
海外向けにも販路を広げると、在庫や配送の悩みが一気に増えます。どこに在庫を置くか、どのサービスを使うか、どのシステムでつなぐかを決めるだけで、欠品や滞留の発生がぐっと減ります。本記事では、自社倉庫・無在庫・現地倉庫の使い分け、FBAや3PL、SLSの活用法、在庫システム導入時の確認点までを流れで整理します。
この1ページでまず理解!「在庫管理システム」の主な機能、メリット/デメリット、選定ポイント|人気・定番・おすすめの製品をチェック
目次
越境ECにおける在庫管理の重要性
越境ECの在庫管理は、単なる数量管理にとどまりません。国や地域ごとに異なる需要を見極め、長い国際配送リードタイムや通関の影響も考慮し、欠品や過剰在庫といった損失を同時に抑えることが求められます。また、返品や破損への対応、販売チャネルが増えた時の在庫連動など、複雑な管理が事業の成否を分ける要素となります。
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越境ECでより確実な在庫管理が求められる理由
海外向けECの場合、商品の調達から納品までにかかるリードタイムは国内よりも長くなりやすいです。例えば、航空便や船便の選択によって所要日数が大きく変わるうえ、各国の通関手続きも配送の遅延要因になります。そのため、発注タイミングを少し間違えるだけで、数週間の欠品や、逆に余計な在庫を抱えるリスクが高まります。
さらに、為替レートの変動も無視できません。円安や円高の動きによって仕入れコストや売価の見直しが必要となり、在庫量や販売価格の調整が頻繁に発生します。こうした変動に柔軟に対応するには、正確な在庫情報と迅速な判断が不可欠です。
越境ECでは禁制品や規制品の混入にも注意が必要です。例えば、特定成分を含む化粧品や電子機器など、国ごとにルールが異なります。規制品が誤って発送されると、税関で差し止めや罰金、最悪の場合はアカウント停止のリスクまで生じます。在庫段階でのチェックが重要です。
また、ブラックフライデーや「独身の日」など、現地の大型イベントがある時期には需要が急増します。こうしたイベントを見越して、数カ月前から現地倉庫に十分な在庫を用意しておく必要があります。さらに、紛失や遅延など国際配送ならではのリスクもあるため、一定量の安全在庫を確保し、万が一の際にも顧客対応ができる体制が求められます。
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在庫管理を怠った場合のリスク
在庫管理をおろそかにすると、その影響は国内ECの比ではないデメリットがあります。例えば欠品が発生すると、ただ売上を逃すだけでなく、顧客評価の低下やリピーターの離脱につながります。Amazonのようなモールでは、在庫切れが検索順位の下落やセラー評価の悪化に直結することもあります。
また、過剰在庫を抱えると、特にFBAや3PLなど海外倉庫の保管料が高額となり、資金繰りが厳しくなります。在庫が現地に残ったまま売れない場合、回収や処分も困難です。
さらに、複数国・複数チャネルで販売している場合、在庫情報が連携されていないと「売り越し(在庫が無いのに注文を受ける)」が発生しやすくなります。これが繰り返されると、アカウントの停止やペナルティの原因になります。
大型セール期に在庫が不足すると、大きな機会損失が発生します。リードタイムの長さから、セール期間中の緊急補充は現実的に困難です。加えて、通関で差し戻された商品が倉庫に滞留すると、スペースを圧迫し保管コストの増大やキャッシュフロー悪化の要因となります。
余剰・滞留の処方箋は「過剰在庫の削減方法とは? 原因から学ぶ適正在庫とシステム導入」をご覧ください。
越境ECの在庫管理方式
越境ECの在庫管理方式は大きく分けて「自社保管」「無在庫販売」「現地倉庫活用」の3つがあります。事業の規模や商品の特性、リスク許容度に応じて、これらを単独または組み合わせて運用していくことが多いです。
商品の体積・重量・賞味期限によっても、どの方式が合うかは変わります。例えば、重い商品や大きい商品は現地倉庫が有利な場合が多く、消費期限の短い食品や化粧品は配送日数が短縮できる現地倉庫が適しています。一方で、軽くて小さい商品は自社保管や無在庫販売でも対応しやすいです。
また、月間の注文件数やSKU数によっても適した方式が異なります。注文数が少ない場合やSKUが多い場合は、無在庫販売や自社発送でリスクを抑えやすいですが、売れ筋商品が安定して売れる場合は現地倉庫の活用が効果的です。
自社倉庫での在庫管理
自社倉庫や国内の委託倉庫に在庫を集約し、海外の顧客へ直接発送するやり方です。自社で出荷手順を標準化しやすく、ブランド体験を大切にしたい場合や、カスタマイズ性の高い発送が求められるケースに向いています。梱包資材や同梱物の工夫も自在にできます。
