
業務の自動化と一口にいっても、RPAとAIの違いを知っているかどうかで、現場の生産性や効率化の成果に大きな差が生まれます。RPAは決められた作業を正確に繰り返すことが得意な一方、AIは大量のデータからパターンを学び、柔軟な判断や対応が求められる場面で力を発揮します。
この記事では、それぞれの特徴や活用シーン、導入のポイントを具体例とあわせて解説し、どんな業務にどちらが向いているか迷ったときの判断材料をお届けします。自社の課題解決にぴったりの自動化のヒントを見つけてみてください。
この1ページで理解!ビジネス向けAIツールの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイント|おすすめ製品をタイプ別に比較
目次
RPAとAIの違いを理解 業務効率化の適正解を探る
RPAとAIは、どちらも企業の業務効率化を推進する上で重要な役割を果たす技術です。しかし、この2つには明確な違いがあります。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は「決められた作業を自動で繰り返す」ことが得意です。
一方のAI(人工知能)は「学習したデータをもとにユーザーからの指示に対応して考え、判断する」ことが特徴です。
この違いを理解しておくことで、自社の業務内容や課題に合った最適な自動化手法を選びやすくなります。
近年は少子化による労働人口の減少やデジタル化の流れが強まるなかで、業務効率化は企業の競争力維持・向上のために欠かせないテーマとなっています。RPAとAI、それぞれの強みを活かし、業務自動化の最適解を見つけていきましょう。
RPAとは? 定型業務を自動化できるロボットのイメージ
RPAは「Robotic Process Automation」の略で、直訳すると「ロボットによる業務自動化」となります。「人の代わりに動く」こと連想しやすいようにロボットという単語を用いたとされており、PCなど作業デバイスの中でソフトウェアが人間の操作をまねて作業を自動化してくれる技術です。
あなたが日常的に行っている業務のPC操作、例えばExcelへのデータ入力、Webサイト上での決まったクリック、ファイル名の変更やファイルの送信、帳票の作成といったルーティンワークがあるとします。これらの操作をRPAのソフトウェアロボットが覚えて(覚えさせて)自動で繰り返し実行します。こうしたロボットは「仮想知的労働者」と呼ばれることもあります。
RPAの大きなメリットは、既存のシステムに手を加えることなく、まるで人間が操作するかのように様々なソフトやWebサービスをまたいで自動処理できる点です。これにより社内の業務を効率化し、ミスも減らすことができます。
おすすめ!RPAの自動化機能、得られる成果、活用シーンを分かりやすく解説
RPAでできること
RPAは「定型作業の自動化」にとても強みがあります。どのような作業が得意なのか、いくつか具体的にご紹介します。
| 業務内容 | RPAによる自動化の効果 |
| データ入力や転記作業 | 人の手による入力ミスを防ぎ、作業を短縮できる |
| 帳票作成・レポート出力 | 決まった時間に自動で作成・送信ができる |
| 複数システムをまたぐデータ集計 | 手作業で行っていた情報の連携や転記を自動化 |
| 定期的な業務のスケジュール実行 | 朝5時など指定した時間に自動で作業を始められる |
RPAは、Excelのマクロと似ているともいわれます。確かに目的や実現する機能は同じです。しかしExcel、Microsoft Officeシリーズの中だけとどまらず、ERPやCRMといった別の基幹システム、別のWebサービスやツールとも連携して一連の流れまで自動化できる汎用性の高さ、応用性の広さに違いがあります。例えば、取引先から届いた注文情報をExcelに取り込み、それを社内システムに転記するといった作業もRPAで自動化できます。
RPAが得意なシーン
RPAの導入が効果的な業務には特徴があります。下記のようなケースに当てはまるならばRPAの導入を検討する価値があります。
- 決まった手順を何度も繰り返す業務が多い
- 業務マニュアルがあり、例外やイレギュラー対応がほとんど発生しない
- データ転記やコピー&ペーストなど、単調な作業が多い
- 入力ミスなどのヒューマンエラーを減らしたい
