
在庫管理に悩んだとき、つい「とりあえず全商品を同じように管理すればいい」と考えてしまいがち。でも本当に効率的な管理を目指すなら、売上や価値に応じてメリハリをつけるABC分析がぴったりです。この記事では、ABC分析の基本から、在庫管理現場でどう役立つか、実践的な手順や注意点まで分かりやすくまとめました。
この1ページでまず理解!「在庫管理システム」の主な機能、メリット/デメリット、選定ポイント|人気・定番・おすすめの製品をチェック
目次
ABC分析とは
在庫管理を効率化を目指す際にまず知っておきたいのが「ABC分析」という手法です。ABC分析は、売上や在庫金額などの評価軸を1つ決め、そのデータをもとに商品をA・B・Cの3グループに分けて分析する手法のことです。
例えば「年間の売上金額」を基準にした場合、商品ごとに1年間の売上を集計し、高い順に並べます。そのうえで、「Aグループは全体の70%まで」「Bグループは70〜90%」「Cグループは90%以上」のように累積構成比に沿って分けます。
このように分けることで、Aグループは特に重要な商品で管理を強化する必要があるもの。続いてBグループは標準的な管理を行うもの、Cグループは管理を簡素化しても問題ないもの、といったように重要度を分類できます。
この分類・分析を在庫管理に活用します。会社や業種によって基準を調整できるのも特徴で、どのグループにどの商品を入れるかは事業の目的や実情に合わせて最適化できます。また顧客管理や人材管理などまで応用することもできます。
ABC分析をより理解するためには、他の分析手法と比較をして把握するのが良いでしょう。他手法との比較は「在庫分析の具体的手法」をご覧ください。
パレートの法則とABC分析の関係
ABC分析の背景には「パレートの法則」と呼ばれる考え方があります。
これは「全体の成果の大部分は、ごく一部の要素によって生み出されている」という考え方です。具体的には、「売上の80%は、全商品のうち20%の品目が生み出している」といった現象を指します。
この法則を在庫管理に応用したのがABC分析です。限られた経営資源を、最も効果の高い商品に集中させる戦略を立てるための根拠となっています。Aグループは「成果を生む少数の重要品目」、BとCグループは「その他多数の商品」と位置付け、注力する対象を明確にできます。
ABC分析の目的
ABC分析を導入する目的は、単に商品を分類することではありません。その先にある「戦略的な在庫管理」と「経営効率の向上」を実現するための手段なのです。ABC分析を導入することで、具体的には以下の様なメリットが得られます。
- 商品ごとに優先順位をはっきりさせて管理業務を効率化できる
- 売れ筋商品と死に筋商品を明確に分け、それぞれの管理方針や発注量を最適化できる
- 人やコストなどのリソース配分を、Aグループのような重要な商品に集中できる
このように、会社全体の利益を最大化するための意思決定にも役立ちます。
在庫管理全般の基本とABC分析の位置づけは「在庫管理とは? 目的と考え方」をご確認ください。
ABC分析の具体的な手順
ここでは、目的の設定からデータの集め方、グループ分けや可視化まで、一連の流れを説明します。
必要なデータを集める
まず、何のために分析を行うのかをはっきりさせましょう。
例えば「売れ筋商品の欠品を減らしたい」「倉庫のコストを抑えたい」など、具体的な目標を決めます。
そのうえで、目的に応じて評価軸(売上金額、販売数量、在庫金額、利益額など)を選びます。
そして、分析対象期間(多くは過去1年など)における商品ごとのデータを、できるだけ正確かつ新しいものを収集してください。
通常は販売管理システムや在庫管理システムからデータを抽出します。
累積構成比でグループ分けを行う
集めたデータを使い、以下の流れで商品をA・B・Cの3グループに分けます。
