
多くの企業で導入されているグループウェア。よく使われる機能の1つに「ワークフロー」がありますが、「承認ルート(経路)が複雑で設定できない」「外部システムと連携できず、二重の手間が発生する」といった不満の声も少なくありません。かといって専用のワークフローシステムを導入すると管理が煩雑になるのでは、と悩む担当者の方も多いでしょう。
本記事では、グループウェアとワークフローシステムの基本的な違いから、両者のメリットを最大化するための4つの導入パターン、そして失敗しない製品選定のポイントとおすすめ製品までを網羅的に解説します。あなたの会社にとって最適なワークフロー環境へ再編・構築するヒントになれば幸いです。
機能で比較「ワークフローシステム」おすすめ製品一覧
目次
その不満、見過ごし厳禁 グループウェア付属ワークフローの限界とは
情報共有やスケジュール管理、タスク管理に欠かせないグループウェアは、多くの企業で業務の基盤として活用されています。掲示板やファイル共有と並び、その多くに標準機能として搭載されているのが「ワークフロー機能」です。簡単な申請や稟議であればこの付属機能で十分かもしれません。しかし企業の成長や業務の複雑化に伴い、次第にその限界が見えてくるケースも非常に多いようです。
具体的には以下のような課題や不満が聞かれます。自社の状況と照らし合わせてみてください。
- 複雑な承認ルートに対応できない
- 入力・申請フォームのカスタマイズ性が低い
- 外部システムとの連携が困難
- 法改正や組織変更への追随が難しい
課題1:複雑な承認ルートに対応できない
企業の規模が大きくなるにつれて承認経路は単純な直線型ではなくなります。例えば、「稟議申請金額が100万円以上の場合のみ、役員の承認を追加する」「特定の品目を購入する場合は、購買部門を経由させる」といった条件分岐や、「複数の部門長全員の承認が必要」といった並列承認などです。
グループウェア付属の機能はこうした複雑なフローまでを想定して作られていないこと、あるいは別の有料オプションが必要になるといったことが意外にあります。
結果としてシステムでの処理を諦め、昔ながらの紙やメールを使った非効率な運用に戻ってしまうこともあるでしょう。……全てではないにせよ、フローの一部にアナログな例外があるだけでも非効率で、申請者も承認者も管理側も「面倒くさい」」「分かりにくい」「もう使いたくない」となってしまいます。
課題2:入力フォームのカスタマイズ性が低い
ワークフローの申請書は、その目的に応じて最適化された入力フォームがあってこそ真価を発揮します。経費精算であれば勘定科目や税区分、出張申請であれば訪問先や期間など、必須となる項目は様々です。
しかし付属のワークフロー機能では用意されたテンプレートしか使えなかったり、項目の追加や画面レイアウトの変更にもどかしい制限があったりします。自社に必要な情報を効率的に収集できず、また申請者・承認者にとっても操作しにくいものになってしまっています。
課題3:外部システムとの連携が困難
ワークフローは多くの場合、それ単体で完了する業務ではありません。例えば、経費精算申請ならば最終的に給与や会計システムへデータを連携させる必要があります。
ところがグループウェア付属の機能は、同一ベンダーの製品以外との連携を想定していないことが多くあります。そのため承認されたデータを担当者が手作業でExcelなどに転記し、別のシステムに再入力するといった二重の手間が発生します。
まず手作業が発生することで人的リソースが発生し、またミスを誘発します。CSVエクスポートなどの機能がなければ作業はさらに煩雑になります。電子化の恩恵を十分に受けられません。
課題4:法改正や組織変更への追随が難しい
電子帳簿保存法のように業務プロセスに関わる法改正は今後も想定されます。こうした法改正への対応のほかに、毎年・毎期に行われる組織変更、人事異動に伴う承認経路の見直しにシステムが迅速かつ柔軟に対応できるか、は非常に重要なポイントです。
付属機能の場合はこうした制度変更への対応が遅れたり、そもそも対応できなかったりするリスクがあります。結果としてシステムの担当者が手動で膨大な設定変更に追われることになってしまいます。
この1ページで解決!ワークフローシステムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントを徹底解説
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自社に合うのはどれ? ワークフロー環境を最適化する4つの導入パターン
