
「ローコード開発」の市場が大きく拡大しています。特にIT人材不足やDX推進の課題を抱える企業で高い注目が集まっています。それはなぜなのでしょうか? 何に効果・成果があるのでしょうか?
本記事では、ローコード開発の現状や今後の展望、導入メリットと気をつけるべきポイントまでをやさしく解説。自社の業務効率化やシステム内製化を目指す担当者にも役立つ、導入成功のコツや新しいITスキルの考え方もご紹介します。
この1ページでまず理解!ローコード開発・ノーコード開発ツールの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイント|人気・定番・おすすめの製品をチェック
目次
ローコード開発の市場が拡大している理由
ローコード開発は今やIT業界の中だけでなく、さまざまな業種の企業で導入が進んでいます。なぜローコード開発がここまで注目されているのでしょうか。その背景には大きく3つの理由が存在します。
国内外で市場拡大が進む
ここ数年、ローコード開発市場は世界中で急速に拡大しています。
日本国内のローコード/ノーコード開発市場は2023年時点で812億円に達しており、今後さらに拡大が見込まれています。2028年にはCAGR(年平均成長率)は2023年の1.8倍規模まで成長すると予測されています。
この成長の背景には、MicrosoftやSalesforceなど大手IT企業の本格参入も大きな影響を与えています。
従来は先進企業やITベンチャー中心だったローコード開発も、今では業種や企業規模を問わず多くの現場で使われるようになりました。
参考:Precedence Research「Low-Code Development Platform Market Revenue | CAGR of 22.92%(2024年10月)
DX推進や人材不足が導入のきっかけに
企業がローコード開発を導入する最大の理由は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れと、深刻なIT人材不足の2点です。
- 競争力強化や業務効率化のためにデジタル化を進めたい
- しかしITエンジニアがなかなか確保できない
- システム開発を外部に依頼するとコストも時間もかかる
- 現場の担当者が自分たちで簡単にアプリを作りたい
こうした背景から、現場主導で業務改善や内製化を進めるために、ローコード開発を活用する企業が増えています。
特に、専門的なプログラミングが不要で短期間にシステム構築ができることは、現場からの支持を集める大きな理由です。
ノーコード/ローコードの基本と活用領域を俯瞰したい方は「ノーコードツールとは?」をご確認ください。
業務効率化・コスト意識の高まり
経営層や現場リーダーがローコード導入を決めるきっかけは、業務の見直しや効率化・コスト削減へのニーズが高まっているためです。
- いまだにExcelや紙書類で手作業が多い
- 情報共有やデータ管理が非効率
- システム導入コストや人件費を抑えたい
ローコード開発なら、こうした問題を短期間・低コストで解決できます。
しかも小さな業務改善から始めて効果を確かめられるので、無駄な投資リスクを避けながらIT活用を進めやすくなっています。
具体的なDXの進め方は「成果を上げるバックオフィスDXの実践方法」をご覧ください。
ローコード開発のメリット
ローコード開発は「開発期間の短縮」「コスト削減」「現場主導の改善」といった多くのメリットがあります。
ここでは、実際に導入した企業が実感している主な利点を整理します。
短期間で開発できる
ローコード開発では、画面設計や業務フローをドラッグ&ドロップ操作で作成できるため、従来のように何ヶ月もかけることなく、数週間、場合によっては数日でアプリやシステムを完成させられます。
このスピード感が、変化が激しい現代のビジネスに大きな武器となっています。
コストを抑えて導入できる
- 社内スタッフが自分たちで開発・運用できる
- 外注費や追加の人件費を大幅に削減できる
- 小さなプロジェクトから段階的に始められる
多くのローコードツールはクラウド型(月額課金)で使えるため、大きな初期投資が不要です。
コスト面でのハードルが下がり、業務効率化やIT投資のROI(費用対効果)も高めやすくなります。
現場主導で改善できる
従来のシステム開発では、現場の「こうしたい」が正確に反映されないことが多くありました。
ローコードなら、業務を一番よく知る担当者自身がアプリやシステムを作り、気づいた点をすぐ修正・改善できます。
- 「この手順を一つ追加したい」
- 「入力画面をもっと使いやすくしたい」
- 「試作を何度でもやり直したい」
こうした要望にもすぐ対応でき、現場で生まれたアイデアをそのまま形にしやすいのが特徴です。
アップデートや運用も柔軟
- 法改正や業務変更にもスピーディーに対応できる
- ビジュアル設計なので追加・修正が簡単
- 担当者が変わっても引き継ぎやすい
変化が激しい時代に合わせて、運用後の修正・アップデートが柔軟にできるのは大きな安心材料です。
AIや他システムとの連携も進化
- APIを使って既存システムやクラウドサービスとデータ連携しやすい
- AIやRPAなど、業務自動化との組み合わせも簡単
- 外部ツールと連携した“業務全体の自動化”も実現可能
例えば、AIで分析したデータを自動でダッシュボード化する、RPAで集めたデータをアプリで活用する、といった使い方も一般的になっています。
AIとRPAの使い分けは「RPAとAIの違いとは?」をご覧ください。
ノーコード開発との違いが明確
- ノーコード開発:プログラミング不要、誰でも簡単に使える
- ローコード開発:ビジュアル操作+一部コード記述も可能で、より高度なカスタマイズや拡張ができる
用途や開発チームのスキルによって、どちらを選ぶかを判断することがポイントです。
ローコード開発の注意点と課題