- 評価値を選び、商品の順番を決める
(例えば年間売上金額の高い順に並べる) - 構成比を計算する
(各商品の売上金額÷全商品の売上合計金額×100) - 累積構成比を算出する
(上位から順番に構成比を足していく) - グループ分けする
累積構成比が
・Aグループ:0%〜70%
・Bグループ:70%超〜90%
・Cグループ:90%超〜100%
分類後の在庫水準設計や指標設計は「適正在庫とは? 定義から計算方法、最適化の手順まで」をご覧ください。
おすすめ!適正在庫の計算方法、最適化の手順をわかりやすく解説
パレート図の活用
計算結果をそのまま表にまとめるだけでなく、「パレート図」を作成するとより効果的です。
パレート図とは、基礎評価軸(要素と数量)を棒グラフで、累積比率を折れ線グラフで表すものです。
このグラフを見ることで、在庫管理の例では、売上の大半をどの商品が占めているのか、そして集中すべき重点要素は何かを視認・視覚化できます。A・B・Cの境界をどこで区切ればよいかも直感的に視認しやすくなることで、現場での説明や意思決定もスムーズになるでしょう。

(参考)不具合の原因を探るために用いるパレート図のサンプル
その他、在庫分析に役立つグラフの種類・活用例は「在庫分析の具体的手法と在庫分析に役立つツール」もご覧ください。
ABC分析を使うメリット
ABC分析を在庫管理に取り入れることで、単なる業務効率化だけでなく、コスト削減やリスク管理、経営判断の精度向上など、多くのメリットを得られます。
- リソース配分の最適化ができる
- 在庫コストの削減につながる
- ピッキングや棚卸作業の効率が上がる
- 欠品リスクを抑えることができる
- データに基づく戦略的な判断ができる
リソース配分の最適化ができる
ABC分析の最大の強みは、限られた経営資源(お金・スペース・人材など)を最も効果的な場所に集中できることです。
例:
- 資金:Cグループなど動きの遅い商品への過剰投資を避け、Aグループの在庫確保に資金を重点配分できる
- スペース:Aグループの商品をピッキングしやすい場所(ゴールデンゾーン)に配置することで、作業効率が上がる
- 人材:経験豊富なスタッフをAグループ商品に集中させるなど、作業配分を最適化できる
在庫コストの削減につながる
在庫は資産である一方、コストが発生します。ABC分析によって、特定の商品は在庫量を減らすことで保管コストや資本コストを圧縮をできたり、売れ残り在庫の廃棄ロス削減にもつながり、全体のコスト構造を改善することができます。
在庫の回転率もの見方は「在庫回転率を理解し、経営効率を向上させる方法」をご確認ください。
ピッキングや棚卸作業の効率が上がる
ABC分析の結果を倉庫レイアウトや作業順に反映させることで、日々のピッキング作業や棚卸作業も格段に効率化します。
例えば、以下のような方法で、現場の負担を分散しながら在庫精度を保つことができます。
- 出荷頻度の高いAグループ商品を出入口近くに配置
- 棚卸しもAグループは毎週、Bグループは毎月、Cグループは四半期ごとに分けて行う
棚卸の業務設計・製品選定は「棚卸に強い在庫管理システム5選」をご覧ください。
欠品リスクを抑えることができる
売れ筋商品の欠品は、売上の損失や顧客満足度の低下につながります。ABC分析を活用すると、Aグループ商品の在庫切れリスクを重点的に監視・防止しやすくなります。
需要予測の精度を上げたり、安全在庫を厚めに設定したりといった具体的なアクションにつなげられます。
データに基づく戦略的な判断ができる
ABC分析は、従来の勘や経験による管理からデータに基づく科学的な管理へと変化をもたらします。
「どの商品に投資し、どの商品を縮小・撤退するか」など、経営上の重要な判断にも、明確な根拠を持たせることができます。
ABC分析を現場に導入するには?
