「再販維持制度がある中で、こうした制度を与えるのはおかしい」
全国消費者団体連絡会(消団連)の関根啓子氏は、消費者保護の観点から、著作権法改正に「断固反対」と意見を述べる。
「再販維持期間の短縮を行うなど、レコード業界側も努力はしているというが、それでもまだCDの値段は高すぎる。現在は、その状況下でも選択の自由が存在するが、法改正でそれすらもなくなってしまうならば、やりたい放題になってしまう」
「(法改正は)輸入“コントロール”権なので、CDの値段が今より下がるとことは考えにくい。それに、改正反対運動によってCDの買い控えなどが起これば、結果として、アーティストのためにもならない。坂本龍一氏の発言もあるように、アーティストからも反対の声が上がっている」(関根氏)
日本レコード協会側が「輸入盤規制は起こりえない」と主張している点についても、「起こらないと言っていても、絶対そうならないという保証は全くない」と懸念する。
また、関根氏は、法案審議の段階で消費者サイドの意見が盛り込まれなかったことも、問題点だと指摘する。
文部科学大臣の諮問機関である「文化審議会著作権分科会」には日生協(日本生協連)政策企画部長の小熊竹彦氏と全地婦連(全国地域婦人団体連絡協議会)事務局長の菱木純子が参加してるが、今回の法案を議論した法制問題小委員会には両名を始めとした消費者団体の関係者が参加していない。小熊氏は、法制度問題委員会を聴講して初めて、輸入CDが規制されるかもしれないことを知ったという。
そこで、消団連は昨年12月5日に日本レコード協会の依田巽会長や文化庁、公正取引委員会、経済産業省らの関係者を招いて意見交換会を開催、消費者サイドからの質問を投げかけている。
この席で小熊氏は、「法制度問題小委員会の参加者20名のうち、著作権者あるいは関連者の利益を代表する人物が14名と多く、消費者代表が入っていないのはおかしい」と法案策定のプロセス自体に疑問を呈している。
これに対する文化庁の担当者の回答は「(自身の)着任前なので人選については答えられない。委員会では意見が偏らないように議論が行われている」というものだった。
そのほか、小熊氏は「“レコード輸入権”という審議のタイトルが途中から“日本販売禁止レコード”と変わっているのは不自然」「音楽産業の振興を目的としているのに、なぜ経産省で議論されないのか?」という質問を投げかけ、消団連からは「レコード輸入権の導入に関しては早急な結論を出さないこと」「消費者団体を含めた幅広い層による検討の場を設けること」の2点を要求として申し入れた。
意見交換会の後、消費者の意見を受け入れる手段としてパブリックコメントの募集が行われたが、結果として審議案と大差ない趣旨の法案が提出され、参議院を通過している。
「何度かレコード業界からの説明を受けたが、理解できるものではない」「『アーティストの権利や日本の音楽文化を守る』という主張がされているが、それは違うのではないか」
消団連の関根啓子氏が指摘したように、「日本のCDは高過ぎる」という声が根強くあり、レーベルの直輸入盤や並行輸入盤、あるいは(問題があるにせよ)還流CDは、ユーザーのそうした声を反映して伸びてきたと考えられる。
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