“液晶のシャープ”の活躍で家庭用液晶テレビ市場では高いシェアを誇る日本も、もともとお家芸であった液晶ディスプレイ(PCなど情報機器向け)の分野では、積極的な設備投資による大幅コストダウンで攻勢をかけた台湾・韓国勢にすっかりシェアを奪われてしまった。
この強力なライバルが、やや停滞するPC市場からデジタル家電市場へと目を向け始めている。
電子情報技術産業協会(JEITA)が6月11日に開催した「情報端末フェスティバル2004」で、台湾ディスプレイメーカー最大手のTPV Technology 日本事務所マネージャーの陳建源氏が台湾のディスプレイ産業の動向について語った。
ディスプレイ(モニター)市場は従来のCRTから液晶へと急速に移行している。2003年の全世界のディスプレイ出荷台数はCRT7000万台に対して液晶が5100万台だったが、陳氏は2004年には液晶が7090万台となって5790万台のCRTを超えて液晶メインの市場に移っていくと分析する。
「今年の初めにCRTの原材料がショートしていたので、CRTの2004年出荷台数はもっと下回る可能性も出てきた。液晶ディスプレイの新たな生産拠点が台湾・韓国で次々立ち上がっており、CRTとの価格差はさらに縮まると見ている。2006年には液晶ディスプレイが1億台の大台に達すると予測している」(陳氏)
拡大を続ける液晶ディスプレイ市場で、台湾は台数ベースで2002年61%、2003年65%と着実にシェアを伸ばしている。
「2004年の台湾での液晶ディスプレイ生産量は4938万3000台になる見込みで、世界シェアは72%にまで拡大する。台湾メーカーの強みは“垂直立ち上げ”で生産拠点を増強している点。パネルメーカーとの関係が良好で大手メーカーからの注文が集中している。安定した生産能力で、パネル不足時に実力を発揮する」(陳氏)
このようにPCなど情報機器向けディスプレイ市場で確固たる地位を築いた台湾メーカーが、次に狙うのが“液晶テレビ”市場だ。
2001年には全世界で100万台に満たなかった市場規模も、2002年(165万7000台)、2003年(434万5000台)と前年比倍増で推移しており、2004年には834万1000台、2008年には4362万1000台にまで拡大すると予測されている。
現在、液晶テレビ市場では日本のシャープが独走しており、韓国メーカー2社がそれに続く状況。PC向けディスプレイでトップシェアの台湾メーカーだが、液晶テレビではシェア10%未満にとどまっている。
「台湾メーカーはPC向けディスプレイの次の大きな選択肢として液晶テレビを考えている。これまで液晶ディスプレイで蓄積したノウハウを生かせるし、台湾のパネルメーカーも液晶テレビ向け製品に注力し始めている」(陳氏)
陳氏によると台湾メーカーは、日本や欧州向けには20インチ以下の小型液晶テレビを中心とし、米国向けには20〜30インチ台の大型液晶テレビも展開していく構えだという。
「台湾メーカーが躍進した理由は“投資の熱心さ”。1998年あたりのディスプレイ市場が冷え込んだ時期に、パネルメーカーが積極的に設備投資した。もうひとつは、中国大陸に生産拠点を積極的に展開している点。台湾メーカーの強みである垂直立ち上げを液晶テレビでも生かし、PC向けディスプレイと同様にコストと品質でシェアを延ばしていきたい」(陳氏)
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