昨年末、“ハリウッド画質”を掲げて登場した松下電器産業のTH-AE500は、ハリウッドで実際にテレシネ変換時の色調整を行っている技術者、デビッド・バーンスタイン氏が色調整を行った点が話題となり、ベストセラー製品となった。
TH-AE700は、そのAE500をブラッシュアップし、それまで弱点として上げられていた設置性やコントラストの改善を試みた上で、ユーザーの手による簡単な色調整機能を加えた新製品である。しかも、フラットパネルテレビで培った固定画素デバイス向けの映像処理技術がふんだんに活用され、ウリの“ハリウッド画質”もさらに高い次元へと昇華している。
ウリは、やはり進化した新ハリウッド画質だが、その前に触れておきたいのが、本機の“基礎体力”が昨年モデルよりも格段に上がっているという事だ。
実売で20万円程度の720pフォーマット対応液晶プロジェクターには、セイコーエプソンのD4世代高温ポリシリコン液晶パネルが、どの製品にも同じように用いられている。しかし、同じパネルを使ってはいるものの、その前段階の映像処理や光を投影するための光学回路の違いによって、製品の基礎部分の実力はそれぞれ大きく変わってくる。
AE500とAE700を比べてみたとき、その違いとして目立つのはコントラスト比(1300:1と2000:1)だが、前者はプロジェクターAI、後者はダイナミックアイリス機能を用いているため、液晶プロジェクターの欠点と言われる黒の沈み込みを比較する材料とはならない。
プロジェクターAIとはシーンの明るさに応じてランプ光量を変化させる機能、ダイナミックアイリスはシーンに応じて絞りとガンマを最適に自動調整する機能だが、コントラスト比はもっとも明るい部分と暗い部分の比率であるため、こうした自動調整機能が入っていると黒が沈んでいなくても、高いコントラスト比になってしまう。
AE500の場合、光学回路のせいか、やや他社製品に比べると黒の沈みが甘いという印象が強かった。しかし、AE700ではダイナミックアイリスで絞り込まれるためか、黒の締まりは格段に改善されたという印象を得た。
もちろん、使用している液晶パネルに変化はないため、黒浮きが全くないわけではないが、D4パネル採用機の中でも良好と言える部類にまで改善されている。選択中のカラーモードによってアイリス調整が異なるようだが、「シネマ1」モードではごく一部のシーン以外はアイリスが全閉となるようだ。
その一方で、シャドウ部が目立たない明るいシーンでの“眩しさ”もきちんと再現される。手動アイリスの場合、全閉では明るいシーンでの“眩しさ”がやや物足りなくなるが、本機のダイナミックアイリスは絞りの可変幅が広く、期待通りの効果を発揮してくれた。絞りが変化してもガンマ値が同時に変化するため、特に違和感を感じることもない。
2000:1という数字から、DLP並の黒の沈みを期待しているユーザーは少々裏切られるかもしれないが、シャドウだけでなく、ハイライトからシャドウまで、様々なシーンをトータルで見ると、その効果を実感できるだろう。
また、DVDなどSDソース入力時のスケーリング処理が改善されたようだ。元々、AE500のスケーラは同クラスでは良好な性能を持っていたが、さらに解像感の高い映像を見せてくれる。
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