PC普及の原動力となったWindows95の発売に沸く1995年、Dell仕込みの直販スタイルを武器にしたPCベンチャー「アキア」が誕生した。
そして10年後――。デジタル家電の大きな波が押し寄せる2004年、家電大国日本に1社の新興AVメーカー「バイ・デザイン」が産声を上げた。
この2つのベンチャーを興したキーマン、バイ・デザイン社長の飯塚克美氏に、日本では大手家電メーカーが牛耳る「薄型大画面テレビ」市場での事業展開について聞いた。
今年2月に、液晶でいきなり“インチ1万円”以下という低価格な大画面ハイビジョン液晶テレビ(2月16日の記事参照)で華々しいデビューを飾った同社。そして今月6月10日には、1インチあたり7000円台となる30万円(税抜き)を切った42V型プラズマテレビ「d:4222GJ」でまた業界を驚かせた。
「当初、会社のコンセプトとしては液晶だけで行こうと考えていたのだが、米国では3000ドル以下の安価なプラズマテレビがここ1年ほどで立ち上がってきていた。価格に敏感な米国でも3000ドルを割ると動きが変わってくる。このような傾向は日本にも当てはまるはずと考えた」
ただ今回の42V型プラズマテレビは、パネル解像度を見るとWVGA(852×480ピクセル)となっており、同サイズではXGA(1024×768)サイズのHDパネルの採用が多い大手家電メーカー製品から比べるとややスペック面で見劣りする。
「DVDの映画を楽しむといった使い方ではWVGAで十分で、それがHDパネルかそうでないかは一般のユーザーにはほとんど見分けがつかない。米国でガンガン売れているのも、安価なWVGAタイプ。一方、日本メーカーのHD対応プラズマは米国では高すぎてあまり売れていない。日本メーカーは、数値上でスペックの低いこのような製品を販売してこなかったが、これからはWVGAタイプも出してくると思う」
実は同社は、米国市場ではWVGAタイプ(42V型)とともにHDパネルを使ったプラズマ(42V型と50V型)もラインアップしている。
「米国で販売しているHD対応プラズマは、タイミングをみて日本市場にも投入していきたい。そのときは、価格も期待していて欲しい」
同社は、工場を持たないファブレスビジネスを徹底させるとともに、先進的な技術を持つメーカーと積極的にパートナーシップを推進。ローコストオペレーションによる徹底した販売管理費の削減でこのような低価格を可能にした。
ただ、ファブレスビジネスは部材選択が勝負を左右する。液晶/プラズマのパネルは、入手しやすさ/コスト/性能などを考慮して、複数のメーカーからその時点で最適なものを選択。ただし、映像処理エンジンだけは2社(Pixelworks/Genesis)に絞っているという。
「これからは画像処理エンジンが勝負。DellがIntelのCPUばかり使って成功したように、われわれも2社に運命を託している。そうすれば、彼らも積極的にサポートしてくれる。日本メーカーは画像処理エンジンまで自分で作るが、自社で作るとそれをどうしても使わなくてはいけなくなる。フットワークの軽さがわれわれの武器」
飯塚氏はリビング向けテレビについて、ここ2年間ぐらいは40インチを境に下のサイズが液晶、上のサイズがプラズマと住み分けされていくと分析する。
「30インチ台までは液晶が圧倒的に増えていくだろう。すでに液晶の32V型や37V型は価格面でプラズマと競合し始めている。Samsungの液晶第7世代工場が立ち上がれば、40インチクラスの大型液晶も大幅に安くなる。プラズマは50インチ以上で勝負していくことになるのだろう」
1インチ1万円以下の液晶、1インチ7000円台のプラズマとくれば、同社の“次”に期待が高まる。
「ブラウン管では25〜29インチが一番のボリュームラインだった。液晶では30インチ前後がその売れ筋サイズに該当する。この30インチ前後のサイズで普及価格の液晶テレビを、遅くても秋口までには投入したい。この“普及価格”には皆さんきっと驚くはず」
オリンピックという需要期も控えてはいるが、ホームグランドである日本ではあまり無理をせず、ゆっくりやっていきたいと飯塚氏は語る。
「アキア時代にパッと売れて、急激にだめになっていった。それと同じ轍は踏みたくない。デジタル家電先進国の日本で売れるテレビを出せば、米国や欧州で売るのは楽。日本で売れるようなものを少しずつ出していきたい。Dellはあせらないでゆっくりやってあれだけ成長した。一回買ってくれたユーザーは徹底的に大事にしていく。宣伝広告などしなくても、ゆっくりながらもクチコミやウワサで製品の良さが伝わっていくようなメーカーにしていきたい」
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