に違いがあります。
ルールベース翻訳
ルールベース翻訳は、事前に設定された文法規則や単語の辞書に従って翻訳を行う方式です。この方法では、元の言語の文章を文法的に解析し、その構造に基づいてターゲット言語の単語やフレーズに置き換えます。
ルールベース翻訳は、正確な直訳が可能である利点がありますが 、意訳や文脈の理解を必要とする翻訳には不向きです。そのため、専門用語が明確に定義されている技術文書やマニュアルの翻訳など、比較的構造が単純な文章に適しています。自然言語の持つ複雑さや曖昧さには対応しきれないことがあるため、日常会話のような多様な表現を含む文章の翻訳には限界があります。
統計ベース翻訳
統計ベース翻訳は、過去の膨大な翻訳データを分析し、統計的に最も可能性の高いものを選択する方式です。
この方法では、文法規則よりも、実際に翻訳された例より「学習」した単語やフレーズの出現頻度や関連性を重視します。統計ベース翻訳は、口語表現や多様な文章構造にもある程度対応できるころが利点です。一方で、学習データが少ない分野、専門用語の翻訳には弱い傾向です。自然な翻訳を行うためには、大量の高品質な翻訳データが必要となります。
ニューラル機械翻訳（NMT）
ニューラル機械翻訳（NMT：Neural Machine Translation）は、AI技術の中でも特にディープラーニングを活用した最新の翻訳方式です。
NMTは、人間の脳の神経回路を模したネットワーク（ニューラルネットワーク）を用いて、文章全体の文脈を理解しながら翻訳を行います。この方式の最大の特長は、文全体を考慮するため、より自然で流暢な翻訳が可能になることです。
NMTは、ルールベースや統計ベースの翻訳と比較して高精度な翻訳を実現します。その精度は学習データの量と質に大きく依存するため、データが少ない言語ペアや特定の分野ではまだ改善の余地がある、言い換えると、日に日に成長し続けているものとなります。
なおNMTは大量の学習データと計算リソースを必要とするため、多くのAI翻訳サービスはクラウド型で提供されており 、ユーザーはサービスを通じて翻訳処理をリクエストするのが一般的です。
関連「AI面接システム」の導入メリットや注意点、選び方を解説
AI翻訳アプリのビジネスメリット
AI翻訳アプリは、言語の壁をなくし、コミュニケーションを円滑にするだけでなく、ビジネスシーンにおいても様々なメリットをもたらします。具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。
- 海外とのコミュニケーションを円滑にできる
- 翻訳作業の負担を減らせる
- コストを削減できる
- 多言語への翻訳が同時にできる
海外とのコミュニケーションを円滑にできる
AI翻訳アプリの最も明白なメリットの一つは、言語の違いによる誤解を減らし、スムーズな意思疎通を可能にすることです。これにより、海外旅行やビジネスシーンにおいて、言葉の壁を感じることなくコミュニケーションを取ることができます。特に、リアルタイム翻訳機能は、会議や商談の進行を円滑にし 、言語の異なる参加者間の理解を深める上で非常に有効です。
また、海外の顧客対応やカスタマーサポートにおいても、AI翻訳アプリを活用することで、言語の壁を越えた質の高いサービス提供が可能になります。
翻訳作業の負担を減らせる
AI翻訳アプリは、素早く的確に自動翻訳されることで、これまで翻訳に費やされていた時間を大幅に短縮することができます。これにより、社員が翻訳にかける時間を削減し、本来の業務に集中できるようになり 、結果として企業内の情報共有がスムーズになり、業務の生産性が向上します。
特に、大量のテキストデータを短時間で翻訳できる能力は 、グローバルなビジネス展開において大きなアドバンテージとなります。例えば、海外の文献調査やレポート作成など、これまで多くの時間と労力を要していた作業が、AI翻訳アプリの導入によって効率化されることが期待できます。
コストを削減できる
AI翻訳アプリの導入は、翻訳にかかるコストを大幅に削減する可能性があります。これまで翻訳会社や通訳者を手配する必要があった場面でも、AI翻訳アプリを活用することで、その必要性が減り、経費を抑えることができます。
