ITmedia NEWS >

薄型大画面TVの“第3の選択肢”――プロジェクションTVの魅力(1/2 ページ)

» 2004年06月03日 16時00分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 先日セイコーエプソンが、大画面テレビ「LIVINGSTATION(リビングステーション)」を発表して激戦の国内家庭用テレビ市場へ本格参入した(5月31日の記事参照)。国内大手家電メーカーのほとんどがプラズマ/液晶といった直視型デバイスの薄型テレビを中心に展開しているのに対し、後発の同社は、国内ではほとんど普及していない“プロジェクションテレビ(PTV)”で勝負に出た。

photo プロジェクションテレビ「LIVINGSTATION」

 プラズマや液晶に次ぐ薄型大画面テレビの“第3の選択肢”となる可能性を秘めたPTVの魅力について、同社TFT事業部TFT設計技術部長の小池啓文氏に聞いた。

photo 同社TFT事業部TFT設計技術部長の小池啓文氏

 PTVは以前から“リアプロ”と呼ばれて、大画面を求めるユーザーから少数ながらも支持は得ていた。だが、国内ショップではほとんど展示されていないこともあり、名前ぐらいは耳にしていてもその仕組みなど詳細は一般ユーザーにはあまり知られていない。

 「ライトバルブ(表示デバイス)組み込んだ光学エンジンを使って、内部で投射した映像をスクリーンの後ろから投影させるのがプロジェクションテレビの原理。“リアプロ”と呼ばれていた以前のCRT方式のPTVは大画面だが本体も巨大で、ブラウン管など直視型に比べて暗くてフォーカスが甘いといわれていた。だがマイクロデバイスを使った近年のPTVは、画質が大幅に向上しており本体もコンパクト。欧米では“大画面テレビはPTV”として定着している」(小池氏)

photo PTVの仕組み。内部で投射した映像をスクリーンの後ろから投影させる

 従来のCRT方式では、光学エンジン自体の大きさや投射距離の問題があり、奥行きや“ハカマ”と呼ばれる本体内下部の部分が大きくなっていた。非常に大きく重たかったことから、家屋の狭い日本では受け入れられなかったのだ。

 「CRT方式は3眼なので、それぞれの映像を集結させるためにはある程度の投射距離が必要。そのため昔のリアプロは、テレビ台の下までエンジンが続いている機種がほとんどだった。だが近年のマイクロデバイス方式はCRT方式に比べてサイズも半分ぐらいになり、50インチ前後では奥行き40センチとブラウン管テレビよりも薄くなっている」(小池氏)

photo

 マイクロデバイス自体は10年以上前から存在し、PTVへの応用もデバイス登場当初から考えられていた。ではなぜ、マイクロデバイス方式がこれまで普及しなかったのだろうか。

 「初期のマイクロデバイスは画素が粗く、大画面テレビの表示デバイスには向かなかった。高精細のものは高価で、すでにリアプロ向けに定着していたCRT方式と比べるとその価格差が大きすぎた。そのため、マイクロデバイス方式は高価な業務向けの一部機種にしか採用されていなかった。高精細なマイクロデバイスの価格がこなれてきたここ2、3年になって、ようやくPTVへの本格応用が可能になった」(小池氏)

大画面向け表示デバイスでは、プラズマよりも“次世代型”

 夏のアテネオリンピックを前に、このところテレビの新製品ラッシュが続いており、特にリビング向け大画面テレビの主役の座をめぐって、液晶とプラズマが激しく争っている。

 リビングなど明るい場所での見やすさと低消費電力をアピールする液晶テレビに対して、色再現性と大画面化でのコストパフォーマンスを売り込むプラズマテレビと、その特徴は一長一短。だが薄型テレビになって設置スペースの自由度が高まったことで、ユーザーは「より大画面に」というニーズが高まっている。そのため、40インチ以上になると急激に価格が上昇する液晶よりも、40インチ前後ではインチ1万〜1.5万円前後で購入できるプラズマがリビングテレビで有利といった声も多い。

 その一方で、あるテレビメーカーのアンケート調査では、ユーザーが大画面テレビに求めるものの1位に「低消費電力」がきている点も興味深い。自発光で直視型のプラズマは消費電力も大きく、大画面になればなるほどそれが顕著になる。

 小池氏は、コスト/画質/消費電力などあらゆる面で、PTVこそがリビング向け大画面テレビに適していると語る。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.