
「毎月の経費精算、いつまで手作業で続けますか?」月末になると大量の領収書と格闘し、入力ミスや規定違反のチェックに追われる経理担当者。一方で、申請者も面倒な入力作業や一時的な立て替えに負担を感じています。このような、長年の課題であった非効率な経費精算業務を、AI(人工知能)が根本から変えようとしています。
本記事では、AI搭載の経費精算システムが持つ具体的な機能から、導入によって得られる本質的なメリット、おすすめ製品、そして自社に最適なシステムを選び抜くためのポイントまで網羅的に解説します。AIの力で経費精算業務を次世代のステージへと引き上げる、その第一歩を踏み出しましょう。
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目次
なぜ今、経費精算に「AI」が必要なのか?
多くの企業で、経費精算は長らく「手間がかかって当たり前」の業務とされてきました。しかし働き方の多様化や法改正の波が押し寄せる今、従来のアナログな手法は限界を迎えつつあります。
なぜ、これからの経費精算にAIの力が必要不可欠なのでしょうか。その背景には、3つの大きな変化があります。

限界を迎える従来のアナログな経費精算
紙の領収書を台紙に貼り、Excelの申請書に一件ずつ手入力し、上長がハンコで承認し、経理が目視でチェックする。こうした光景は、今も多くの企業で見られます。
しかし、このプロセスには「入力・確認作業の膨大な時間」「人的ミスの発生」「不正申請のリスク」といった数多くの課題が潜んでいます。特に、従業員規模が拡大するにつれて、経理部門の負担は加速度的に増大。コア業務であるはずの決算や財務分析に充てるべき時間が、単純なチェック作業に奪われてしまうのです。リモートワークの普及は、さらにこの問題を深刻化させました。出社しなければ申請・承認ができない状況は、明らかに時代の流れに逆行しています。
電子帳簿保存法への対応など喫緊の課題
2022年1月に改正された電子帳簿保存法(電帳法)への対応も、企業にとって待ったなしの課題です。特に、電子取引で受け取った請求書や領収書を電子データのまま保存することが義務化され、違反した場合には罰則も想定されます。
電帳法の要件は複雑で、タイムスタンプの付与や検索機能の確保など、手作業だけですべての要件を満たし続けるのは現実的ではありません。
AIを搭載した経費精算システムは、こうした法的要件に標準で対応しているものがほとんどです。法改正のたびに業務フローを見直す手間から解放され、企業はコンプライアンスを確保しつつ、本来の事業活動に集中できるようになります。
「守りの経理」から「攻めの経理」への変革
これからの経理部門に求められるのは、単なる正確な処理業務だけではありません。蓄積されたデータを分析し、コスト削減の提案や経営戦略の意思決定に貢献する「攻めの経理」への変革が期待されています。
しかし、日々のチェックや入力作業に追われていては、データ分析にまで手が回りません。AI経費精算システムは、こうした手作業を自動化することで、経理担当者を単純作業から解放します。
AIによって捻出された時間と、システムによって可視化された正確な経費データを活用し、より付加価値の高い戦略的な業務へとシフトしていく──。AIの導入はそのための強力な武器となるのです。
AI経費精算システムで実現できること
では、具体的にAIは経費精算業務をどのように変えてくれるのでしょうか。AI搭載システムが持つ代表的な5つの機能は、これまで人間が時間と労力をかけて行ってきた作業を、高速かつ正確に代替します。

AI-OCRによる領収書・請求書の自動データ化
AI-OCR(光学的文字認識)は、AIの画像認識技術を活用して、紙の書類や画像データから文字情報を読み取る機能です。経費精算においては、スマートフォンで撮影した領収書の画像から「日付」「支払先」「金額」といった情報をAIが自動で読み取り、データ化します。
これにより、申請者は面倒な手入力から解放されます。さらに、読み取ったデータはそのまま申請情報として利用できるため、入力ミスも発生しません。交通系ICカードの利用履歴読み取りや、オンラインで購入した際の領収書PDFのアップロードに対応するシステムも多く、あらゆる経費発生シーンで申請の手間を劇的に削減します。
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勘定科目の自動推測と仕訳作業の効率化
経理担当者を特に悩ませる業務が「仕訳」です。どの費用がどの勘定科目に該当するのかを判断し、会計システムに入力する作業は、専門知識と手間を要します。
AI経費精算システムは、過去の膨大な仕訳データを学習することで、支払先の名称や摘要の内容から、自動で適切な勘定科目を推測・提案します。例えば「株式会社ITセレクト/タクシー代」という情報があれば、AIが「旅費交通費」という科目を自動で選択します。これにより、経理担当者の判断業務が大幅に軽減されます。月次決算の早期化にもつながります。
