
多くの企業が人材育成や社員教育の一環としてeラーニング体制を導入していますが、「種類が多すぎて、どれを選べばよいかわからない」という声もよく耳にします。特に人事部門や教育担当者は限られた予算と時間の中で、効果的な教育体制を構築する必要があります。そのためには、eラーニングの種類を提供形態や教材の形式、さらには教材の提供元別に理解し、それぞれの特性やメリットを把握しておくことが求められます。
本記事では、eラーニングの種類を「提供形態」「教材形式」「教材提供元」という3つの観点で分類し、自社にとってどの方式が最も効果的かを見極め、eラーニング・学習管理システム/サービス導入計画の第一歩となるヒントを提供します。
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目次
提供形態から見るeラーニングの種類
まずeラーニングの導入方式には大きく分けて3つの提供形態があります。それぞれ運用負荷や費用感、セキュリティの考慮点が異なるため、自社のIT環境や運用体制に合った形式を選ぶことが重要です。
- クラウド(ASP)型
- オンプレミス(イントラネット)型
- パッケージ型/自社構築型
クラウド(ASP)型
インターネット経由で提供されるクラウド型のeラーニングシステム・サービスは、導入のしやすさが最大の魅力です。ベンダーが用意した学習プラットフォームを主に月額料金型で利用する方式で、サーバの管理やシステムのアップデートといった、煩雑で人手もコストもかかる作業が不要です。
管理者はアカウント設定や教材の配信に集中でき、受講者はマルチデバイスで好きなタイミングに受講可能となる、導入の難易度、コスト面、期待成果面ともにとても柔軟な学習環境を提供できます。
オンプレミス(イントラネット)型
自社サーバ/自社システム上で運用するスタイルがオンプレミス型です。まず、自社環境で運用するのでセキュリティ面での強みがあり、ネットワーク制限が厳しい業界や機密情報を扱う部署などを具体的に扱うシーンで融通が利きます。
一方で、コスト面、導入の難易度は相応のレベルが求められ、社内インフラと連携した高度な設計が求められることも多くあります。一方でカスタマイズ性は高く、既存システムとの連携が必要な場合には有力な選択肢となります。
パッケージ型/自社構築型
パッケージ型は、eラーニングシステムを一括で購入して自社の環境に合わせて構築・運用する形式です。長期運用を前提としているならば、初期の費用はかかるものの、ランニングコストを比較的抑えた運用が可能です。
ITリテラシーの高い企業・部署であれば、教材の追加やカスタマイズも行えますが、オンプレミス型と同様に導入・運用は原則として自社で行うため、運用の難易度は相応の高いレベルが求められます。
この1ページで解決クラウド型eラーニング・学習管理システムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントを徹底解説
教材形式で見るeラーニングの多様性
次に注目すべきは教材の形式です。教材は受講者の学習体験そのものを左右する要素であり、また会社としても「このことを理解させる」ことが主目的になります。そのため、コンテンツの種類や伝え方によって定着率が大きく変わるといえるでしょう。
- 資料配布型(PDF/スライド)
- 動画配信型
- アニメーション・漫画形式
- VR・没入型
資料配布型(PDF/スライド)
既存の社内資料やマニュアル類をベースにeラーニング用資料を用意し、システムへアップロードして提供するのが資料配布型です。旧来よりあるスタンダードなスタイルで、導入の手軽さと低コストが特徴です。情報共有や初期マニュアルの習得といった目的に有効です。
その一方で、動画や演習に比べると受講者の学習意欲や理解度の向上には限界があります。主目的と本当に合致しているのか/これで大丈夫か、の観点は前もって確認しておく必要があるでしょう。資料配布型のメリットは以下の通りです。
- 既存資料をそのまま活用でき、教材作成の手間や時間を削減できる
- 配布・視聴にかかるコストがかからず、低予算でも導入しやすい
- 受講者が自分のペースで自由にアクセス・復習できるため、柔軟な学習が可能
動画配信型
近年の主流と言えるのが動画配信型です。講義動画や実演を録画し、受講者が動画でいつでも視聴できる形式です。ナレーション付きのスライドや講師の登壇映像によりリアルな学習環境を再現できます。動画配信型のメリットは以下の通りです。
- 視覚と聴覚の両方から情報を伝えられる
- 複数人に一斉配信できるため効率的
