2004年7月1日、ウォークマンが誕生25周年を迎えた。初代ウォークマン「TPS-L2」の記憶媒体に用いられたのはご存じカセットテープだが、時代の変化と共にCD、DAT、MD、HDDとさまざまなメディアが記録媒体として使用されている。
現在、ポータブルオーディオ向けメディアとして広く普及しているMDも登場から12年の歳月を経て、新規格「Hi-MD」が登場、対応製品もようやく登場した。今回はこのHi-MDに対応したソニーのHi-MDウォークマン「MZ-NH1」を試用してみた。
Hi-MDとは、既存MD規格との再生互換性を保ちながら、録音時間を約2倍に引き上げた新規格。既存のMDは80分ディスクで177Mバイトの容量を持つが、Hi-MD規格での初期化を行うと、2倍弱の305Mバイトの記録が可能になる。また、同時に1Gバイトの容量を持つHi-MD規格専用ディスクも用意された。
コーデックには、これまでMDに採用されていたATRAC/ATRAC3に加えて、「ATRAC3plus」を採用。Hi-MD形式でフォーマットした80分ディスクならば13時間30分の録音が可能(ビットレート48kbps時)で、1Gバイトディスクを利用すれば最大で45時間録音できる(同)。
ファイルシステムとしてFATを採用、USBマスストレージクラスにも対応したことによって、PCの外部ストレージとしても利用できるようになった。CDからコピーした音楽データと、PCからコピー・移動した画像やテキストファイルなどの混在も可能だ。
著作権保護技術にはメモリースティックやNetMDで使用されている「OpenMG」と「MagicGate」が採用されている。
Hi-MDに採用されたATRAC3plus。既にネットワークウォークマンやCDウォークマンなどには採用されているが、MD向けに採用されたのは始めて。ここでHi-MDとATRAC3の関係について、整理しておきたい。
既存のMDで利用されているATRAC3のビットレートは、66kbps、105kbps、132kbpsの3種類。そのうち、66kbpsがMDLP4(4倍モード)、105/132kbpsがMDLP2(2倍モード)と呼ばれている。ATRAC3plusでは、新たに48kbps、64kbps、256kbpsという3つのビットレートが追加されており、Hi-MDでは64kbpsが「Hi-LP」、256kbpsが「Hi-SP」と呼称される。
MZ-NH1に用意されている録音モードは、ATRAC3 66/105/132kbpsとATRAC3plus 48/64/256kbps、それにリニアPCM(1.4Mbps)を加えた7種類。フォーマットとして既存MD形式とHi-MD形式の2種類が利用可能なので、合計14通りの録音が可能だ。
形式 | 録音時間(1Gバイトディスク Hi-MD形式) | 80分MD(Hi-MD形式) | 74分MD(Hi-MD形式) |
---|---|---|---|
ATRAC3plus 256kbps(Hi-SP) | 7時間55分 | 2時間20分 | 2時間10分 |
ATRAC3plus 64kbps(Hi-LP) | 34時間 | 10時間10分 | 9時間25分 |
ATRAC3plus 48kbps | 45時間 | 13時間30分 | 12時間30分 |
ATRAC3 132kbps | 16時間30分 | 4時間50分 | 4時間30分 |
ATRAC3 105kbps | 20時間50分 | 6時間10分 | 5時間40分 |
ATRAC3 66kbps | 32時間50分 | 9時間50分 | 9時間 |
PCM(1411kbps) | 1時間34分 | 28分 | 26分 |
※Hi-MD形式を利用した際にMZ-NH1で利用可能なビットレートと各メディアでの録音時間(同社発表資料より)
最も高圧縮で長時間の録音が可能なのは“ATRAC3plus 48kbps”だが、実際にいくつかのCDをATRAC3plus 48kbpsでMDへ取り込み、MZ-NH1で再生してみた限りではどうも物足りなさが残る。あくまでも筆者の主観だが、ATRAC3plus 48kbpsの音源をMZ-NH1で再生すると中低域が弱く、シャカシャカした感じの音になるようだ。
ATRAC3plus 64kbps/ATRAC3 105/66kbpsは、若干、中域の押しが弱い感じを受けるが、移動中に聞くことを考えると「実用に耐えるかな」というレベル。ATRAC3plus 256kbps/ATRAC3 132kbpsではそうした感じを受けなかったので、筆者がこの製品を常用するならば、ATRAC3plus 256kbpsかATRAC3 132kbpsを選択すると思う。
これはATRAC3plusの規格の話になってしまうが、「ATRAC3plus 128kbps」という設定があれば録音可能時間と音質のバランスがいいのではないかと思うがどうだろうか。
MZ-NH1で、CDの音楽をPCを経由してMDへコピーする際、その方法は2種類用意されている。
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