ネット業界でいまや、知らないほうが少数派となった単語:「萌え」。その萌えをキーワードにしたゲーム、いわゆる「萌えゲーム」(萌えゲー)が、曲がり角を迎えているのだという。
9月7日の「CEDEC 2004」会場では、メディアワークス「電撃G'sマガジン」編集長の高野希義氏が登場。独自の視点から萌えゲーを取り巻く環境を解説すると共に、業界が直面する課題を指摘した。
そもそも、萌えとは何か。一言で定義するのは難しいが、高野氏は「かわいい女の子の喜怒哀楽を、離れた位置から“愛でる”」気持ちを指すようだと間接的に説明する。
萌えの構成要素としては、外見的特徴(下写真)や、「だにょ」「チェキ!」といった口癖、ドジですぐコケるなどの振る舞いが挙げられる。さらに、「妹である」「幼なじみである」など“主人公との関係性”も重要だという。
「萌え」の語源はどこにあるのか。1980年のTVアニメが起源とする説、1993年のTVアニメのヒロイン名が起源とする説、アイドルや声優の名前から来たとする説などがあるが、実は結論は出ていない。 広まった経緯としては、「セーラームーンのファンがよく『萌え萌え』言っていた」「同人誌即売会で『○○萌えですね?』とジャンルを確認するために使われていた」などの現象が指摘されている。しかしこちらも、何が普及の決定打になったのかは、いまひとつはっきりしない。 |
萌えゲーの歴史は古い。高野氏は、同種のゲームの萌芽期が、1987年頃にまでさかのぼると話す。
「16×16ドットで、これが『うる星やつら』のラムちゃんかよ! などという時代だった」
その後、CD-ROMを採用したPCエンジンの登場により、萌えゲーのグラフィックは向上する。1992年〜95年前後には、「プリンセスメーカー」「卒業」「ドラゴンナイトシリーズ」「きゃんきゃんバニーシリーズ」などのヒット作が誕生。アニメ界で、“萌え”という言葉が散見され始める。
高野氏は中でも、1994年の「ときめきメモリアル」が、一般人も巻き込んだブレイクスルーだったと振り返る。「あれは、業界にとって大きかった。世間から、『こんなゲームもあるのか』と驚きを持って迎えられた」。
1996年以降は、ノベルゲームの萌えゲーが新潮流となる。「To Heart」「Kanon」などが代表的。ストーリー性を高めた泣けるゲームも登場し、「泣きゲー」という言葉が生まれたりした。
1998年以降は、キャラクター細分化が一気に進む。1つの代表的な例として、高野氏は「Sister Princess」を挙げる。
「12人のかわいい妹に萌える……という主旨のゲームで、シリーズとして計4作品がリリースされた。うち、1作目は累計で16万本売れた」。この頃には、萌えという単語も一般化する。
しかし同時に、この頃から「萌えの暴走」が始まったと高野氏は指摘する。
「巫女、メガネっ子、ニーソックスなど、パーツや職業属性にこだわる層が顕在化した。その結果、萌え要素が“お約束”化(フォーマット化)し、形骸化し始めた」
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