
請求書や納品書など、日々の業務で発生する大量の帳票。その印刷、封入、郵送、そしてファイリングといった作業に、多くの時間とコストを費やしてはいないでしょうか。電子帳票システムは、こうした従来の紙媒体での管理を電子化し、作成から保管、配信までを一元管理するITツールです。 近年、2024年1月に本格施行された改正電子帳簿保存法への対応が企業の喫緊の課題となる中、そのソリューションとして導入する企業が急増しています。
本記事では、「電子化・ペーパーレス化を進めたいが、何から手をつければいいか分からない」「法律の要件が複雑で、どう対応すればいいか不安」といった担当者の方へ、電子帳票システムの基本から、法改正への具体的な対策、そして導入後の活用イメージ、おすすめ製品(全19製品/2025年10月時点)までを分かりやすく解説します。自社の帳票業務の課題を解決し、業務効率化を実現するための一歩を踏み出しましょう。
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目次
電子帳票システムとは?
電子帳票システムは、請求書・見積書・納品書などの帳票を電子化し、作成・管理・送付・保存をオンラインで一元化するITツールです。紙やFAXによる手間やコストを削減しつつ、業務効率化と信頼性の両立を実現します。
主な特徴は以下の通りです。
- 帳票作成/テンプレート化:取引先情報をもとに自動で請求書や見積書を生成できます。
- 一元的な管理と検索:クラウドまたは社内サーバで帳票を統合管理し、全文検索/柔軟かつ即時の情報検索が可能になります。
- 帳票配信:メール送信・URL配信・クラウド連携によるダウンロード形式でスムーズな帳票共有が可能。
- 紙の帳票デジタル化(OCR・スキャナ保存):紙の請求書や領収書も電子化し、帳票を統一したフォーマットで保存できます。
- アクセス制御とセキュリティ:二段階認証やアクセス権管理などにより機密データも安心保存できます。
電子帳票システム導入の効果
- 業務効率化とコスト削減:帳票の作成・保存・検索・送付が一括管理できるため、紙・印刷・郵送コストを大幅に削減できます。
- 法令対応強化:「電子帳簿保存法」に対応したシステムなら、タイムスタンプや訂正履歴など、法定要件をクリアできます。
- テレワーク・DX促進:クラウド型を選択すれば、出社不要・24時間365日どこでも帳票管理が可能となり、働き方改革・DX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献します。
オンプレミス型/クラウド型の違い
| 提供形態 | 特徴 | 向いている企業 |
|---|---|---|
| オンプレミス型 | 自社サーバ構築。高度なカスタマイズ性・セキュリティに対応可能。だが初期導入・保守に高コストがかかる | 法規制や社内規約で外部サーバ利用が難しい企業 |
| クラウド型(SaaS) | 初期費用が抑えられ、短期間で導入可能。自動アップデートや拡張性にも優れる | 中小企業やテレワーク環境で柔軟に運用したい企業 |
現在はクラウド型の成長が著しく、特にバックオフィス・経理領域では採用が広がっています。
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電子帳票システムの主なメリット
電子帳票システムは、業務効率化だけでなく、コスト削減や法令対応にも直結する多くの利点があります。ここでは主なメリットを4つに分けて紹介します。
- 帳票業務の作業時間を大幅に削減できる
- コスト削減とペーパーレス化が同時に進む
- 正確性と検索性が向上する
- 電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が進めやすい
帳票業務の作業時間を大幅に削減できる
帳票の作成・送信・保存・検索などの一連の作業が自動化され、手作業の負担を軽減できます。たとえば、テンプレート化された帳票発行機能を活用することで、1件あたり数分かかっていた作業が数十秒に短縮されるケースもあります。
コスト削減とペーパーレス化が同時に進む
印刷代・封筒代・郵送費といった帳票関連のコストを削減できます。帳票を電子化することで、紙保管スペースの確保や管理にかかる間接コストも削減され、ペーパーレス推進による環境配慮にもつながります。
データの一元管理で正確性と検索性が向上する
取引先別・月別などの条件で帳票を瞬時に検索できる機能があるため、情報確認・修正・再送もスムーズ。重複登録や記載ミスも減少し、内部統制や監査対応にも効果的です。
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が進めやすい
改正電子帳簿保存法に準拠した保存・管理機能(タイムスタンプ・履歴管理など)を持つシステムであれば、税務調査時の対応がしやすくなります。適格請求書(インボイス)対応も含め、法令遵守の体制整備を強力にサポートします。
おすすめ「電子帳簿保存法」に沿った帳票電子化の気になる疑問、対策手段を分かりやすく解説
【5分でわかる】電子帳簿保存法・インボイス制度 対応ガイド
「そもそも、法律対応のために何をすればいいのか?」──。これは、多くの経理・IT担当者が抱える最大の疑問です。本章では、電子帳票システムの導入を検討する上で避けては通れない2つの法律について、そのポイントを解説します。
電子帳簿保存法(電帳法)で義務化されたこと
2024年1月より、メールやWebサイトからのダウンロードなど、電子データで受け取った請求書や領収書(=電子取引)は、紙に出力しての保存が認められず、電子データのまま保存することが全ての事業者で義務化されました。そして、その電子保存には、以下の要件を満たす必要があります。
- 真実性の確保: データが改ざんされていないことを証明する措置(例:タイムスタンプの付与、訂正・削除履歴が残るシステムの利用など)。
- 可視性の確保: 保存したデータを、誰もが視認・確認できる状態にしておく措置(例:「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる機能の確保など)。
多くの電子帳票システムは、これらの要件を満たす機能を標準で搭載しており、導入するだけで法令に準拠した運用が可能になります。
インボイス制度で求められること
2023年10月に開始されたインボイス制度では、消費税の仕入税額控除を受けるために、適格請求書(インボイス)の保存が必要です。電子帳票システムは、受け取った請求書がインボイスの要件を満たしているかを自動で判別したり、発行する請求書をインボイスのフォーマットで簡単に作成・配信したりする機能を備えています。
信頼の証となる「JIIMA認証」とは?
