大阪府や大阪市などの行政と個人投資向け証券会社や大阪の一部企業などが共同で、若手のデジタルクリエイターを育成する官民共同プロジェクトを立ち上げた。プロジェクト名にはかつて、手塚治虫や藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫などが集った「ときわ荘」にちなんで、「デジタルときわ荘」の名が冠されている。
「デジタルときわ荘」では、“パーソナルCGアニメ”について製作資金調達・営業・販売などのバックアップを行いデジタルコンテンツの拡充を図ることを目的としている。なお、パーソナルCGアニメとは、個人または少人数で製作された自主制作のCGアニメーションを指す。
近年、PCやアニメーション・CG製作ツールの発達の中で、個人レベルでの本格的なアニメーション製作が可能な環境が整い始めた。こうした土壌の中から、2001年にはデジタルクリエイター新海誠が監督を務め、少人数によって製作されたアニメーション「ほしのこえ」が話題となった。
近未来のSFラブストーリーとして描かれた本作品は、脚本の感性や作品の完成度など、多くの点で話題を呼び、“パーソナルCGアニメ”の可能性を世に示した。作品はその後、DVD化され国内で6万枚の売り上げを残し、小説、漫画など多方面のメディア戦略でも成功をおさめた。
プロジェクトでは、全国から優秀なCGアニメ作家や作品企画を募り、2005年度までにこの「ほしのこえ」のような数本のパーソナルCGアニメを製作・発売することを中期目標に掲げている。また、製作者同士の活発なコミュニケーションを促す目的から、大阪にクリエータが寝食を共にして創作活動に打ち込む「デジタルときわ荘」を設立する予定があることも明らかにしている。
プロジェクトへの参加希望および、作品製作を担当するCGクリエイターや企画発案の募集は、原則として締め切りが無い。第1回目の時期は、6月末日ごろとされているが、その後でも随時受付を行うとしている。
ゲーム、アニメなど日本は今、世界的なメディア基地となっているが、コンテンツ事業へのほかアジア各国からの圧力も同時に強まっている。しかし、同時に日本的なアニメーション製作の技術的下地や、作品文化は他国に比べても未だ比較優位をもつことも確かだろう。こうしたプロジェクトを通じて、若手製作者の感性と、蓄積されたノウハウの融合がより一層進展していけば、「アニメ大国日本」の新たな展開は充分望めるものといえる。
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