例えば、毎月数百件の請求書処理や経費精算のように定型作業が大量に発生する業務では、RPAの導入により劇的な時間短縮や品質向上が期待できます。
AIとは? 膨大なデータからパターンを見出して判断できる技術
改めて、AIは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略称で、人間の「学習」「推論」「判断」といった知的な活動を、コンピュータ上で実現する技術です。RPAがあらかじめ決められたルールやシナリオに従って作業を繰り返すのに対し、AIは膨大なデータから自ら学習し、経験を積み重ねていくのが大きな特徴です。
AIには「機械学習」「深層学習」などの技術が使われています。データの中からパターンや法則性を見つけ出し、未知の情報に対しても適切な判断を下せるようになります。たとえば、画像や音声の認識、文章の理解・分類など、人間にしかできなかった業務も自動化できます。
AIでできること
AIが実際に活用されている具体的な事例をいくつか紹介します。
- 画像認識:工場の検品で、不良品や傷を自動で見分ける
- 音声認識:会議の議事録をリアルタイムで自動作成する
- 文章解析(自然言語処理):メールやSNSの投稿内容を分析して、感情や意図を読み取る
- 顧客データの分析と予測:過去の購買データから、今後売れそうな商品を予測する
- 生成AIによる対話:AIチャットボットが顧客対応を自動化する
AIは特に「非構造化データ」(例えば、写真、音声、手書きのメモなど)の解析も得意としています。顧客の行動や購買傾向の分析、商品のおすすめなどにも幅広く利用されています。
AIが得意なシーン
AIの強みは、下記のような業務に表れます。
- 複雑でルール化が難しい課題の解決
- たくさんのデータからパターンや傾向を発見する
- 売上や需要など、将来の動きを予測する
- 画像や音声などの非構造化データを自動で判断する
- 高度な対話や、複雑な問い合わせに柔軟に対応する
例えば、クレジットカードの不正利用検知や、医療画像からの病気判定、新薬の候補化合物の探索など、人間でも時間がかかる複雑な判断業務はAIの得意分野です。
生成AIのチャットボットをビジネスで活用する方法については「生成AIのチャットボットをビジネスで活用する方法」をご覧ください。
RPAとAIの違いを押さえておきたい背景
RPAもAIも、業務自動化を実現するための有効な技術ですが、その考え方や動き方に大きな違いがあります。どちらを導入するか、あるいは組み合わせるかは、現場の課題や目的によって最適な選択が異なります。
「ルール化」vs.「学習・判断」
RPAは「ルール化」が得意です。決まった手順やマニュアルが存在する作業に対し、その流れを正確に繰り返すことができます。逆に言うと、例外やイレギュラー対応が多い業務には不向きです。
一方、AIは「自律学習・判断」に強みがあります。過去の大量のデータからパターンを見つけ出し、新しい状況に柔軟に対応できます。ルールが決まっていない業務や変化が多い業務、予測や分析が必要なシーンに向いています。
導入ハードルの違い
両者は導入のしやすさにも違いがあります。
| 項目 | RPA | AI |
| 導入のしやすさ | 比較的簡単に始めやすい | 専門知識や大量データが必要なことが多い |
| 導入期間 | 短期間で効果を実感しやすい | 開発や運用に時間がかかる場合がある |
| 専門知識 | ノーコードやローコードで現場主導 | 専門の技術者やデータサイエンティストが必要 |
RPAは小規模な業務から「スモールスタート」でき、現場担当者でも自動化に取り組みやすい傾向があります。AIはより専門的な知識や、高品質な大量データが求められるため、RPAよりも導入のハードルがやや高い傾向です。
RPAとAI、それぞれのメリット/デメリット
ここで一度、RPAとAIの「メリット」と「注意点」を整理します。
| 技術 | メリット | 注意点 |
| RPA | ・人手による単純作業を削減できる ・ヒューマンエラーを減らせる ・業務の品質を安定化できる ・24時間365日稼働可能 ・現場主導で導入しやすい |
・複雑な判断や例外処理には対応しにくい ・業務ルールが頻繁に変わるとロボットの修正が必要 |
| AI | ・大量データをもとに高精度な判断ができる ・パターン認識や予測が得意 ・非構造化データも自動で扱える ・顧客応対や画像認識など多様な用途に展開できる ・データから新しい発見が得られる |
