ソニーがこのあたりのいきさつを明らかにしたがらないのでは、力ずくで規格にねじ込んだからでは、と勘ぐられてもしかたあるまい。MPEGなどもそうだったが、オープンな規格に自社開発の規格をねじ込むというのは、大きな企業のアクションとしてはよくあることだ。そうすれば、ライセンサーになれるからである。
それならばDiXiMはどうか。DiXiMもその歴史をさかのぼれば、独自プロトコルで動いていた時代もあった。だがUPnP AVの規格が策定された時点で、それに準拠したミドルウェアの開発に切り替えている。
失礼ながらデジオンには、ソニーのように自分たちのプロトコルを規格にねじ込むような発言力や資金力があるとは思えない。しかし今やDLNAの寵児にまでのし上がってこられたのは、PCソフトだけでなく、既に実働するデバイス組込用のミドルウェアからSDKまで全部一緒に持っていたからだ。
実は既にDiXiMには、組み込みミドルウェアとしての採用例がある。NECのデジタルレコーダー「AX300」だ。
このレコーダーは、PCからMPEG-2の映像をストリーミングで引き出すことができる最初の製品であったわけだが、このサーバ「MediaGarage Server」はデジオン製だ。またNEC製PCにプリインストールされているクライアントソフト「MediaGarage」は、DiXiMのSDKで作られている。
現在まで大手家電メーカーのデジタルレコーダーが、PCと接続しようと四苦八苦しているのはご存じだと思う。家電領域のレコーダーとしては後発の部類に入るNECがいち早くPCとの連携を実現できたヒミツは、ここにある。
DiXiMの命は、当たり前だが相互接続性にある。サーバもクライアントもミドルウェアも、全部DiXiMならば話は早いが、実際にはDIGAやVAIOでは、別のサーバが走っているわけだ。
「実はこれらの相互接続性の検証がやりやすいということも、サードパーティーとして存在するわれわれのメリットでもある」と、前出の長谷川氏は語る。つまり主要メーカー間がダイレクトに接続試験をやる場というのは、DLNAが主催する接続試験ぐらいしかない。
だがサードパーティーならば、各メーカー間を個別に歩いて検証試験ができる。DiXiMの相互接続性の高さは、言ってみれば「地方の一ソフトハウス」が、足で稼いだ結果なのである。
CEATEC 2004でのDLNAブースのデモンストレーションは、対外的に広く相互接続のメリットをアピールする目的であったろう。だが同時にそれに参加したPCメーカーも家電メーカーも、自社の製品がこのホームネットワークから仲間はずれにされるのはヤバイ、と肌で感じた展示でもあったはずだ。
今後メーカー製PCでは、DiXiMの採用が増加していくだろう。独自にサーバ/クライアントソフトを開発していたのではコストも回収できないばかりか、セールスのタイミングを逸してしまう可能性もあるからだ。
では一方で自作PCユーザーは、どうすればいいのだろうか。今までDiXiMを搭載した製品は、これまでアイ・オー・データ機器のXVD対応キャプチャカード「GV-MVP/XVD」ぐらいしかない。だがそのためにキャプチャカードを新規に購入するというのも抵抗がある。
その答えが、「DiXiMの単体発売」という流れにつながってくる。9月28日にデジオンからニュースリリースが出ているが、こんな重要なニュースを、当ITmediaでは取りこぼしている。だ め じ ゃ ん。
この11月に単体発売される「DiXiMマルチメディア・ホームネットワーク・スターター・パック」は、その意味を知らなければ「今さらPC間のAV共有ソフトなんて出してどーすんの」ぐらいの見方しかされないかもしれない。だが今あなたが使っているPCがホームネットワークに参加できるかどうかの鍵が、実はコレなのである。
DLNAがきっかけとなって、多機種間相互接続の世界観は、ユーザーにいち早く理解された。DiXiMの操作感などは、11月の製品リリースを待つことにしよう。ここではもう一歩考えを進めて、多機種間相互接続によって描けるデジタルライフの未来像を夢想してみたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR