
ロット管理は、製造や物流、食品業など多くの現場で在庫や品質を守るために欠かせない手法です。製品や原材料を一定の単位ごとにまとめて管理することで、在庫管理の効率化やトラブル発生時の迅速な対応が実現しやすくなります。
本記事では、在庫管理におけるロット管理の基本からシリアル番号管理との違い、現場で得られるメリットや運用手法、よくある課題とシステム導入のポイントまで、現場目線で分かりやすく解説します。
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目次
ロット管理の基本と現場で必要とされる理由
日々の業務で「もし不良品が出たらどこまで遡って回収すればいいのか」「賞味期限切れによる廃棄コストを減らしたい」といった悩みを抱えるシーンは多いと思います。製造や物流、食品などの現場では特に、こうした課題が経営に大きな影響を及ぼします。
ロット管理によって、製品や原材料を一定の条件でまとめて管理し、品質向上や在庫最適化、トラブル発生時の迅速な対応を実現することを可能とします。まずはロット管理の考え方と、現場での重要性を改めて確認していきましょう。
ロット管理とは何か?
ロット管理は、同じ条件で製造または仕入れた製品や部品のまとまりを「ロット」という単位でまとめて管理する手法です。例えば、ある日に同じラインで製造されたお菓子のケース単位、同じ仕入先からまとめて届いた原材料などが1つのロットとなります。
このロットには固有の「ロット番号」を付与して管理します。ロット番号はそのグループの誕生証明書のようなもので、製造日や仕入日、原材料など、後から振り返る時に役立つ情報をひも付けて記録・管理します。
このロット番号を軸に管理することで、製品や材料は何か、どこから来てどこへ行ったのか、その基礎情報、流れや履歴を適切にたどれるようになります。
なぜロットで管理する必要があるのか?
現場では、品質を一定に保つ/正しい期日で入庫・製造・検品・出荷するといったことだけでなく、万が一のトラブル時には「どれが問題なのか/何が原因なのか」「どこまで回収すればよいのか」といったことも適切に把握する必要があります。例えば「食品に異物が混入していた」ことが発覚したときを想像してみてください。
ロット管理によって、「この日にこの原材料で作った製品が原因であり、これを対象に回収する」というように問題の範囲を特定できます。これにより検査検証の確認時間を短縮でき、不必要な全品回収や過剰な廃棄を避けられます。無駄なコストだけでなく、「全数製造・出荷停止」のようなビジネスリスクの発生、それに伴う自社の信用失墜のようなリスクも防ぐことができます。
さらに、在庫の先入れ先出し(FIFO)や、賞味期限や有効期限の管理がしやすくなり、無駄な在庫や廃棄のリスクも減らせます。
FIFOはFirst In, First Outの略で、倉庫に入れた順番どおりに在庫を出荷・消費する方法です。 最初に納品された商品から順に出すので、賞味期限や有効期限の古いものから使えます。 在庫の劣化や廃棄ロスを防ぎやすくなり、無駄なコストを抑制できます。
こうした仕組みは、企業のリスクを抑え、現場を守るための「経営ツール」として今や欠かせないものです。
適正在庫の考え方や最適化手順については、「適正在庫とは? 定義から計算方法、最適化の手順までわかりやすく解説」もぜひご参照ください。
ロット管理とシリアル番号管理の違いとは?
ロット管理と似た言葉で「シリアル番号管理」があります。それぞれ何が違うのかも確認しておきましょう。
ロット管理は、同じ条件でまとめて作られた製品をグループで管理する方法で、食品や部品など大量生産されるものを効率的に管理したいシーンに向くのは前述した通りです。一方のシリアル番号管理は「一つひとつの製品や部品に付番して、個別管理する」ための管理手法です。
シリアル番号管理は、たとえば高額な傾向のあるPCや大型の家電製品、医療機器、完成車など、1台、1つごとの履歴や保証が必要な場合に適しています。
両者の違いをシンプルにまとめると、次のようになります。
| 比較項目 | ロット管理 | シリアル番号管理 |
| 管理単位 | グループ(ロット) | 個別製品(1台ずつ) |
| 適した製品 | 食品、薬品、工業部品など | 電子機器、自動車、精密機器など |
| 主な目的 | 品質管理、在庫効率化、追跡 | 個別保証、修理履歴、資産管理 |
| 管理コスト・手間 | 比較的低い | 高い |
自社の扱う商品や現場の状況に合わせて、最適な管理方法を選ぶことが重要です。
ロット管理を導入することで得られるメリット
ロット管理の最大の強みは、単なる記録のための仕組みではなく、現場の課題解決を支えられるようになることです。ここでは、現場の視点からロット管理の主なメリットを具体的に解説します。
- 在庫管理を最適化できる
- 不良品の特定・追跡が素早くできる
- 余剰在庫や欠品リスクの低減につながる
- 工程管理・品質管理を効率化できる
- トラブル時のリスク範囲を最小限にできる
在庫管理を最適化できる
ロットごとに入荷日や製造日、期限などの情報を細かく記録することで、在庫の内訳や状態がひと目で分かります。「このロットは来月で期限切れになる」「このロットは新しい」など、在庫の鮮度を正確に把握できるので、古いものから順に出荷するといった運用がしやすくなります。
賞味期限切れなどによる無駄な廃棄も減らせるため、コスト削減につながります。倉庫スペースの有効活用や、在庫の過不足を防ぐこともできるため、日々の在庫管理がぐっと楽になるでしょう。
不良品の特定・追跡が素早くできる
もし製品に不良が見つかった場合でも、ロット管理を導入していれば、どのロットに問題があったのかすぐに分かります。問題のあるロット番号を手がかりに、同じ材料や条件で作られた製品だけをピンポイントで回収・調査できるため、全品回収などの最悪の事態を避けやすくなります。
さらに、不良の原因調査や再発防止のために必要な履歴情報も集めやすく、品質管理レベルの向上につながります。
余剰在庫や欠品リスクの低減につながる
ロットごとの入出庫データを記録・分析することで、これまで分かりづらかった需要のパターンや在庫の動きが「見える化」されます。どのタイミングでどのロットが使われたか分かるので、必要な分だけを的確に仕入れたり生産したりする計画が立てやすくなります。
余計な在庫を抱えすぎたり、反対に在庫が足りなくて販売機会を失ったりするリスクが減り、より安定した現場運営が可能です。
工程管理・品質管理を効率化できる
ロット番号は、製造から出荷までのさまざまな情報をひとまとめにするインデックスの役割を果たします。例えば「このロットはいつ・どこで・誰が作ったのか」「どの原材料を使ったのか」「品質検査の結果はどうだったか」などの情報をまとめて管理できます。
これにより、品質監査や規制当局への報告が簡単になり、現場スタッフの作業も分かりやすくなります。蓄積したデータを分析すれば、品質改善や業務効率化のヒントも見つかりやすくなります。
トラブル時のリスク範囲を最小限にできる
万が一トラブルが起きても、ロット管理をしっかり行っていれば、影響範囲を「問題のあったロットだけ」に絞り込めます。そのため、製品回収や交換にかかる費用・手間・人件費を大きく抑えられ、企業のブランドイメージや顧客からの信頼を守りやすくなります。
こうした一連のメリットは互いに関連し合い、全体として「現場力の底上げ」「コスト削減」「顧客満足度の向上」といった好循環を生み出します。
ロット管理の現場運用と手法
実際にロット管理を導入する際、どのように現場で運用すればよいのでしょうか。運用手法は大きく分けて「手作業・Excel管理」と「在庫管理システムの活用」に分かれます。それぞれの特徴と注意点を整理します。
手作業・Excelによるロット管理
規模が小さい現場や、導入コストを抑えたい場合に選ばれる方法です。具体的には、製品の箱や容器にスタンプや手書きでロット番号を記載し、入庫や出庫のたびにエクセルや紙の帳票に記録します。管理表には次のような項目を設けるのが一般的です。
ロット管理例
| 管理項目 | 内容例 |
| ロット番号 | 240520-L1-001など |
| 製品名 | 例:○○チョコレート |
| 製造日 | 2024/5/20 |
| 賞味期限 | 2025/5/20 |
| 入庫日・入庫数 | 2024/5/21・100箱 |
| 出庫日・出庫数 | 2024/6/1・10箱 |
| 現在在庫数 | 90箱 |
| 保管場所 | 第2倉庫B列 |
しかし、手作業での管理はどうしても「入力ミス」「記録漏れ」「担当者しか分からない属人化」などのリスクが生じてしまいます。扱う製品数や拠点の増化に伴って管理作業は加速度的に煩雑になっていくため、人的ミス、管理ファイルの破損、情報の遅延といったトラブルも発生しやすくなります。
手作業での低コスト在庫管理については、「棚カードを活用する低コスト在庫管理のポイント、その“限界”とは?」も参考になります。
在庫管理システムによるロット管理
手作業の限界を超えて、より正確かつ効率的に管理したい場合は、在庫管理システムの導入が有効です。
在庫や倉庫情報全体のデータ管理に向け、バーコードやQRコード、ICタグのような電子的読み取りの仕組みでロット番号を認識し、ハンディ端末やアプリでリアルタイムに入出庫を記録できます。
システム化によって、以下のような効果が期待できます。
- 入力ミスや記録漏れが大幅に減る
- 在庫情報をリアルタイム化できる/現場・他部署などへもリアルタイムに共有できる
- 先入れ先出しや棚卸しが自動化され、作業効率と確実性が上がる
このように、システム化は単なる記録作業の効率化ではなく、「業務全体の流れ」を変え、現場の負担軽減や品質向上につながる変革の一歩となります。
バーコードを活用した在庫管理の具体的手法は、「バーコードでの在庫管理の概要」をご覧ください。
おすすめRFIDで在庫管理を効率化する方法|「ユニクロ」のセルフレジの仕組み
ロット管理でよくある課題と注意点
ロット管理には多くのメリットがありますが、導入や運用には注意すべきこともあります。主な注意点は以下の通りです。現場の負担を増やしてしまったり、運用ルールがあいまいだと、せっかくのロット管理も効果が薄れてしまいます。
- 管理工数や入力負担が増える場合もある
- 管理ルールを社内で明確にする必要がある
- システム化の際は費用対効果・使いやすさに注目
管理工数や入力負担が増える場合もある
ロット単位で細かく記録するようになる分、基本的な管理項目や作業量は増えます。Excel管理や紙・手作業の工夫で解決する運用は手軽に導入でき、はじめはある程度の効果が期待できます。しかし現場の作業が煩雑になりやすく、製品数や入出庫が多い現場では次第に管理が追いつかなくなることが危惧されます。
昨今は、このような管理作業の負担を感じる前に「システム化や自動化を検討する」ことが推奨されるようになっています。
管理ルールを社内で明確にする必要がある
どんなルールでロットを分けるか、ロット番号の付け方や管理範囲、作業手順などを事前にしっかり決めておくことが重要です。
ルールが曖昧ではいけません。担当者ごとにやり方が違えば正確な管理ができなくなります。新入社員でも、どんな担当者でも困らないよう、ルールは共有・標準化しましょう。
システム化の際は費用対効果・使いやすさに注目
システムを導入する際は、価格や有名なものだけで選ぶのではなく、「現場に合った機能があるか」「使いやすいか」「サポート体制はしっかりしているか」を必ずチェックしましょう。
導入前に現場スタッフも交えてデモやトライアルを行うことも失敗しないためのポイントです。
倉庫業務全体を強化したい場合は、「WMS(倉庫管理システム)のおすすめツールを徹底比較」をご参照ください。
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在庫管理システム導入のポイントを押さえる
在庫管理システムの導入でロット管理の効果を最大限に引き出すために、選定時のチェックポイントをまとめます。
システム導入時のチェックポイント
- ロット番号や賞味(使用)期限管理など、必要な機能が標準装備されているか
- 現場で実際に操作してみて使いやすいか
- 他の業務システムと連携できるか
- ベンダーから十分な導入支援・サポートを受けられるか
- 将来的な業務拡大やカスタマイズに対応できるか
現場の声をしっかり聞き、比較検討しながら選ぶことが失敗しないポイントです。
在庫管理システムの標準機能一覧は、「在庫管理システムの機能一覧」で詳しくチェックできます。
おすすめ在庫管理システムの機能一覧|システム導入の効果、主要製品の対応機能比較表
ロット管理機能搭載の在庫管理システム7選
ここでは、ロット管理に対応する代表的な在庫管理システムを厳選してご紹介します。自社の業種や規模、現場の課題に合わせて比較検討しましょう。(製品名 abcあいうえお順/2025年8月時点)
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