グループウェアのワークフロー機能に限界を感じたとき、解決策は単純に「専用システムを導入する」だけではありません。企業の現在の状況やIT資産、目指すべきゴールによって、とるべき選択肢は異なります。
ここでは、ワークフロー環境を最適化するための代表的な4つの導入パターンを解説します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に最適なモデルを探ってみましょう。
- パターン1:高機能なワークフローを持つグループウェアへリプレイスする
- パターン2:既存グループウェアにワークフロー機能をアドオンする
- パターン3:専用ワークフローシステムを導入し、グループウェアと連携する
- パターン4:ワークフローシステムを主軸に、周辺機能を連携させる
パターン1:高機能なワークフローを持つグループウェアへリプレイスする
メリット
IDやパスワード、操作画面が一つに統一されるため、ユーザーの混乱が少なく、管理者側の運用負荷も削減できます。製品内でデータが完了するため、連携の手間やコストを考える必要がありません。情報共有基盤と申請・承認基盤が一体化しているため、シームレスな業務フローを構築しやすいのが特徴です。
デメリット
ワークフロー以外の機能(メール、スケジュール、ファイル共有など)もすべて変更になるため、導入時の影響範囲が大きくなります。既存のデータ移行やユーザーへの再教育に相応のコストと時間が必要です。多機能な分、月額の料金が高くなる傾向があります。
パターン2:既存グループウェアにワークフロー機能をアドオンする
メリット
使い慣れたグループウェアの操作感を維持したまま、ワークフロー機能だけを強化できます。リプレイスに比べて導入コストや期間を抑えられる可能性があります。既存のユーザー情報や組織情報をそのまま活用できるため、導入がスムーズです。
デメリット
アドオンできる製品は、利用中のグループウェアに対応しているものに限られるため、選択肢が狭まります。グループウェア本体のバージョンアップなどに、アドオン製品が追随できないリスクも考慮する必要があります。
パターン3:専用ワークフローシステムを導入し、グループウェアと連携する
メリット
ワークフローシステムの選択肢が非常に豊富で、自社の複雑な要件に完全に対応できる製品を見つけやすいのが最大の魅力です。専門性が高い分、法改正への対応や高度な機能(各種外部サービスとの連携など)が充実しています。グループウェアとワークフロー、それぞれで自社にとって最適な製品を選択できるため、将来的な拡張性やリプレイス性にも優れるといえます。
デメリット
複数のシステム/製品を契約・管理する必要があるため、コストや運用負荷が増加する可能性があります。システム間のデータ連携には、APIの知識や追加のオプション費用が必要になるケースがあります。
パターン4:ワークフローシステムを主軸に、周辺機能を連携させる
メリット
業務プロセスを軸にシステムを構築するため、効率的で無駄のないIT環境を実現できます。各分野で最も優れたツール(ベストオブブリード)を組み合わせて利用できたり、自社・部門・チームの各単位で最も向くと判断できる各分野の製品を適宜選べたりするため、ユーザーの満足度や効果を高まめられる可能性が大きいです。
デメリット
連携させるシステムの数が多くなると管理が複雑化し、かえって運用コストやリスクが増大する可能性があります。全体を設計する高度なIT知識が求められます。
業務はこう変わる! 専用ワークフローシステム導入がもたらす6つのメリット
メリット1:意思決定のスピードを劇的に向上できる
申請から決裁までのリードタイム短縮は、ワークフローシステム導入の最も分かりやすい効果の1つです。クラウド/SaaS型システムであれば特に、スマートフォン(スマホ)やタブレットからの承認も利用可能になるため、承認者が外出中や出張中でも業務が停滞しません。誰の元で申請が止まっているかがリアルタイムで分かるため、滞留の原因特定や通知も容易です。
メリット2:内部統制とコンプライアンスを強化できる
いつ、誰が、何を申請し、どのような経路で、誰がいつ承認したのか。こうした一連の証跡(ログ)がシステム上に正確に記録されることは、内部統制の観点で極めて重要です。権限のない人物による不正な承認を防ぎ、定められた業務プロセスを順守させる「業務の標準化」を実現します。
メリット3:ペーパーレス化でコスト削減とエコを実現できる
稟議書や申請書を紙で運用している場合、用紙代、印刷代、ファイル代、保管スペースなど、様々なコストが発生しています。ワークフローシステムを導入すれば、これらのコストと手間を根本から削減できます。