システム選定の際に一つの目安となるのが「JIIMA認証」です。これは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が、市販のソフトウェアやクラウドサービスが電帳法の要件を満たしているかをチェックし、認証する制度です。この認証を取得している製品は法令要件をクリアしていると客観的に判断できます。
【帳票別】あるある課題を解決 電子帳票システム活用シナリオ
システム導入で、自社の業務はどう変わるのでしょうか。ここでは、扱う帳票の種類ごとに、よくある課題と電子帳票システムによる解決後のイメージを、ビフォー・アフター形式で紹介します。
シナリオ1:「請求書」発行・送付業務
- Before: 毎月末、経理担当者が販売管理システムからデータを出力し、Excelで請求書を作成。その後、一枚ずつ印刷し、三つ折りにして封入、そして郵送する作業に2日以上かかっていた。テレワークもできず、担当者の負担が大きかった。
- After: システムが販売データと連携し、ボタン1つで全取引先への請求書を自動作成。そのままメールやWeb経由で自動配信が完了。郵送が必要な取引先にのみ、代行サービスを利用。作業時間は1/10以下に削減され、出社も不要になった。
シナリオ2:「注文書・発注書」の受領と処理
- Before: 取引先からFAXやメール添付のPDFで届く注文書。その内容を目で見て、基幹システムへ手入力していたため、入力ミスや転記漏れが頻繁に発生。確認作業に多くの手間がかかっていた。
- After: システムが受信したPDFの注文書をAI-OCR機能で読み取り、自動でデータ化。基幹システムへも自動で登録されるため、手入力作業がゼロに。従来のミスや確認の手間がなくなり、受注処理のスピードと精度が向上した。
シナリオ3:「各種報告書・申請書」のワークフロー
- Before: 紙の報告書や申請書を、社内で回覧して承認を得ていた。誰で承認が止まっているか分からず、期間もかかっていた。保管のための物理的なスペースも圧迫し、過去の書類を検索するのも一苦労だった。
- After: 電子化された帳票をシステム上のワークフローで申請・承認。進捗状況はリアルタイムで可視化され、承認までの期間が大幅に短縮。完全なペーパーレス化により、保管コストも削減できた。
「電子帳票システム」の導入事例
近年、電子帳簿保存法の改正などに後押しされ電子帳票システムの導入が急激に進んでいます。ここでは電子帳票システムを採用して課題を解決した企業の導入事例をご紹介します。
中小企業向け「電子帳票システム」の導入事例
メンタルヘルスや医療サービスを展開する株式会社フィスメック。顧客に提出するストレスチェック調査票は帳票をベースに発行していました。取引先企業数が20倍、利用者数が10倍という顧客数の爆発的な増加にともない、ストレスチェック調査票の出力数が急増、従来のシステムでは追いつかなくなる課題が発生しました。
そこでクラウド型電子帳票システム「Create!Form」を導入したところ、帳票の作成速度が飛躍的に向上。これまで帳票1000枚の出力に1時間を要していたところ、10分の1である5分程度までの時間短縮を実現しました。帳票の作成速度が向上したことによりストレスチェック調査票の発行速度も向上し、人件費削減や社員の負荷減少にもつながっています。
大企業向け「電子帳票システム」の導入事例
音響機器・楽器・自動車用品などの販売製造大手のヤマハ株式会社は、2016年のシステム移行をきっかけに、見積書発行システムを刷新する必要がありました。
営業支援システムのSalesforceと連携可能な電子帳票システムの中からOPROARTSを採用。約3カ月と短期間で導入しましたが、Salesforce上のデータとの連携を実現し、従来と変わらないフォーマットの見積書の自動作成に成功しました。
電子帳票システムの選び方と比較ポイント
数ある製品の中から自社に合ったシステムを選定するには、いくつかの重要なポイントがあります。導入後に後悔しないためにも、以下の点を比較・検討しましょう。
- 法改正への対応とセキュリティ
- 帳票の作成・配信機能
- 既存システムとの連携性
- 操作性とサポート体制
ポイント1:法改正への対応とセキュリティ
電子帳簿保存法やインボイス制度の要件に準拠しているかは、必須の確認項目です。JIIMA認証の有無も判断材料になります。また、アクセス権限の管理や通信の暗号化など、企業のガバナンスを支えるセキュリティ対策が充実しているかを確認しましょう。
ポイント2:帳票の作成・配信機能
現在使用している帳票のレイアウトを再現できるか、自社のロゴなどを入れたフォーマットを自由に設計できるかを確認します。また、メールでのPDF配信、Web上でのダウンロード配信など、取引先のニーズに合わせた配信方法に対応しているかも重要です。
ポイント3:既存システムとの連携性
販売管理システムや会計ソフト、ワークフローシステムなど、すでに社内で運用している他社のツールとデータ連携が可能かを確認します。CSVファイルでの出力・入力だけでなく、API連携に対応していれば、よりシームレスな一元管理が実現できます。
ポイント4:操作性とサポート体制
経理や営業の担当者など、ITに不慣れなユーザーでも直感的に操作できるかは、導入後の定着を左右します。無料トライアルがあれば積極的に活用しましょう。また、導入時の初期設定支援や、トラブル時の問合せに迅速に対応してくれるサポート体制の充実度も選定の重要な要素です。
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