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キヤノンと東芝、次世代ディスプレイ「SED」合弁会社設立(2/2 ページ)

» 2004年09月14日 15時46分 公開
[西坂真人,ITmedia]
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photo 黒がキリリと締まるコントラストの高さがSEDの魅力。試作機は10000対1という高コントラスト比を実現
photo 会場ではプラズマ(左)、SED(中央)、液晶(右)を横並びにした画質比較も行われた

キヤノンは2005年8月から量産開始。東芝による本格量産は2007年初頭

 記者会見では、本格量産までのロードマップも提示。合弁会社設立当初は研究開発に特化し、開発拠点の平塚で量産技術を実証したのちに両社による本格量産に移る予定となっている。

photo SED本格量産までのロードマップ

 2004年末から2005年前半にかけて200億円を投資して生産ラインの導入/立ち上げを実施。2005年後半には1800億円の追加投資を行って2006年末までに本格量産への基盤を整備する。

 キヤノンでは2005年8月から50インチ級で月産3000台規模の量産がスタートし、2007年初頭から東芝によるSEDテレビの本格生産が開始する。東芝では月産1万5000台規模からスタートし、2007年末には月産7万5000台規模に拡大する予定だという。東芝での生産拠点は現時点では未定。

「SEDは究極の薄型ディスプレイ」

 キヤノンは1986年からSEDの基礎技術である電子放出素子の研究を開始。1996年にはSED方式の小型パネルを試作し、SED方式による大画面薄型ディスプレイ実現の可能性を実証していた。東芝とは1999年にSEDの共同開発契約を締結。東芝の岡村社長は今年4月の経営方針説明会で、2005年度中にSEDを商品化することを明らかにしていた。

 開発から商品化まで長い歳月が経過した点について鵜澤本部長は「液晶やプラズマなどFPDの市場価格が当初の予想より大幅に下がったため、それに対抗するための量産技術確立に時間がかかった。ここにきて、ようやく競合できる価格で提供できるようになり、量産化にメドがついた」と語る。

 量産に向けて動き始めたSEDについてキヤノンの御手洗社長は「キヤノンは独自路線を追求するあまり、過去に失敗経験も多数生んできた。それだけにSEDは強力なパートナーが必要と考えていたところ、東芝から直接アプローチがあり共同開発に至った。開発に時間がかかった理由は、しっかりとした生産技術を確立しようとしたため。東芝のブラウン管における技術、絵作り技術などをSED開発に生かすことで実用化にこぎつけた。だが、当社のバブルジェット技術も20年の歳月がかかっている。ものになるまでに時間がかかったものほど、他社の追随を許さないものに成長している。SEDには期待している」と語る。

photo キヤノンの御手洗社長

 東芝の岡村社長は「今後は、動画情報を含む映像ネットワークの時代になる。放送のデジタル化もすすんでいる。このような時代には、高精細な映像コンテンツが普及してくる。忠実に再現できるニーズに対応できるのはSEDであると信じている。国内のみならず、グローバルな展開も考えている。SEDはブラウン管の持つ優位性と薄型化を両立した究極の薄型ディスプレイ。革新的な技術と当社の技術をあわせることで実用化できた。将来に向けた成長のエンジンとして期待している。薄型の市場で確固たる地位を築き、2010年には大画面薄型テレビでトップシェアを狙っていく」と語る。

photo 東芝の岡村社長
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