交通費・出張費の経路検索と自動計算
営業担当者などの外出が多い職種で特に手間のかかるのが交通費精算です。訪問先までの経路を調べ、運賃を計算し、1件ずつ入力するのは非常に面倒な作業でした。
多くのAI経費精算システムは、交通費・経路算出アプリと連携しており、出発地と目的地を入力するだけで最適な経路と運賃を自動で計算します。定期区間を自動で控除する機能もあり、申請ミスや不正な請求を防ぐことにも役立ちます。出張申請の際には、交通費だけでなく、宿泊費や日当なども含めて自動計算してくれるため、複雑な出張費精算もスムーズに行えます。
申請内容の不備・規定違反の自動チェック
「交際費の上限を超えている」「必須であるはずの会議名が記載されていない」といった申請の不備や社内規定違反のチェックも、承認者や経理担当者の大きな負担です。差し戻しや確認のやり取りは、双方にとって時間の無駄でした。
AIは、あらかじめ設定された社内規定と申請データを自動で照合し、ルール違反の可能性がある項目を検知してアラートを出すといったことも得意です。
これにより、人間が1件ずつ目視で確認する必要がなくなり、チェック業務の精度とスピードが飛躍的に向上します。承認者はより重要な承認判断に集中でき、ガバナンスの強化にも直結します。
過去データから学習する高度な不正検知
意図的な水増し請求やカラ出張といった不正な経費申請は、企業にとって看過できないリスクです。しかし、巧妙な不正を人間の目だけで見抜くことには限界があります。
AIは、全従業員の過去の申請パターンや傾向を学習・分析することで、「いつもより交通費が高額」「通常利用しない店舗での接待」といった異常なパターンを検知します。
特定の個人だけでなく、部署単位やプロジェクト単位での経費利用の傾向も分析できるため、組織的な不正の早期発見にも繋がる可能性があります。これは、従来のシステムにはなかった、AIならではの高度な機能と言えるでしょう。
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AI経費精算システムの導入で得られる6つのメリット
AIの導入は単なる作業の自動化に留まりません。申請者から経営層まで、企業に関わるすべての人に大きなメリットをもたらし、組織全体の生産性を向上させます。ここでは代表的な6つのメリットを具体的に見ていきましょう。

申請者・承認者の入力・確認作業を大幅に削減できる
最大のメリットは、現場の従業員が経費精算というノンコア業務に費やす時間を劇的に削減できる点です。
例えば、これまで月に1時間かかっていた申請作業が、領収書の撮影と数回のタップだけで完了するようになれば、その時間を本来の営業活動や企画業務に充てられます。具体的には、AI-OCRによる自動入力や交通費の自動計算機能により、申請者の作業時間は80%以上削減されるという調査結果もあります。承認者も、システムが規定違反を自動チェックしてくれるため、スマートフォンで出先からでも安心して承認作業を進めることが可能となります。
経理担当者の目視チェックと手作業を撲滅できる
経理担当者にとってAIの導入と活用はまさに革新といえます。大量の紙の領収書と申請書を1枚ずつ突き合わせ、金額や内容、規定違反がないかを目視で確認する作業は、多大な集中力と時間を要する上に、心理的な負担も大きいものでした。
そこでAIが申請内容の一次チェックを担い、仕訳まで自動で行うわけです。経理担当者は一気に面倒な確認・修正作業から解放されます。その結果、月末の繁忙期でも残業時間を大幅に削減でき、より専門性が求められる財務分析や資金繰り計画といった戦略的な業務に集中できる環境が整います。
ペーパーレス化を促進し、リモートワークに対応できる
紙の領収書や申請書を前提とした旧来の業務フローは、リモートワークや多様な働き方を阻害する大きな要因です。
経費精算のためだけに出社が必要な状況は、従業員の生産性を著しく低下させます。AI経費精算システムを導入し、スマートフォンでの申請・承認が完結するようになれば、完全なペーパーレス化が実現します。オフィスに書類を保管する必要もなくなり、保管スペースや管理コストの削減にも繋がります。これにより、場所を選ばない柔軟な働き方を推進し、企業全体のDXを加速させることができます。
人的ミスを防ぎ、ガバナンスを強化できる
どれだけ注意深く作業しても、人が介在する以上、入力ミスや確認漏れといったヒューマンエラーを完全になくすことは困難です。これらのミスは、手戻りを発生させるだけでなく、時には税務上のリスクに繋がる可能性も否定できません。
AIによる自動化は、こうした人的ミスを根本から排除します。さらに、社内規定に基づいた自動チェックや、AIによる不正パターンの検知機能は、内部統制、いわゆるコーポレート・ガバナンスを強化する上で極めて有効です。公平で透明性の高い経費精算プロセスを構築することは、従業員のコンプライアンス意識向上にもつながります。