ABC分析を成功させるためには、単に分析結果を出すだけでなく、現場でどう運用するかがとても重要です。導入のコツや、具体的なプロセスを紹介します。
現場との情報共有が大事
ABC分析の成功には、現場との協力が不可欠です。
まず、分析結果をわかりやすく説明し、「なぜこの分類になるのか」「現場にどんなメリットがあるのか」を伝えましょう。
例えば、「Aグループ商品を入口近くに配置することで歩く距離が減り、作業が楽になる」など、具体的な効果を共有することが大切です。
また、分類結果はピッキングリストや棚配置にもきちんと反映させましょう。
導入後も定期的に現場スタッフの意見を聞き、改善につなげることで、PDCAサイクルを回し続けることができます。
在庫管理システムとの連携
商品数が多い場合や、データ管理の精度を高めたい場合は、在庫管理システムとの連携が有効です。
例えば、多くの在庫管理システムにはABC分析機能が標準搭載されているため、自動で分類や集計ができます。また、システムを連携することにより、最新のデータで常に分析を更新でき、管理負担が大きく軽減することができます。更に、商品のランクごとに「発注点」や「安全在庫」を自動で変えるなど自動化機能を活用することで、運用効率化につながります。
このように、システムを使うことで現場の業務効率やデータ精度が大きく向上します。
ABC分析の注意点
ABC分析はとても役立つ手法ですが、いくつか注意したいポイントもあります。
ここでは、導入時につまずきやすい/見落としがちな以下のポイントを紹介します。
- 季節商品・トレンド商品には個別対応が必要
- データの鮮度と正確性に注意
- Cグループ商品の役割も見極める
- 複数の視点で分析する工夫も大切
季節商品・トレンド商品には個別対応が必要
ABC分析は通常、年間データを使いますが、季節商品やトレンド商品の扱いには注意が必要です。
例えばクリスマス限定商品などは、1年で見るとCランクでも、特定時期だけはAランクになることもあります。
このような商品は、別途管理したり、分析期間をシーズンに絞ったりするなど、柔軟な対応が求められます。
データの鮮度と正確性に注意
ABC分析の結果は、元となるデータの鮮度や正確性に大きく左右されます。
古いデータや偏ったデータを使うと、現状に合わない分析結果になってしまう可能性があります。
そのため、定期的なデータ更新と定期的な再分析が大切です。
Cグループ商品の役割も見極める
Cグループに入った商品を「不要」と判断してしまいがちですが、実際には戦略的に必要な商品も含まれます。
- 例えば、主力商品の消耗品やアクセサリー、補修部品などはCランクでも販売継続が必要なこともあります。
- また、ネット通販などでは多種多様なCランク商品を揃える「ロングテール戦略」が有効な場合もあります。
単純に売上だけでなく、他の商品との関係や顧客満足度も考慮しましょう。
複数の視点で分析する工夫も大切
ABC分析では売上金額だけでなく、利益率や出荷頻度など別の評価軸でも分析するのがおすすめです。
例えば「クロスABC分析」なら、売上と利益の2軸で分析し、より実態に合った分類が可能です。
| 売上A(高) | 売上B(中) | 売上C(低) | |
| 利益A(高) | AA: 最重要商品 | BA: 優良商品 | CA: 隠れた優良商品 |
| 利益B(中) | AB: 主力商品 | BB: 標準商品 | CB: ニッチ商品 |
| 利益C(低) | AC: 課題商品 | BC: 課題商品 | CC: 撤退候補 |
このように複数の視点を取り入れることで、より深く、戦略的な在庫管理が実現できます。
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在庫の分析を強化する在庫管理システム10選【小売・EC・製造向け】
ABC分析を本格的に運用したい場合や、商品数が多い場合は、在庫管理システムの活用がとても便利です。
ここでは、現場運用に落とし込みやすい可視化・連携性や、ABC分析・自動補充などの機能に注目し、10製品を紹介します。(製品名 abcあいうえお順/2025年11月時点)
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