- 視聴ログをもとに進捗や理解度を可視化できる
アニメーション・漫画・対話形式
若手社員や初心者層に効果的と考えられるのが、ストーリー性やビジュアルに富んだアニメーションや漫画形式の教材です。抽象的な概念や業務の流れを可視化でき、印象に残りやすいことから定着を重視する分野で導入が進んでいます。アニメーション・漫画形式型のメリットは以下の通りです。
- 難解な内容をわかりやすく伝えられる
- 受講者のモチベーションを高めやすい
- 短時間で要点を把握しやすい
VR・没入型
製造業や医療現場などで注目されるのがVRなどを活用した没入型のeラーニング環境です。実践的な操作や判断力を必要とする教育において実体験に近いシミュレーションができるため、応用力の習得に有効とされています。VR型のメリットは以下の通りです。
- 安全な環境で現場体験が可能
- 実務に即したスキル習得に役立つ
- 高い没入感で集中力を維持しやすい
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教材手段別に見るeラーニングの形式
最も重要となる「教材」は誰がどのように用意するのか、誰が提供・制作するのかによってもその性質や適用範囲が大きく変わります。ここでは代表的な5つのパターンを紹介します。
- 汎用コンテンツ型
- 業界・職種特化型
- 自社内製型
- 外部委託によるオリジナル制作型
- ハイブリッド型
汎用コンテンツ型
汎用コンテンツ型は、多くのベンダー・サービスが提供する既成の教材を活用する形式です。情報セキュリティ、コンプライアンス、ハラスメント対策といった一般的なテーマが中心です。すぐに利用できる手軽さと、定額料金制などでコストコントロールがしやすい点が魅力です。
業界・職種特化型
特化型は、特定業界向けの専門知識やスキルを習得するために開発された、より具体的な教材を提供する形式です。基本スタイルは汎用コンテンツ型と同じですが、医療、製造、金融、ITなど高度な知見が求められる職種に対応し、内容の深さや精度を重視したコンテンツが提供されます。
自社内製型
自社内製型は、自社で既に保有している資料や動画を活用して独自に教材を構築する方法です。学習コンテンツを用意する観点えは最もコストを抑えやすく、自社・現場に即した実践的な教育も可能です。しかし、教材そのものの準備・整備、受講環境の整備、進捗管理のような機能のためのシステム対応に工数が相応にかかります。
外部委託によるオリジナル制作型
ベンダーやeラーニング制作会社へ委託して、企業固有の教育コンテンツを一から制作する方法です。高品質でブランディング効果なども期待できますが、相応の費用と制作期間がかかります。
ハイブリッド型
近年は、複数の提供形態と教材形式を組み合わせた「ハイブリッド型」も主流になりつつあります。
ハイブリッド型では、たとえば新入社員研修には動画とテストを、管理職向けにはより高度なVRやディスカッション形式を用いたものを、というように対象者や目的に応じて学習スタイルを最適化できます。eラーニングシステム/プラットフォームへ標準的に備わる機能、例えば受講者ごとの受講進捗、理解度などを可視化することで、きめ細かな教育支援が可能になります。
ハイブリッド型eラーニングシステムの注目ポイント
複数の教材形式やシステム形態を組み合わせた「ハイブリッド型」は、柔軟な運用と高い学習効果を両立できる方法として、近年注目を集めています。特に受講者の多様なニーズや業務環境に対応する必要がある企業にとって有効な選択肢となり得ます。ポイントは以下の通りです。
- 柔軟性:動画と資料配布、シーンによってはライブ配信や録画教材も併用することで、学習スタイルや業務スケジュールに応じた受講が可能
- 効率化:業務時間と学習時間のバランスを取りながら学べるため、モチベーション維持や学習定着の効果が期待できる
- 組織対応:部門別・階層別に適した形式を使い分けることができ、管理者側も一元的に進捗や成果を把握・分析しやすい
eラーニング形式別の比較表
| 項目 | 汎用コンテンツ型 | 業界・職種特化型 | 自社内製型 | 外部委託によるオリジナル制作型 | ハイブリッド型 |
|---|---|---|---|---|---|
| ポイント | 定額・既製 | 業界専用・セット販売 | 内製資料活用 | オーダーメイド | 組み合わせ |
| 向くシーン | 全社共通の基礎研修、コンプライアンス教育 | 特定業界の法規制研修、専門スキル教育 | 業務マニュアル、商品知識の習得 | 経営理念や独自ノウハウの教育 | 多階層教育、目的別プログラム構築 |