一方で、海外発送は1件ごとに国際送料が発生しやすく、送料を価格に上乗せすると価格競争力が下がります。自社負担だと利益率が圧迫されます。そのため、高単価や独自性の強い商品でないと継続が難しい場合もあります。
また、ピッキングや検品など出荷作業はすべて自社で行うため、人的ミスのリスクも伴います。棚卸しやバーコード検品などWMS(倉庫管理システム)を活用して、在庫の誤差を早期に発見し修正する運用が重要です。
無在庫販売
無在庫販売は、在庫を持たずに顧客から注文が入ったタイミングでサプライヤーへ発注し、サプライヤーが直接顧客へ商品を発送する仕組みです。ドロップシッピングとも呼ばれ、初期投資や在庫リスクを最小限にできる点が魅力です。
ただし、サプライヤー側の在庫管理が不十分だと「売り越し」が発生しやすくなります。在庫情報の自動連携や監視が必須です。また、梱包品質や発送速度もサプライヤー任せになるため、顧客体験が一定しにくい面もあります。信頼できるパートナー選びが重要です。
さらに、価格の急な変更や在庫切れ時の代替提案など、フロー整備も求められます。AmazonやeBayなどのモールでは、無在庫販売への規約もあるため、ルール違反や発送遅延を防ぐ体制づくりが必要です。
現地倉庫活用(倉庫代行)
販売国やエリアごとに現地倉庫へまとめて商品を送り、現地から顧客へ直接発送する方式です。Amazon FBAや現地の3PL(サードパーティロジスティクス)、ShopeeのLFFなどが代表的です。
最大のメリットは配送日数を大幅に短縮できる点です。現地の顧客に数日で商品を届けることができ、顧客満足度向上やリピート購入促進にもつながります。
一方、最初の現地搬入や在庫移動、どのくらいの量をどの商品で送るかという計画が重要になります。返品や再販可否も現地で判断・運用する必要があり、パートナーとの連携やフローの明確化がカギです。また、現地入庫時には税金や表示義務など法律面のチェックも欠かせません。
発送リードタイム短縮・配車計画には「【2025最新】輸配送管理システム(TMS)のおすすめツールを徹底比較」をご覧ください。
方式ごとの違いを整理すると、以下の通りです。
| 方式 | 初期コスト | 注文あたりコスト | 配送スピード | 管理・統制 | 在庫リスク | 最適な事業者 |
| 自社倉庫 | 〇中 | ▼低 | ▶速い | ▲高 | 〇中 | D2C・スタートアップ |
| 無在庫販売 | ▼低 | 〇中 | ◀遅い | ▼低 | ーなし | 新商品テスト・多SKU |
| 現地倉庫活用 | 〇中 | 〇中 | ▶速い | ▲高 | 〇中 | 大量販売・確立市場 |
越境ECの代表的な物流サービス
物流サービスの選び方も、在庫管理戦略の中核です。販売プラットフォームが提供するサービスと、独立型の外部物流(3PL)があり、それぞれ特徴があります。
プラットフォーム付帯サービスは、そのモール内で販売に最適化され、導入のしやすさや販促効果が大きな強みです。一方、外部物流は複数チャネルの在庫を一元管理しやすく、事業拡大や自社運用の自由度も広がります。
FBA(Fulfillment by Amazon)
FBAはAmazonが提供する総合物流サービスです。商品をAmazon倉庫に納品すれば、保管から出荷、返品対応まで一括で任せることができます。
FBAの大きな利点は、Prime対象になることで表示順位や転換率が上がりやすいことです。一方で、FBA在庫と他チャネル(自社ECや他モール)の在庫は別管理になるため、一元管理には追加のシステムや運用工夫が必要です。
また、FBAの手数料体系は頻繁に見直されます。保管料や配送手数料、長期保管手数料などが発生するため、定期的なチェックと在庫回転率の管理が欠かせません。
外部物流(3PL)
3PLはAmazonやShopeeなど特定のモールに依存せず、複数のECモールや自社サイトの注文をまとめて処理できる物流パートナーです。倉庫でのピッキングや梱包も、チャネルごとにカスタマイズが可能で、ブランディングを重視したい場合に有効です。
国際配送キャリアや保険、関税の立替など選択肢も広く、SLA(サービス品質保証)や月次レポートによる運用改善も行いやすい特徴があります。
Shopee Logistics Service(SLS)
SLSは東南アジア・台湾で利用されるShopee独自の越境物流サービスです。日本のセラーは、商品をShopeeの国内倉庫に送るだけで、その先の国際輸送や現地配達まで一括して手配されます。追跡情報もプラットフォーム内で確認でき、問い合わせ対応も効率化できます。
ただし、SLSには対象マーケットや発送不可品の制限があるため、事前確認が必須です。国内倉庫への納品遅延が全体の配送リードタイムに影響するため、自社側の出荷管理も重要になります。
現地倉庫サービス(LFF)
