ITmedia NEWS >

“ビジネスありき”のソーシャルネット「uume」

» 2004年08月20日 08時39分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ソーシャルネットワーキングサイト「uume」(ユー・ユー・ミー)は、独特だ。国内の他サービスが、ネット関連企業の1サービスとして、また、個人の趣味で運営されているのに対し、uumeを運営するフェアオークスジャパンはソーシャルネット専業。uumeで儲けないと、立ち行かなくなる。しかしuumeの利用は無料。広告も入っていない。

 同社が“売り物”にするのは、ソーシャルネット内のコミュニティだ。コミュニティとは、ユーザーが自由に作成できるグループで、同じ興味を持つ人同士が、掲示板やアルバム機能などを使って情報交換できる。

 同様の機能は他ソーシャルネットでも利用できるが、あくまでユーザー同士のコミュニケーション機能であって、ビジネスとは直結しない。一方uumeでは、コミュニケーション機能をビジネスの核に位置づけ、“信頼性の高い口コミメディア”として売り出す計画だ。

 例えば、ある製品のユーザーコミュニティを、製品メーカーにマーケティングツールとして紹介。メーカーの新製品モニターを募集する母体にしたり、製品のフィードバックを集める情報源にし、いくらかのマージンを得るといったモデルを想定する。

 「ネット上の口コミをマーケティングツールとして活用したいと思っている企業は多いが、既存の匿名掲示板などには信頼性の低い情報も多く、企業側もどう利用していいかわからないのが実情」(前川淳社長)。ユーザーがプロフィールを公開し、ユーザー同士が友達としてつながっているため責任ある発言が求められるというソーシャルネット独自の信頼性を売り込む。

 ただ、uumeは「GREE」「mixi」「キヌガサ」といった国内の先行ソーシャルネットとは違い、他ユーザーからの招待は不要。登録さえすれば誰でも参加できる。「ユーザー数が少ない時点では、安全性・信頼性を保つのに招待制が役立つ。しかし、数十万人、数百万人が参加する段階になれば、不特定多数が参加しているのと変わらない。招待制の意味もなくなる」(前川社長)。

 代わりに、ユーザーの詳しいプロフィールや、友達関係の閲覧などは、直接の知り合いを第1階層、その知り合いを第2階層……として、第4階層までしかできない仕組みにした。この仕組みにより無関係な人からのアクセスを制限し、安心感を高めている。

 コミュニティ管理者の権限により、コミュニティの掲示板やアルバムをuumeのサイト外から閲覧可能にできるのも、他にはない特徴だ。より多くの人に情報発信できるほか、興味を持った外部の人がコミュニティに新たに参加し、情報の質がさらに高まるといった、“正の循環”も期待できる。

公開されているコミュニティ

個人サイトは「点」、ブログは「面」、ソーシャルは「立体」

 「ソーシャルネットワーキングサイトは、新しいメディアになる」と前川社長は言う。個人サイトが情報を一点から発信する「点」のメディア、Blog(ブログ)サイトが、トラックバックを通じて情報を拡散させる「面」のメディアであるのに対して、ソーシャルネットのコミュニティは、集まった人々が、情報を共有し、知識や人間関係を深めてゆく「立体」のメディア。口コミ情報が立体的に集中する新メディアとして売り込み、ビジネスに繋げる考えだ。

 一昨年の12月、アメリカでベンチャーキャピタルの出資を受けて設立した同社。「アメリカはソーシャルネットがすでに飽和状態なため」(前川社長)アジア展開を計画。昨年7月、中国で「uume」をスタートした。ユーザー数は非公開だが、「10万人以上おり、アジア最大のソーシャルネット」(前川社長)。国内でもユーザーを増やし、ソーシャルネットでしかできないビジネスを模索していく。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.