メリット4:多様な働き方を推進・実現できる
承認業務のため“だけ”に出社を要する状況は「承認遅延」の障壁となります。申請から承認までを電子化することでも、働く場所を限定しない柔軟なワークスタイルを従業員へ提供しやすくなります。社外からでもチャットなどでコミュニケーションをとりながら決裁が完了できるため、ビジネスの停滞を防ぐことも大きなメリットです。
メリット5:業務プロセスの可視化と改善を実現する
ワークフローシステムに蓄積されるのは「データ」です。このデータを分析することで、紙時代ではなかなかできなかった「どの業務に時間がかかっているか」「どこで差し戻しが多発しているか」「内外の不正やエラー」といったボトルネックやリスクをデータに基づいて特定するといったプロセスとも連携できます。業務プロセスの継続的な改善につなげられます。
メリット6:ヒューマンエラーの発生を防止できる
入力フォームに必須項目を設定したり、数値の自動計算を組み込んだりする機能とともに、記入ミスや計算間違いといった手作業に由来するエラーを未然に防ぎます。承認ルートもシステムが自動で判別するよう設定できることで、「承認者が漏れていた」といった重大なミスも限りなく起こりにくくなります。
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導入後に後悔しない/失敗しないワークフローシステムの選定と比較ポイント
自社に最適なワークフローシステムの選び方は、機能の多さや料金の安さだけで判断してはいけません。特にグループウェアとの共存を考えるなら、独自の視点が必要です。ここでは、導入後に後悔しないための、5つの重要な選定・比較ポイントを徹底解説します。
- 「自社」の業務要件に対応できる機能があるか
- 既存グループウェアとの連携実績・方法は豊富か
- 組織変更や業務フロー変更に柔軟に対応できるか
- ITに不慣れな人でも直感的に使える操作性か
- 費用対効果(ROI)は妥当か
比較ポイント1:自社の業務要件に過不足なく対応できる機能があるか
まず、自社で最も課題となっている複雑な承認経路や業務フローを改めてまリストアップし、それが検討中のシステムで実現できるかどうかを確認します。製品デモや無料トライアルがあれば遠慮なく活用し、承認フローの柔軟性、フォーム作成の自由度(カスタマイズ性)、モバイル対応(スマホ・タブレットでの操作性)などを具体的に検証しましょう。
比較ポイント2:既存グループウェアとの連携実績・方法は豊富か
上記の「パターン3」である場合はもちろん、他のパターンでも将来的な連携の可能性は考慮すべきです。グループウェアとの連携性は、製品選定における極めて重視すべき指標です。APIの提供、連携実績(Microsoft 365やGoogle Workspaceなど、既存のOffice製品との連携性もポイントです)、シングルサインオン(SSO)対応などを確認しましょう。
比較ポイント3:組織変更や業務フロー変更に柔軟に対応できるか
毎年の組織変更や人事異動の際に、承認ルートの変更やユーザー情報の更新が、専門知識のない担当者でも直感的に行えるかは、長期的な運用コストに直結します。未来の日付で変更を予約できる機能なども便利です。
比較ポイント4:ITに不慣れな人でも直感的に使える操作性か
どんなに高機能でも、社員に使われなければ意味がありません。全従業員が使う可能性があるツールだからこそ、マニュアル不要で直感的に操作できることが定着の鍵となります。無料トライアルなどを活用し、複数の部門のユーザーに実際に触ってもらいましょう。
比較ポイント5:費用対効果(ROI)は妥当か
料金体系は、主に初期費用と月額のユーザー単位課金で構成されるプランが基本です。オプション料金の有無なども含めて総コストを把握し、導入によって削減できる人件費やコストを試算して、投資対効果を明らかにすることが決裁を得る上で重要です。
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グループウェア連携にも強いおすすめの専用ワークフローシステム5選
前章までの選定ポイントを踏まえ、特に「グループウェアとの連携性」や「柔軟性」に優れた、おすすめのワークフローシステムを厳選しピックアップしました。あなたの会社の課題と照らし合わせながら比較検討の参考にしてください。資料請求や無料トライアルも積極的に活用することもおすすめします。
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