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“人”を中心に家電を連携させる技術〜NTTが開発

» 2004年03月08日 23時49分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 日本電信電話(NTT)は3月8日、家の中にあるさまざまな情報家電を“利用者の立場”で制御できるホームネットワーク技術「ホームサービスハーモニー」を発表した。この技術は、NTTアクセスソリューション研究所が開発したもの。たとえば音楽を聴いているときに電話が着信したら、自動的にオーディオのボリュームが下がるというように、機器同士のインテリジェントな連携が可能になるという。

photo デモシステム。手前の白い箱がサービスゲートウェイの試作機だ。ゲートウェイは基本的にソフトウェアのため、ルータやSTBなどのハードウェアに組み込むことができる

 ホームサービスハーモニーは、「サービスゲートウェイ」と呼ばれるインテリジェントなゲートウェイを置き、家の中にある情報機器を統括させる技術だ。ゲートウェイは、ネットワークを通じて、各機器の状態や現在利用しているサービスの状況を常に監視しており、新しいイベントが発生したときには、利用者の居場所や嗜好、天気や時刻など多岐に渡る情報からサービスの優先度を推定、各機器に最適なコマンドを送信する。ユーザーの居場所は、RFIDの無線ICタグ(アクティブタグ)を持ち歩くことで特定する仕組みだ。

 また、サービスゲートウェイが機器の動作を制御するため、機器側に特別なハードウェアが必要ない点もメリット。現在のところ、UPnP、エコーネット、IEEE1394などのサポートを予定しており、これらのプロトコルに対応した機器は、そのまま利用できるという。

photo 離れた場所に住む男女が、デート時に撮影した映像を共有しながらIP電話で話すというデモ。このときゲートウェイは、男性宅から送られてくる映像を“女性のいる部屋”のテレビに配信している

 ユニークなのは、ユーザー(居住者)の居場所のみならず、「見る」「聞く」「話す」といった能力をパラメーター化し、リソースとして扱っている点だ。冒頭の例なら、音楽と電話という2つのサービスに対して、「聞く」ユーザーが一人だったため、ゲートウェイは電話を優先してオーディオのボリュームを下げた。また、それぞれの動作は事前に設定しておくことが可能で、たとえば「番号非通知の場合は留守番電話に録音」「電話番号を登録してある人からの電話には出る」といった条件を決めておけば、非通知の電話に音楽鑑賞を邪魔される心配がなくなる。

photo 「見る」「聞く」「話す」といったユーザー(居住者)の能力をパラメーター化し、サービスの管理に利用する

 新しいサービスや機器を購入したときは、該当するプログラムモジュールをダウンロードするだけでサービスゲートウェイに機能を追加できる。このプログラムは、OSGi(Open Services Gateway Initiative) Service Platform仕様に準拠した形で作られているため、メーカーやサービス事業者を問わずに利用可能になる予定だ。

photo サービスゲートウェイの構成図。OSGi Service Platformを利用してプログラムを追加できる

 NTTサイバーソリューション研究所では、「ホームネットワークは、複数の利用者が同時に使用するものであり、さまざまな資源(リソース)の競合が発生する。利用者が一人の場合でも、複数のサービスを使っていれば、知らないうちに資源の競合を引き起こし、サービスの品質低下や、場合によってはサービスそのものの提供ができなくなる場合がある」と指摘。「どのサービスが、どのリソースをどれだけ使用して良いかをリアルタイムに把握することで、リソースの競合を未然に防ぐことを可能になる」(同社)とホームサービスハーモニーの有用性を強調した。

 NTTでは、1〜2年後の商用化を目指し、この技術を使ったサービスや製品の提供方法を検討している。たとえば「Bフレッツ」ユーザー向けにサービスゲートウェイ機能付きのルータやSTBを貸し出す可能性もあるという。

 当面はビジネスモデルを検討しながら、「ホームサービスハーモニー」の適応領域とサポートできるプロトコルを拡大していく方針。また同時に、OSGiなどを通じて同技術の標準化とオープン化を進めるという。

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