ソフトバンクの日本テレコム買収で、印象的だったのは日本テレコム側の反応だ。社長として留任する倉重英樹氏は「双方の思いが合致した」結果だと話しており、買収を好感する姿勢を見せている。
買収にいたるまでに、どのような交渉があり、ソフトバンクと日本テレコムのどのような思惑があったのか。両社のトップの発言から、探ってみよう。
日本テレコムの倉重氏は、3月に社長就任記者会見を行ったばかり(3月8日の記事参照)。短期間で周囲の状況が大きく変化したことに、IT業界のスピードの速さを感じると話す |
倉重氏は日本IBM入社後、プライスウォーターハウスコンサルタント代表取締役会長に就任した人物。通信の分野にそれほど詳しいわけではなく、就任後は日本テレコムの現状把握に努めたという。そうして分析を進めるうち、“単体で事業を続ける”ことを疑問視するようになった。
「日本テレコム(単体)でやっていくとなると、取り柄がないわけではないが、NTTやKDDIよりはるかに規模が小さい。それで事業をしていて、社会に対するインパクトは何なのか。面白みがあるのか」。単独で事業を継続するという選択肢の重要度は「下げざるを得なかった」という。
同氏はまた、今後は固定電話の音声による収益でなく、業績を伸ばしている企業向けネットワーキングソリューションにフォーカスする必要があると判断。“ブロードバンド”へのシフトが重要と結論づける。
「携帯(部門)をもっていない我々としては、重要なのはISPの世界、ブロードバンドの世界だ。ご案内のように我々はODNを持っている」
そう考えたとき、Yahoo!BBという存在は魅力的に映ったという。日本テレコムは過去に、東京電力(パワードコム)に買収されるのではとも取りざたされたが(2002年5月23日の記事参照)、「パワードコムは“同質”であり、同質のものと一緒になると(抱えている)悩みもより大きくなるのかな、と」(同氏)。“異質”のものと一緒になった方が、夢が描けると考えたという。
「リップルウッド(米Ripplewood Holdings)に、Yahoo!BBを買ってよといった。それが今回の買収のきっかけだ」(笑)。
横でこのコメントを聞いていたソフトバンクの孫正義社長は、愉快そうに笑っていた。
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倉重氏は、社長就任時にはこの買収の話は「聞いていなかった」と話す。それでは、いつ頃から交渉が進行していたのか。孫氏は、2003年の秋頃には“話”があったという。
もっとも、孫氏はRipplewoodのティモシー・コリンズCEOとは個人的に知り合いで、数年前から一緒に食事をして一般的な会話をする仲だったとコメント。
「ティム・コリンズとは数カ月に一度のペースでお会いしていた。そういう中での“会話”はあった」として、明確な交渉とは異なるとした。
報道陣からは「男女の交際もそうだが、互いに好意を持っていたとはいえ“どれが最初のデートか”は言えるもの。何時、どこで誰と誰が最初に交渉を行ったのか」と追求する声が上がった。
これに対し、ソフトバンク側も日本テレコム側も明確な返答をしなかった。倉重氏は、「“結婚式”でも、『なれ初め』ぐらいは紹介されるかもしれないが『いつどこでデートをしたか』の詳細は言わないものだ」と発言。報道陣を煙にまいた。
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