特に、簡単な文書や日常的なコミュニケーションであれば社内で対応できるため、外注の回数を減らすことができます。AI翻訳は、人力翻訳と比較して遥かに低いコストで利用できるため 、予算が限られている場合でも、グローバルなコミュニケーションを促進することが可能です。
多言語への翻訳が同時にできる
一部の高度なAI翻訳アプリでは、英語から日本語への翻訳だけでなく、同時に中国語やスペイン語など複数の言語への翻訳結果を比較することができます。これにより、各言語でのニュアンスの違いや表現の適切さを瞬時に確認でき、より精度の高い翻訳を選ぶことが可能です。
また、文章内に複数の言語が混在している場合でも、AIがそれを認識し、指定した一つの言語へ翻訳することもできます。この機能は、多言語での情報発信や、複数の言語を扱うグローバルチームにおいて、非常に効率的かつ効果的なツールとなります。
AI翻訳アプリのデメリット
AI翻訳アプリは便利なツールですが、利用にあたってはいくつかの注意点があります。ここでは、特に重要な2つのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
- 翻訳の正確性にばらつきはある
- 機密情報の管理が必要になる
- 用途に合ったアプリの選択が必要
翻訳の正確性にばらつきはある
AI翻訳アプリは多くのメリットを提供する一方で、いくつかのデメリットも存在します。その1つが「翻訳の正確性がばらつく可能性はまだ残っている」ことです。文化的なニュアンスや比喩表現を含む文章の翻訳はAIにとってもまだ難しい課題で 、意図とは異なる意味に翻訳されてしまう可能性は残ります。日本にもありますよね。例えば「ぶぶ漬けどうどすか？」のような口語は、直訳すると意図は伝わりませんが、とっとと帰ってくれませんか？ などと訳されても角が立ち、これも意図とは違います。どう翻訳するのがよいのか人間の通訳でも迷います。
また、専門的な内容や法律文書など、高度な知識や正確性が求められる分野での誤訳が発生する可能性も否定できません。そのため重要な文書については、最終的に人による確認が必要となる場合がまだ多いです。さらにAI・機械翻訳は、長文内の文法翻訳に弱い 傾向もあるようです。日本語特有の言葉で英語には存在しない単語がある、など言語間の構造的な違いも翻訳の精度に影響することもあり得ます。
機密情報の管理が必要になる
多くのAI翻訳アプリはクラウド上で動作し、それを継続学習にも活用するため、入力したデータはサービスベンダーのサーバに保存されることがあります。そもそも原則として、入力データが「自社の管理外へ出る」ことになります。そのため、特に機密情報を含むデータの取り扱いと管理には十分な注意が必要です。
サービスベンダーのセキュリティ対策が信頼できるかを確認し、機密性の高い情報を扱うシーンには特に慎重な判断が求められます。情報漏えいのリスクを低減するセキュリティ対策を講じているサービスはもちろん多くありますが、中にはそうでないサービスもあるかもしれません。セキュリティ／プライバシー保護に関する規約内容は忘れずに確認しておきましょう。
用途に合ったアプリの選択が必要
AI翻訳アプリは多種多様であり、アプリごとに得意な分野や機能が異なります。例えば、音声翻訳に特化したアプリ、テキスト翻訳に強いアプリ、カメラ翻訳に便利なアプリなど、その特徴は様々です。
そのため、利用目的に合ったアプリを選択することが、AI翻訳アプリを効果的に活用するための重要なポイントとなります。
用途別に見る主なAI翻訳アプリ
目的に応じて適切なアプリを選ぶことが重要です。ここでは、「ビジネス向け」「リアルタイム会話向け」「カメラ翻訳向け」の3つの用途でおすすめのアプリをご紹介します。
ビジネス向け
ビジネスシーンにおいては、翻訳の精度、セキュリティ、そして専門用語への対応力が重要となります。
- DeepL ：自然な訳文が特徴で、特に専門用語の翻訳、ビジネス文書の翻訳に強み。
- Google翻訳 ：多言語に対応しており、幅広く一般的なビジネス文書の翻訳に利用可能。幅広い言語をカバーする。
