デジタル放送の普及で本格的なデジタルテレビ時代を迎え、プラズマ/液晶テレビといった“薄型大画面テレビ”が人気だが、次世代テレビと呼ばれるこれらは果たして“これからのテレビ”としての画質をしっかりと備えているのだろうか。
先週、東京ビッグサイトで開催されていた「フラットパネルディスプレイ製造技術展」の技術セミナーで、AV評論家で日本画質学会副学会長の麻倉怜士氏が、最新のプラズマ/液晶テレビの評価から導き出した“これからのテレビ”に必要な画質について語った。
DVDの登場やDVD/HDDレコーダーの普及、デジタルハイビジョン放送、Blu-ray Disc(BD-ROM)など、ブラウン管テレビの黎明期には考えられなかったほどの多彩でしかも情報量の多いメディアが登場している。麻倉氏は、このようなメディアで提供されるコンテンツの価値をいかに「表現」するかが、これからのテレビに欠かせないと語る。
「“これからのテレビ”は従来のテレビの延長ではいけない。従来のテレビは、コンテンツもスポーツやニュースなど“情報”を伝えるものだった。だが、BSデジタルのハイビジョン放送など新しいメディアでは、映画や映像に凝ったドキュメンタリーなど作品性にこだわったものになってくる。これらのコンテンツの価値をしっかり表現できなければ、“これからのテレビ”の役割は果たせない」
単に信号波形を「表示」するだけでなく、コンテンツが持つ「表現映像」という価値にどこまで迫れるかが“これからのテレビ”にとって重要であると語る麻倉氏。“価値を表現”という抽象的な指針を薄型テレビのスペックとして置き換えた場合に、最も大切なポイントが「コントラスト(暗所)」「暗部の階調性」「色再現性」であると指摘する。
「重視したいのが“階調”。上下のピーク値だけ優秀なコントラストだけでなく、中間の階調を細かく再現することが大切。“階調=映像作品の心”だ」
今、売れているプラズマ/液晶テレビは、麻倉氏が語る“これからのテレビ”に果たして相応しいのだろうか。
数インチの小型サイズから40インチ以上の大画面までカバーできるなど、ラインアップ力としてはブラウン管テレビの置き換えとして最有力候補の液晶テレビ。だが麻倉氏は昨年のセミナー講演時でも「液晶テレビはコントラストや動画が貧弱で、感性の映像を映し出す“表現ディスプレイ”になるためには、相当頑張らなければならない」と辛口の評価を下していた(2003年7月3日の記事参照)。
「液晶テレビは長足の進歩を遂げており、“もの凄く悪い”から“なんとか実用”になってきた。課題だった視野角と動画特性もIPS/オーバードライブ回路/黒挿入技術など最新技術で大きく前進。だがどうしてもバックライトの光が漏れるので真っ黒を表現できず“暗所コントラスト”が低いのが弱点。暗い部屋では“黒浮き”が目立ち、ピーク感も目に強いだけで作品性を表現するには至っていない」
もっともホームシアター的使い方ではなく、周囲が明るい場所でのテレビ用途としては明所コントラストが高い液晶が活躍する、と麻倉氏。「カジュアルな場所での活躍以外に、作品性が表現できるぐらいの深みがあればなおいい」
大画面化しやすくホームシアター向けとして期待されるプラズマテレビはどうだろうか。麻倉氏は以前から「自発光で残像がないなど潜在能力は高い」とプラズマテレビを評価している。
「4年前の時点ですでに3000対1の高コントラストを実現していたが、当時の階調は8ビット(256階調)とバランスの悪いものだった。最新モデルでは高コントラストを維持しながら11ビット(2048階調相当)まで階調も進化している。ただし以前からの課題だった動画の擬似輪郭ノイズや誤差拡散ノイズはなかなか改善されていない。暗部でのノイズ抑制/階調数確保が今後の重要なポイント。質感や目に与える印象は液晶よりも自然で、一歩引いた感じの風合いがプラズマの魅力」
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