・導入・運用コストが高いことがある ・専門人材や高品質なデータが必要 ・AIモデルの「学習」には時間がかかる場合がある |
どちらの技術も強みがあり、導入前には自社の業務課題やリソースをしっかり見極めることが大切です。
RPAとAIを組み合わせることで「できることが広がる」
RPAとAIは、単体でも業務効率化に貢献できますが、両方を組み合わせることで、さらに大きな効果を期待できます。たとえば、今まで自動化が難しかった手書き書類の処理や、複雑な問い合わせ対応なども自動化の対象になります。
RPA×AI・OCRで手書き書類の自動化ができる
紙の請求書や注文書など、手書きや画像の情報が多い業務では「AI-OCR」という技術が活躍します。OCRは画像やPDFに写っている文字を、コンピュータが「テキスト」として読み取る技術のことです。AI-OCRはAIの技術を使って手書き文字や画像から必要な情報を自動で読み取り、テキストデータ化します。その後、RPAがテキスト化されたデータを受け取り、基幹システムなどに自動で入力します。
この組み合わせにより、人が手作業で入力していた時間やミスが大幅に減ります。業務のデジタル化やペーパーレス化も進みます。
AIによる画像認識技術のビジネスでの活用例については「AI画像認識技術のビジネス活用例」もご覧ください。
RPA×対話型AIで顧客対応を自動化できる
AIチャットボット(自動応答システム)を導入することで、ウェブサイトや社内ヘルプデスクでの問い合わせ対応を自動化できます。AIが顧客の質問に答え、必要な情報を聞き出し、集めた情報をRPAがシステムに登録します。
この流れにより、夜間や休日でも顧客対応を自動で行うことができ、人が対応する必要がある複雑な問い合わせだけを担当者に割り振ることができます。結果として、顧客満足度の向上やオペレーターの負担軽減につながります。
RPA・AI導入を成功させるための選び方と注意点
業務自動化の成功には、単に高機能なツールを選ぶだけでは不十分です。自社の業務や課題をしっかり見極めて、適切な技術やツールを導入することが重要です。
RPAが向いているケース
以下のような業務はRPAに向いています。
- 毎日や毎週、同じ内容のルーティン業務が多い場合
- 属人化していた定型作業を自動化し、誰でもできるようにしたい場合
- 作業ミスや入力漏れを減らし、安定した品質を保ちたい場合
- スピーディーな業務処理やコスト削減を目指す場合
AIが向いているケース
一方で、AIは以下のような業務に効果を発揮します。
- 請求書や契約書、画像データなど、非構造化データを大量に扱う場合
- 未来の売上や需要、顧客の行動などを予測する必要がある場合
- 複雑な判断やパターン認識が求められる業務
- 多様なデータをもとに新たな発見や戦略立案を行いたい場合
RPA×AI 両方を組み合わせることでできること
RPAとAIの組み合わせによるメリットをまとめます。
- AIの学習・判断力でRPAの自動化領域を拡大できる
- 複雑な業務プロセス全体を一気通貫で自動化できる
- 人的介在を最小限に抑え、業務全体の効率や品質を底上げできる
このように、状況に応じて両者を使い分けたり組み合わせたりすることが、理想的な自動化の第一歩となります。
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紙の業務を効率化 RPA+AI-OCR対応のAIツール4選
紙の書類が残る現場では「自動化したいけどデータ化がネック」と感じるシーンはとても多いです。RPAでPC上の定型業務を自動化できますが、紙業務の自動化まで進めるには「紙→データ」の橋渡しが必要となります。ここで活躍するのがAIの技術を活かしたOCR(光学文字認識)の技術です。
AI-OCRは、画像内の文字や内容を読み取ってテキストデータ化できます。具体的には、紙書類の内容をAIが認識してデータ化し、それをRPAへと連携することで業務の一連の流れを効率化+自動化するイメージです。このようにRPAとAI-OCRを組み合わせることで、紙の書類が多い職場でも業務効率化の幅が広がってきています。ここでは参考として、AI-OCR機能を特徴とするAIツールを中心に、紙業務の効率化につなげる具体例をご紹介します。(製品名あいうえお順/2025年7月時点)
