メリットの多いローコード開発ですが、いくつか注意しておきたい課題やリスクも存在します。
カスタマイズ性や拡張性に制約がある
ローコード開発は「用意された範囲」で柔軟に使える一方、複雑な業務や独自仕様が多いシステムでは、テンプレートや標準機能では対応できない場合があります。
その場合、追加開発や別途ツールの導入が必要になることもあります。
プラットフォーム依存リスクに注意
- 特定ベンダーに依存するリスク(ベンダーロックイン)がある
- サービス終了や大幅な仕様変更が起きる場合も想定される
- データの移行やAPI連携機能を事前に確認しておく必要がある
導入前にベンダーの信頼性や、将来的な切り替えのしやすさもチェックしておくことが大切です。
一定のIT知識や体制整備が必要
「IT知識ゼロで使える」といわれますが、実際にはデータベースや業務プロセスの理解、設計スキルなど、最低限の知識は必要です。
- 全社員が無計画にツールを使うと品質や管理が乱立しやすい
- IT部門によるガイドライン作成や利用ルールの整備が重要
- 利用者向けの教育やサポート体制も不可欠
セキュリティ・ガバナンスの課題
- IT部門管理外のアプリ(シャドーIT)が増えると情報漏洩リスクも高まる
- 社内公式のローコードツール導入・セキュリティチェック体制づくりが必要
- ガバナンス(ルールや運用体制)の強化が成功のカギ
低コード開発にひそむセキュリティ課題は「ローコード開発とセキュリティの基本を押さえよう」をご覧ください。
エンジニアや現場担当者に求められる新しいスキル
ローコード開発の普及は、エンジニアや現場の担当者にも新しい役割やスキルが求められる時代をもたらしました。単なるITスキルだけでなく、ビジネスや業務に対する理解力が重要になります。
ビジネス要件の理解と設計力が重要に
プログラミングの技術よりも、どんな業務課題をどう解決するか。つまり「What」「Why」を明確にすることがより求められるようになります。業務フローを整理し、現場の課題を把握し、システム要件やUI(ユーザーインタフェース)設計に反映できる人材が重宝されています。
ツールの選定・活用力が問われる
ローコード開発ツールは種類が多く、それぞれに特徴があります。自社の業務や課題に合ったツール選びや、APIや外部サービスとの連携機能、サポート体制なども選定基準となります。導入後は、ツールの機能を最大限に引き出し、ベストプラクティスを学びながら運用していく力も必要です。
社内教育やフォローの役割
現場の担当者が安心してローコード開発を進められるよう、IT部門や先進ユーザーは「教育者」としての役割も担うようになります。説明会やマニュアル作成、相談窓口の設置、社内の勉強会など、継続的なフォローアップ体制が重要です。こうした活動が、全社的なスキル向上や改善文化の醸成につながっていきます。
ローコード開発の導入を成功させるポイント
ローコード開発の導入を本当の意味で成功させるためには、明確な戦略と段階的な進め方が欠かせません。ここでは導入時に押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。
- 現状課題と目的を明確化
- ツール比較・PoCで適合性を検証
- 研修・ガイドライン・運用ルールを整備
- スモールスタート → 成果共有 → 全社展開
現状課題と目的を明確にする
最初にやるべきことは「なぜローコードを導入するのか」をはっきりさせることです。業務プロセスのどこに課題があるのか、何を目標に改善したいのかを具体的に設定しましょう。例えば「報告書作成の時間短縮」や「紙の申請書の電子化」など、誰もが実感しやすいテーマからスタートするのが効果的です。
ツールの比較・選定をしっかり行う
課題や目的が明確になったら、それに合ったツールを比較・検討します。必要な機能が揃っているか、既存システムとの連携が可能か、サポート体制は十分かなど、複数の観点でチェックしましょう。無料トライアルやPoC(概念実証)を実施して、使い勝手を事前に確認するのも有効です。
社内教育や運用体制の整備
優れたツールがあっても、使いこなせる人材がいなければ意味がありません。実務担当者向けの研修やガイドライン作成、運用ルールの策定も重要です。また、IT部門と現場が密に連携し、定期的なフォローや相談体制を整備することも、運用定着のカギとなります。
段階的な導入とスモールスタート
最初から全社規模で始めるのではなく、小規模な業務改善から導入し、実際に成果を積み上げていくのが成功の近道です。パイロットプロジェクトで成功事例を作り、それを社内で共有することで、他部署への展開もスムーズに進みます。一歩一歩着実に範囲を広げていくことが、ローコード開発を企業文化として根付かせるポイントです。
ローコード開発を強化するシステム9選【ペルソナ別】
ローコード開発を導入・活用する際は、自社の業務課題や運用体制に合ったツールを選ぶことが大切です。ここでは、現場の立場やニーズごとにおすすめできる9つの代表的なシステムを、特徴とともに紹介します。各ツールのメリットや活用ポイントが比較できるように整理しました。(製品名 abcあいうえお順/2025年11月時点)
情シス・開発リーダー(内製スピードと拡張性を両立したい)
情シスや開発リーダーが重要視するのは、開発スピードと将来的な拡張性、そして既存IT資産との連携です。ここでは、PoCから本番移行、長期運用まで見据えたシステムを2つご紹介します。
FASTREAM(ファストリーム)
FASTREAMは、要件定義から画面やデータベース設計、コード生成までを一貫して支援できるプラットフォームです。生成AIやテンプレートの活用によって、開発工程の上流から下流まで工数を圧縮できるため、少人数でもスピーディーな開発が実現します。さらに、既存資産や自社の運用ルールに合わせた拡張性もあり、大規模化にも柔軟に対応できるのが特徴です。





















