メモリーテックはDVD-ROMとHD DVD-ROMの互換製造ラインを報道陣に公開した(別記事参照)。この生産ラインは、すでに新聞報道などで完成が伝えられていたものだ。今回、東芝とメモリーテックがラインを公開したのは、戦略をさらに次のステップへと進める前の大デモンストレーションといったところだろう。
東芝とメモリーテックは、茨城県明野町にあるつくば工場に作った製造ラインの仕様を、東芝を窓口にして、欧州などのディスク製造装置メーカーに対して公開。互換製造装置を世界中のDVD複製業者に普及させていく考えだ。またメモリーテックは、互換製造ラインのさらなる改良を図り、現在は3.5秒のタクトタイム(製造サイクル)を2秒台にまで短縮させた新しい互換製造ラインを10月中旬までに完成させる。
東芝の執行役上席常務待遇・主席技監の山田尚志氏は「録画フォーマットを今から統一するのは難しいかもしれない。しかしROMに関してはHD DVD-ROMでの統一が可能だと考えている」と話す。
工場見学レポートで紹介しているように、今回、メモリーテックが公開したROM製造ラインは、非常に完成度の高いものだった。具体的な歩留まりに関しては明らかにされていないが、HD DVD-ROMにおいても、90%を越える歩留まりを“ずっと以前に”クリアしているという。この数字は、DVD-ROMならば、既存のDVD製造ライン並のものだ。
DVD-ROMとHD DVD-ROMは、いずれも0.6ミリのディスクを2枚張り合わせた構造で、基本的な複製手順は全く同じ。異なるのは、ディスク基板に成型する凹凸(ピット)がより細かくなること、及び、BCA(burst cutting area : 記録面外に固有IDを刻むエリア)の書き込み部分だけだ。このうち、BCAの記録装置は1年ほど前から開発しており、公開されたラインには、すでにインラインで組み込まれているほど完成度が高い。
従って製造工程での違いは、スタンパを作る際のマスタリング行程と、スタンパからピットを刻んだディスク基板を作る部分の二つに集約されることになる。
原盤のカッティングは一般的なLBR(Laser Beam Recorder)で、初期のDVDカッティング行程と同様に351ナノメートルのガスレーザーを用いたものだ。品質面も十分にクリアされており、全面フルカット(通常、光ディスクは外周に近付くほど精度面で厳しくなる。BD-ROMはフルカットでのデモ実績がまだない)の2層ディスクで、問題なく再生が行えている。
加えて現在、より波長が短くローコストな405ナノメートルの半導体レーザーでのカッティングを可能にするべく研究を重ねている。「まだ具体的なスケジュールは見えていない」(メモリーテック・ニューメディア開発担当部長 大塚正人氏)としながらも、来年のHD DVDソフト出荷に向けての自信を滲ませていた。
もうひとつの鍵となるピット形成を行う射出成形プロセスにも、HD DVD向けの工夫が施されている。HD DVDではDVDよりもピットが細かくなるため、きれいに、素早くスタンパからはがすためには、DVDよりも品質の高いスタンパが必要になる。では品質の高いスタンパとは、どのようなスタンパなのだろうか?
メモリーテック主席技監・次世代DVD担当の勝浦寛治氏は「射出成形は高圧で樹脂を成形するため、温度の管理が重要になる。スタンパ冷却は水冷で行うが、ここで理想的な温度に保つこと、それにピット部分のエッジが立った高品質のスタンパにする必要がある。互換製造ラインにするためのノウハウは公開するが、こうした“品質管理部分”には独自のノウハウがある」という。
さらに勝浦氏がBlu-ray DiscのROM製造ともっとも異なる点として、射出成形後のディスク基板冷却を挙げた。
現行のDVD規格を検討していた際、初期段階で、Warner Brothersが0.6ミリカバー層を主張していたことがあった(当時は0.6ミリ基板を張り合わせるSD規格と、CDと同じ1.2ミリ基板を使うMMCD規格が標準を争っていた)。
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