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50インチが20万円以下――Intel、リアプロTV向けLCOSを披露

» 2004年02月21日 00時45分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 今年1月に行われたInternational CES 2004。その中でも注目されたニュースのひとつに、Intelの家電業界進出があった(別記事を参照)。

 Intelは反射型液晶パネルの一種であるLCOS(Liquid Crystal on Silicon)専用の製造ラインを作り、中国の家電ベンダーや米国のプロジェクタベンダーと協力。これにより、低価格かつ高画質のリアプロジェクションTV(リアプロ)の製造が可能になった。価格ターゲットは、50インチクラスで2000ドルを大きく下回るという。米サンフランシスコで開催されたIntel Developers Forum Spring 2003(IDF Spring 2003)会場に展示されていた試作機を見ながら、担当者に話を聞いてみた。

 まず現在の開発ステータスだが、試作チップが登場したばかりで、実際にデモを行えるリアプロとしての完成品は1台しか存在しない段階だという。また、コントラスト/解像度ともに目標値に達しておらず、「画質はまだまだこれから向上する段階」(Intel担当者)とのことだ。

photo LCOSの試作チップ

 試作されているLCOSチップは720P(1280×720ピクセル)で、コントラスト比は800:1。サイズは0.7インチだ。方式による描写の違いなどはあるものの、スペック上は、実売20〜15万円の液晶プロジェクタに使われているエプソン製の高温ポリシリコン液晶パネルと同じである。解像度はフルHDフォーマット(1080P)、コントラスト比は1000:1が最終製品のターゲットだ。

 「2004年後半に出荷されるチップでは、コントラスト比1000:1以上にはなる」と担当者は話したが、解像度は720Pに留まるようだ。フルHDのチップは来年の登場を待つ必要がある。とはいえ、品質には自身があると担当者は話す。

 「LCOSは高温ポリシリコン液晶と異なり、駆動トランジスタが反射面の背面に配置されるため、開口率に相当する数値はかなり高くなる。TVとして使う場合に、明るさの面で有利だ。また同じ明るさならば、より広い色再現域を実現できる。ピクセル間のつながりもなめらかで、同じ解像度ならば高温ポリシリコン液晶よりも粒状性は優れている」(担当者)

 会場に展示されていた試作機は、上下方向に明らかな色ズレが発生していたが、確かにピクセル間のつながりはなめらかで、明るい場所に置かれているにもかかわらず、ハッキリと映像を視認できる明るさもある。シャドウ部の描写などはチェックできなかったが、“パッと見”のコントラスト感は、同じ800:1の高温ポリシリコン液晶を用いた製品よりも高く感じた。

photo 会場に展示されていた試作機

 IntelはこのLCOSチップを、映像素子としての性能向上に力を入れるだけでなく、様々な周辺チップを集積・統合する。それにより、トータル製品としての価格を下げることができるわけだ。

 ただし、「PCと同じようにリアプロを作るための構成要素を標準化して安価に提供し、どのメーカーでも性能が変わらない、同じように安い製品を提供する市場を作ろうとしているのか?」との質問には「ノー」との答え。PCと同じ市場構造を作ろうとしているわけでもないようだ。

 「PCと家電の市場は異なる。TV市場において、我々は映像素子や周辺チップを提供する半導体ベンダー。最終製品をどのようなものにするのか、その味付けはIntelの仕事ではない」

photo 試作した光学ユニット。インテルはチップのみを販売する構えのようだ

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