LFFはShopeeが展開する現地倉庫サービスで、売れ筋商品をあらかじめ納品することで、現地からの迅速な発送が実現します。ただし、2025年8月時点で利用できるのはシンガポールとマレーシアに限られます。納品計画や補充の頻度もきめ細かく設定し、欠品や過剰在庫を防ぐ運用がポイントとなります。
役割分担の再確認には「物流システム・在庫管理・WMSの違いとは?」が参考になります。
越境ECにおける在庫管理の課題と解決策
越境ECの在庫管理には、主に「需要予測」「連携」「国際配送」という3つの課題があります。これらの課題を克服するには、販売データを活用した客観的な分析と、標準化された運用ルールの整備が欠かせません。
- 在庫切れと過剰在庫の対策
- 複数チャネルの在庫一元管理
- 国際配送リスクの軽減
在庫切れと過剰在庫の防止
在庫切れは販売機会の損失、過剰在庫はキャッシュフローの悪化につながります。このバランスを保つためには、週単位・国別での販売データの分析が重要です。イベントやセールのカレンダーも国ごとに管理し、需要の急増時に備えます。
SKUごとに安全在庫を数式に基づいて設定し、四半期ごとに見直すことで、欠品と滞留のリスクを同時に抑えます。自動補充ルールも導入し、発注タイミングや発注量の設定を標準化することで、人的ミスや発注漏れを防げます。
複数チャネルの在庫一元管理
複数のECモールや自社サイト、実店舗で販売している場合、在庫情報が分断されると「売り越し」や機会損失が発生しやすくなります。システム上で全チャネルの在庫を仮想的に統合し、注文と同時に在庫を自動引き当てすることが求められます。
注文キャンセル時の即時在庫戻し込みや、在庫連携の優先順位・締切時間の統一も、運用の安定化には欠かせません。セット品・バンドル品の構成もシステムで管理し、二重引当や売り越しを防ぐことが大切です。
国際配送リスクの軽減
国際物流では、荷物の破損や紛失、通関トラブルのリスクがあります。これらを最小化するために、梱包基準や補強資材の統一、追跡番号の必須化とタイムリーな通知、代替発送フローの文書化が必要です。
また、通関時のHSコードや原産地表示など、入庫時点で正確な情報登録を徹底し、スムーズな輸出入につなげる工夫も求められます。
在庫管理システムを導入するメリット
事業の初期は手作業やExcel管理でも運用できますが、SKUや販売チャネルが増えると限界が見えてきます。ヒューマンエラーや在庫差異、売り越しや過剰在庫が大きな問題となる前に、在庫管理システムの導入が有効です。
リアルタイムで在庫を把握できる
在庫管理システムを導入すると、今どこに何がどれだけあるかをリアルタイムで把握できるようになります。受注や出荷、返品などの情報が瞬時に反映され、売り越しや欠品リスクの低減に直結します。倉庫間の移動履歴も自動記録され、トレーサビリティの確保にも役立ちます。
ヒューマンエラーを減らせる
バーコードやQRコードでの入出庫記録によって、品番や数量のミスを大幅に減らすことができます。棚卸し時の在庫差異もアラートで早期に検知できるため、早めの対策が可能です。
物流コストを抑えられる
在庫管理システムは、国別・SKU別に保管費用や配送料を可視化できます。これにより、どの国の倉庫にどの商品を置けば最もコストが下がるかを戦略的に判断でき、回転が遅い在庫はセールやセット販売で効率的に処分できます。
顧客満足度を向上できる
在庫表示の誤差が縮小し、「注文したのに在庫切れだった」というケースを大幅に減らせます。また、配送状況も顧客に一元的に案内できるため、問い合わせ対応の手間も減り、顧客満足度の向上につながります。
多店舗運営を効率化できる
複数のマーケットプレイスや自社ECサイトとも連携でき、各店舗ごとに出荷指示や同梱物ルールを自動で適用可能です。運用の一元化と効率化が進み、拡大フェーズでも対応力が上がります。
運用イメージ作りには「ネットショップの在庫管理方法│必要な理由とシステム選びのポイント」をご覧ください。
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多店舗・越境チャネルで在庫が分散し、売り越しや在庫のズレが起きる
Cloud BizApps 受発注管理
Cloud BizApps 受発注管理は、受注から在庫、出荷までの全ての進捗状況をクラウド上で一元管理できるシステムです。複数の販売チャネルを運営している場合でも、各チャネルの在庫情報をリアルタイムで同期できるため、「売り越し」や在庫ズレによる販売機会損失を大幅に防げます。また、今後越境ECのチャネルやSKUが増えた場合でも、運用基盤として安定したパフォーマンスを発揮します。例えば新規モールを追加した際にも、在庫管理のルールや業務フローを大きく変えることなく、スムーズに業務拡大できる点が特徴です。






















