ビデオカメラというのは、既に一般家電として認知されているが、同時に季節商品でもある。多くのカメラメーカーは、入学シーズンである今頃と、運動会シーズンの秋に新モデルを投入してくる。このことは、「親が子供を撮る」という限られたシチュエーションに縛られた形でビデオカメラというものが存在することを表わしている。
春モデル、秋モデルと力の入れ具合は各メーカーで微妙に異なるが、どちらかと言えば春がエントリーモデル、秋がハイエンドモデル、という流れができつつある。子供を撮るということに関していえば、この流れは妥当だ。
子供が幼稚園か保育園に入園するタイミングでビデオカメラを購入するタイプの人は、ほとんどの場合、初めての購入だろう。普通、初めてチャレンジする分野で、いきなり最高級品を買う人は少ない。リーズナブルな価格のモデルに人気が集まるのも当然だ。
一方、運動会のタイミングで購入する人は、既に数年前の入学式シーズンにビデオカメラを購入しており、買い換えの需要であることが多い。ビデオカメラの買い換えでは、前モデルよりもレベルの高いものを求める傾向がある。それは以前のモデルで、何かしらの不満点を持っているからだ。例えばズーム倍率が低いとか、重いとか、バッテリーが保たないとかといったところだ。
画質が悪いから買い換える、というタイプの人が撮影するのは、子供だけではないだろう。あるいは子供が生まれてすぐ購入するタイプの人は、元々こういう機械モノが好きな人である。子供というのは年中無休で生まれるものなので、こういう人に対する需要は、季節的なタイミングに左右されにくい。
ビデオカメラに求められる機能は、子供がいない人にはなかなか理解されないだろう。今回は筆者の経験を絡めつつ、子供撮り用のビデオカメラに求められるスペックとは何かを割り出してみたい。
まだ子供が幼稚園などに上がる前、ビデオカメラに必要なスペックは、ワイド端の広さである。近年のビデオカメラは、本体の小型化、CCDの小型化、ズーム倍率競争などの要因が重なって、だんだん画角が狭くなる傾向にあった。昨年一昨年あたりがこの傾向のピークだったろう。35ミリ換算でワイド端が50ミリオーバーなんてレンズがざらにあったものだ。
昔からカメラをいじっていた人には、なんじゃそらという狭さである。人間の目はだいたい35ミリ換算で40ミリ前後と言われていることから考えると、目で見た感じよりも狭い範囲でしか撮影できない。
子供が幼年期のときは、親と子供は常にいっしょにいるものだ。いわゆる目が離せない状態でもあるし、子供もあまり親から離れたがらない。こういう状態で撮影する場合、どうしても子供とカメラとの距離が近くなる。例えば片手でだっこしたり支えたりしながら撮影すると、せいぜい30センチから50センチぐらいの距離になるだろう。
このぐらいの距離で50ミリぐらいのレンズだと、もう顔の一部しか撮れない。背景などはまったく映らず、ただひたすら子供の顔アップしか撮れてない映像になってしまうのである。こんな距離でも普通のサイズ、例えばバストショットぐらいが撮れるレンズとなると、少なくとも30ミリ台、できれば28ミリぐらいは欲しいところだ。このぐらいならば、2人の子供や、母と子の2ショットも撮りやすい。
また、ワイド端が広いと、ドタバタしていても撮りっぱぐれがないので、カメラ初心者には便利なハズだ。というのも、正確に狙わなくてもだいたいの方向にレンズを向けておけば、大抵被写体がフレーム内に入るからである。腹が減っただの鼻をぶつけただの、生きることすなわちハプニングの連続みたいな子供の人生を収めるには、落ち着いて構えてフレーミングするということは絶対無理だ。よくバラエティ番組などで、タレントにビデオカメラ持たせて現場で自分撮りさせる、というものがあるが、こういうのは大抵家庭用ビデオカメラにワイコン(ワイドコンバージョンレンズ)を付けて撮っている。
逆の意味で、このぐらいの年代の撮影では、ズームはほとんど使うチャンスはない。遊園地などに連れて行っても、親と同伴でなければ乗り物に乗れないケースも多く、離れて子供を撮る機会がほとんどないからである。
子供が幼稚園などの社会生活に入ってくると、ビデオに求められる条件も変わってくる。撮影する機会が、園の行事中心になるからだ。幼稚園というのは、とにかく行事が多い。入卒園式や運動会はもちろんのこと、音楽発表会やおゆうぎ会、七夕祭り、花火大会、春秋の遠足、頻繁に行なわれる保育参観といった調子だ。
このようなイベントを撮る場合、被写体に近づけなくなるケースも多い。そうなるとズーム倍率が重要、かというと、実はそうでもない。今どきのカメラであれば、ほとんど間に合うはずである。なぜならば、幼稚園というのは組織的に小学校より規模が小さい。園庭も体育館も小さく、離れているとはいっても大したことはないのだ。
では何が重要かというと、実はバッテリーの持続時間なのである。
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