電子帳簿保存法の要件をスムーズに満たせる
前述の通り、電子帳簿保存法への対応はすべての企業にとって重要な経営課題です。多くのクラウド型AI経費精算システムは、この法律が定める「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たす機能を標準搭載しています。
例えば、タイムスタンプの自動付与や、取引年月日・金額・取引先で検索できる機能などがそれに当たります。自社で一から法対応の体制を構築するのに比べ、システムを導入する方がはるかに低コストかつ確実に要件を満たすことが可能といえます。後の法改正にもシステム側がアップデートで対応してくれるため、常に安心して運用を続けられます。
蓄積された経費データを経営分析に活用できる
経費精算システムに蓄積されるデータは単なる精算の記録ではありません。それは「誰が」「いつ」「何に」「いくら使ったか」という企業の経済活動を示す貴重な情報資産です。
AI経費精算システムを使えば、これらのデータがリアルタイムで、かつ正確にデジタル化されます。例えば、「どの部署で出張費が増加しているか」「プロジェクトごとのコストは予算内に収まっているか」といった分析が容易に行えます。これにより、経営層はデータに基づいた迅速な意思決定や、より効果的なコスト削減策の立案が可能になるのです。
失敗しないAI経費精算システムの選定ポイント
AIの活用も踏まえた経費精算システムの導入効果を最大化するには、やはり自社の課題や運用フローに合った製品を選ぶことが不可欠となるでしょう。多機能な製品が必ずしも最適とは限りません。ここでは、比較検討の際に必ず確認すべき5つの重要なポイントを解説します。

AI-OCRの読取り精度と対応範囲
AI-OCRはシステムの核となる機能です。その性能は実は製品によって差があります。特に、手書きの領収書や、少しフォーマットが複雑な請求書などをどれだけ正確に読み取れるかは、業務効率に直結します。
候補とした製品に無料トライアルやデモ版があれば、遠慮なく試用しましょう。実際に自社でよく利用する領収書のタイプをいくつか読み取らせてみて、その精度を比較検証することが重要です。
また、レシートだけでなく、請求書や納品書など、経費精算で扱う書類の種類に幅広く対応しているかも確認しましょう。
自社の規定に合わせたチェック機能の柔軟性
経費に関する社内規定は企業によって様々です。「役職ごとに交際費の上限が違う」「プロジェクトによって利用できる交通手段が異なる」など、独自のルールが存在することも少なくありません。
そこで、導入を検討しているシステムが「こうした自社の複雑な規定に合わせて、チェックロジックを柔軟に設定できるか」の観点のチェックがとても需要です。設定の自由度が低いと、結局システムのアラートとは別に人間が確認する作業が発生し、導入効果が半減してしまいます。どこまで細かく設定できるか、デモなどで具体的に確認しましょう。
会計システムやその他ツールとの連携性
経費精算システムは単体で完結するものではありません。最終的には会計システムにデータが連携され、財務諸表が作成されます。
そのため、現在利用している会計システムとスムーズにデータ連携できるかは必ず確認が必要です。CSVでの出力だけでなく、API連携に対応していれば、ボタン1つで、あるいは自動的に仕訳データを連携でき、経理の作業をさらに効率化できます。
併せて、勤怠管理システムやチャット/グループウェアなど、他の業務システムとも柔軟に連携できる製品を選ぶと、さらなる広範囲な業務改善が期待できます。
スマートフォンでの操作性・UIの分かりやすさ
経費精算システムは、経理担当者だけでなく全従業員が利用するツールです。そのため、ITに不慣れな人でも直感的に操作できる、分かりやすいUI(ユーザーインターフェース)であることが極めて重要です。
特に昨今は、外出先からスマートフォンで申請/承認するニーズが増えています。スマホアプリの操作性も念入りにチェックしましょう。文字の大きさ、ボタンの配置、画面遷移のスムーズさなど、実際に触ってみてストレスを感じないかを確認することが、導入後のスムーズな定着につながります。
電子帳簿保存法への対応レベルとサポート体制
ほとんどのシステムが電帳法への対応を謳っていますが、その対応レベルは一様ではありません。それをより確認する手段として、JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の認証を取得しているかどうか、などは判断基準の1つになります。
また、法改正は今後も行われる可能性があります。その際に「迅速なアップデート対応が期待できるか」「不明点があった場合に気軽に相談できるサポート体制が整っているか」も重要な選定ポイントです。導入時の設定支援や、従業員向けの説明会の実施など、ベンダーのサポート内容も比較検討しましょう。
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