- Mirai Translator ：日本企業向けに開発され、セキュリティ対策を充実。法務や財務関連の専門文書の翻訳に強み。
- MTrans Team ：複数の翻訳エンジンを活用でき、社内用語や業界用語を学習する機能を搭載。
ビジネス向けのAIツールについては「【ビジネス向け】AIツールおすすめ37選」もご覧ください。
リアルタイム会話
リアルタイムでのスムーズな会話を実現するためには、音声翻訳の精度と速度が重要になります。
- POCKETALK ：専用端末での利用にはじまり、アプリ版も存在。旅先で手軽で高精度な音声翻訳が可能。
- NAVER Papago ：日常会話や旅行での利用に向けて設計。通信できない場所でのオフライン翻訳機能も備える。
- VoicePing ：リアルタイムでの会話翻訳に特化。ビジネス会議翻訳などの活用シーンを想定。
カメラ翻訳
海外の看板やメニューなど、印刷された文字をその場で翻訳したい場合に便利です。
- Google翻訳 ：被写体にある文字を認識し、瞬時に翻訳。撮った写真だけでなく、レンズを向けるだけでも機能する。
- PIXELA AI翻訳 ：最新のAI技術を活用し、文脈に合わせた翻訳が可能。
- NAVER Papago ：看板やメニューの翻訳に特化した機能に強み。
AI翻訳アプリの選び方
ここでは、AI翻訳アプリを選ぶ際のポイントについて詳しく見ていきましょう。
- 利用目的を明確にする
- 翻訳精度と機能を比較する
利用目的を明確にする
AI翻訳アプリを選ぶ上で最も重要なのは、利用目的を明確にすることです。ビジネス文書の翻訳が主であれば、DeepLやMirai Translatorのように、精度やセキュリティに優れたアプリが適しています . 会話の翻訳を重視するなら、POCKETALKやVoicePingのように、リアルタイムでの音声翻訳に強いアプリを選ぶと良いでしょう。
旅行や日常的な翻訳であれば、Google翻訳やPapagoのように、多機能で使いやすいアプリが便利です。また、音声翻訳アプリを選ぶ際には、翻訳精度、使いやすさ、オフライン使用の可否を考慮することが重要です。対応言語数も確認し、特にマイナーな言語を扱う場合は、その言語に対応しているかを確認する必要があります。専門分野の翻訳が必要な場合は、その分野に特化した翻訳エンジンを搭載したアプリを選ぶことが望ましいです。
翻訳精度と機能を比較する
利用目的を明確にした上で、複数のアプリの翻訳精度と機能を比較することが重要です。無料版と有料版で翻訳の精度が異なる場合があるため 、実際に試してみて、自分に合ったアプリを選ぶことをお勧めします。専門用語を頻繁に翻訳する場合は、用語集機能の有無も確認しましょう。
用語集機能を利用することで、翻訳の精度を向上させることができます。会話翻訳を重視する場合は、音声認識の精度や、口語表現への対応力も重要なポイントです。また、海外などインターネット環境が不安定な場所で利用する場合は、オフラインで使用できるかどうかも確認しておきましょう。
AI翻訳アプリは「言語の壁がなくなる」ビジネス効率化の有効ツール
AI翻訳アプリは、言語の壁をなくし、海外とのやり取りを円滑に進めるための強力なツールです。ビジネスの効率を上げるためには、自社の用途に合ったアプリを賢く活用することが重要です。適切なAI翻訳アプリの導入と活用は、グローバルなビジネス展開を加速させ、生産性の向上、そしてコスト削減に大きく貢献するでしょう。
もし「自社に合うIT製品・サービスが分からない」「どう探せばよいのか分からない」とお困りでしたら、あるいは「おすすめ製品・ベンダーを紹介してほしい」「詳しい人に相談したい」のような希望がありましたら、適切なIT製品・サービス選定に詳しいIT専門スタッフに聞ける・相談できるITセレクトのコンシェルジュ相談サービスをぜひご利用ください。（無料です！）
無料でIT製品選びをお手伝いします
ITセレクトはビジネスマッチングサービスの発注ナビと連携し、
IT製品探しのご相談・ご紹介を無料で行うコンシェルジュサービスを提供しています。
▼早速コンシェルジュ相談を申し込む