| 初期コスト | 低 | 中 | 低 | 高 | 中~高 |
| 運用コスト | 低 | 中 | 中 | 高 | 中 |
| 効率化 | 高👍 | 中 | 低~中 | 中 | 高👍 |
| 組織対応の容易さ | 中 | 中 | 中 | 高👍 | 高👍 |
| 導入難易度 | 低 | 中 | 中 | 高 | 中~高 |
| 汎用性 | 高 | 中 | 中~高 | 中 | 高👍 |
| 専門性 | 低 | 高👍 | 中 | 高👍 | 高👍 |
| カスタマイズ性 | 低 | 低~中 | 高👍 | 高👍 | 高👍 |
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eラーニングシステムの導入メリット
企業がeラーニングを導入する理由には、コスト削減や学習の効率化だけでなく、教育の標準化や可視化といった多面的な効果があります。ここでは、特に多くの企業が重視する6つの観点に注目し、それぞれのメリットを具体的に解説します。
- コストを削減できる
- 学習を標準化できる
- どの製品が自社に合うかわからない
- 時間と場所の制約をなくせる
- 受講状況を可視化できる
- 多様な教育ニーズに対応できる
- 教育のスピードを加速できる
コストを削減できる
集合研修に比べて、講師費用・会場費・交通費といったコストを大幅に削減できます。また、同じ教材を繰り返し利用できるため、長期的なコスト効率にも優れています。社内での教育体制の合理化にもつながります。
学習を標準化できる
教材を統一することで、教育の内容や質を均一化できます。部署や拠点によるバラつきを抑え、全社共通の知識・スキルの底上げが図れます。新人研修やコンプライアンス教育などに特に有効です。
時間と場所の制約をなくせる
受講者はPCやスマホを使って、業務の合間や自宅からでも学べます。これにより、業務の流れを崩さず学習が進められ、育成スピードの柔軟性が増します。リモートワーク時代の学習形態にもマッチします。
受講状況を可視化できる
eラーニングは受講ログや理解度テストの結果を自動で記録できます。進捗や習熟度をデータで把握できるため、教育の成果管理がしやすくなり、人材開発のPDCAサイクルを確立できます。
多様な教育ニーズに対応できる
動画・資料・VRなど多様な教材形式があり、対象者の役職やスキルレベルに応じた設計が可能です。たとえば、マネジメント層には対話型教材、若手にはアニメーションなど、柔軟な対応ができます。
教育のスピードを加速できる
一斉に教材を配信し、全社員に短期間で共通知識を定着させることができます。制度改定や緊急対策など、早急な情報共有が必要な場合にも迅速な対応が可能です。
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eラーニングシステムの比較ポイント
eラーニングの導入は、「自社に合うか」を判断する比較視点が重要となるでしょう。eラーニングシステムの導入検討においては、以下のポイントを忘れずにチェックしましょう。
導入・初期費用
クラウド型は初期費用が抑えられ、月額・定額制が主流です。オンプレ型やパッケージ型は初期構築コストが高く、長期運用を前提とする企業向けです。また、外注教材は一括費用が発生する一方で、自社教材は内製化によりコストを抑えることができます。
運用・管理負担
クラウド型はベンダー側が運用管理を担うため、IT部門の負担は少なくて済みます。オンプレ型では、自社でアップデートやセキュリティ対策を行う必要があり、管理者のリソース確保が必須です。学習進捗、テスト結果、アンケートの自動集計が可能なシステムは、運用効率化に寄与します。
受講者の学びやすさ
マルチデバイス対応(PC・スマホ・タブレット)は必須条件です。また、UIのわかりやすさ、レッスン構成の明確さ、アクセス性も受講継続率に大きく影響します。進捗可視化やフィードバック機能の充実により、理解度を高めやすくなります。
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eラーニング導入にあたって重要なのは、「自社の教育課題を明確にすること」と「それに合致した方式を選定すること」です。本記事で紹介した提供形態・教材形式・提供元別の分類を参考に、自社にとって適する組み合わせを検討してみてください。比較表などとともに、まず小規模なテスト/無料トライアルを活用して評価し、徐々に全社展開へと進めていくステップを推奨します。
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