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「ネットコミュニティ」が果たす役割

» 2004年04月01日 22時22分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 電子掲示板(BBS)/メーリングリスト/チャット/インスタントメッセンジャー(IM)/ウェブログ(Blog)といったツールを使い、インターネット上に自発的に集まった参加者同士が相互交流を行う「ネットコミュニティ」が盛んだ。

 このほど開催されたネットコミュニティビジネスコンソーシアム(NCBC)のセミナーで、東京大学大学院人文社会系研究科の小笠原盛浩氏がネットコミュニティの果たす役割について語った。

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 ネットコミュニティを利用するユーザー像について、小笠原氏はこう述べる。

 「インターネットユーザーの25.7%がなんらかのネットコミュニティを利用している。10〜20代の若いユーザーが多く、40代以上は比較的少ない。性別・学歴・職業による優位差はみられない。ネットコミュニティ参加者のウェブアクセス時間は週に454.9分と、非参加者(170分/週)に比べて圧倒的に長い。インターネットスキルが高いのも特徴」

 このデータだけみると、ネットコミュニティの参加者はPCへビーユーザーで人との交流を嫌がる“おたく”なのではないかという見方も出てくる。だが小笠原氏は、参加者/非参加者での友人数の違いを例に「ネットコミュニティ=おたく」説を一蹴する。

 「ネットコミュニティ利用者の方が、非利用者に比べて約6人も友人が多いという調査結果がある。ちなみに、インターネットを使わないユーザーの友人数は、非利用者からさらに約2人ほど少なかった。ネットコミュニティ参加者は実社会でも“アクティブ”ということ」

photo 友人数の比較。ネットコミュニティ参加者は友人も多い

 掲示板などでは、各種製品/サービスが話題の中心になることが多い。ネットコミュニティと相性のいい製品やサービスはどんなものだろうか。

 「情報やり取りの動機づけが高い製品/サービスは、ネットコミュニティとの相性もいい。例えば、化粧品のように“どう美しくなったか”といった効果(結果)へのコミットメントが高い製品、住宅のように高額な商品などだ。また、評価が難しい/情報希少性が高い/使いこなしにスキルが必要といった既存チャンネルでは情報入手が困難なケースなどとも相性がいい」(小笠原氏)

 このようなネットコミュニティ上でのユーザーの生の声――“クチコミ”が市場に与える影響力は大きい。

 「ネットコミュニティ参加者の9割が、“クチコミが製品の購入使用に役立つ”と考えている。そして、クチコミ内容のトップは新製品や話題商品の情報で、もっとも信用されるのは商品の利用経験者からのクチコミ。主に、流行情報のチェックにクチコミが使われている」

 小笠原氏は、化粧品専門のクチコミコミュニティサイト「@cosme」の事例で、クチコミ情報投稿者の93.5%がネットコミュニティ以外の平均3.32人にその情報を“クチコミ”し、その投稿を読んだユーザー側も74.1%が平均2.95人の知人(ネットコミュニティ外)に投稿内容をクチコミしているという調査データを紹介し、“ネットクチコミ”の伝播力の強さを述べる。

 「従来、企業と消費者の関係は、集団・組織(企業)vs個人(消費者)という図式で、消費者の立場は弱いものであった。だが、ネットコミュニティの発達によって、集団・組織(企業)vs集団・組織(消費者)へと変化している」

企業をも動かすネットコミュニティ先進国“韓国”

 ネット先進国の韓国では、BBS閲覧76.4%、BBS書き込み41.9%、チャット36.2%、IM32.7%と、ネットコミュニティへの参加率は極めて高い。

 韓国の全人口4700万人中、2000万人が参加する韓国最大級のポータルサイト「Daum」。このネットコミュニティが企業に与える影響力は非常に大きく、Daumが企業に依頼してオリジナル商品を作ってもらったり、企業がDaum専用のプロモーションを展開するといったことが日常茶飯事になっているという。

 このような動きは、まだ日本では少ない。その理由について小笠原氏は、「日本ではインターネットに対する“不信感”が高さがネックとなっている」と分析する。

 各国のインターネット信頼度調査をみると、韓国では半数以上(57.1%)が「インターネットは信頼できる」と答えているのに対して日本ではわずか18.7%しかいなく、逆に「信頼できない」と答えたユーザーが27.8%(韓国では10.4%)もいるという結果になっている。

photo 各国のインターネット信頼度

 「このような調査結果になった理由の詳細は分からないが、いいたいことはバンバン言って議論する韓国人と、いいたいことをハッキリ言わず表に出さない内向的な日本人という性格の違いもあるだろう。インターネットの暗部ばかりフォーカスする最近の日本メディアにも責任の一端があるかも知れない」

 「誰もが自由に書き込みができてコーディネーターがいない(2ちゃんねるのような)ネットコミュニティより、しっかりと調停役がいる方がユーザーも投稿しやすい。“自己責任”の敷居が高いネットコミュニティだけでなく、このような“安心できる場所”も必要」

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