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対談 小寺信良×津田大介(2)――音楽ファンとレコード会社の“思い”は、なぜすれ違うのか特集:私的複製はどこへいく?(2/3 ページ)

» 2004年11月05日 16時50分 公開
[渡邊宏, 中川純一,ITmedia]

小寺:さっき、時間があったので中古CD屋に行ってきたんですが、あの市場は健全だと思います。ニッチなモノは中古でもソコソコの値段がしますし、大量に存在してるモノの値段はどんどん下がっていきます。安いなら試しに買ってみる、というコンテンツもあるわけですよね。特に音楽は嗜好性の高いものですから、価値観は人それぞれです。自分の中で対価のバランスが取れれば買う、そうでなければ「ふざけんな」って買わない。今のところCDの国内版新譜は、全体的に「ふざけんな」って状態になりつつある。だから輸入盤に走る構造もできあがる。

――価格は需要と供給のバランスで決まるもので、それがコンテンツだからといって過剰に保護されることについては疑問を呈する人も少なくありません。

津田:レコード会社の立場に立てば、あれだけの商品数を扱うわけですから、一律3000円の方が楽なんです。間違いがないですからね。1500円でCDを発売して失敗したら赤字を出してしまうでしょうし、逆に5000円で出して失敗する可能性もある。(価格をバラバラにすると)いくらにするかという判断が難しいことは確かです。

――今、CD一枚あたりをプレスするのにかかかる値段はいくらぐらいでしょう?

津田:単純にプレスだけを考えれば、60円もしないでしょう。で、いまはCDが売れないので、国内の製造ラインがどんどん空いてしまっていて、工場側も製造価格を引き下げるを得ない状況になっている。

 レコード会社の人はよく「CDは高いと言うけれど、(LPレコード時代の)30年前からほとんど価格は変わっていない。むしろ価格の優等生だ」と言います。その話は確かに真実なんですが、モノを買うときは、普通、ほかのモノと高い安いを比較するじゃないですか。「なんで映像も入っているDVDは1980円なのに、音楽しか入っていないCDは3000円なの?」と。携帯電話ならば、200円、300円出せばそれなりに楽しめる。

 それに、「3000円出してアルバムを買っても、全曲聞くわけでもないし」と考える人も結構多いはず。着うたがヒットする理由もそれで分かります。

 大塚愛の「さくらんぼ」のCDセールスが60万枚でしたっけ? でも、着うたは100万ダウンロードを記録したと聞きます。これはすごく象徴的な話だと思うんです。着うたがこれだけ売れているのに、レコード会社は1枚3000円のCDアルバムを売ってナンボという、“アルバムビジネス”の考え方を依然として崩そうとしない。“硬直化現象”と呼べる状況は絶対ありますよ。

結局、“CD”はどうなる?

――CCCDでも、輸入権の問題でも、音楽業界は何らかの“コントロール”をユーザーの世界に持ち込みたがっているように見えて仕方ないんですよ。例えば、映画では昔から興行権が認められていて、どういう形で収益をあげていくのかは映画会社側でコントロールできますよね。

津田:そうですね。僕も最終的に音楽業界がしたいのは「リージョンコードの導入」だと思いますよ。でも、CDでは規格上の問題もあって、導入が難しい。とすると、どこでやるのか。SACDやDVD-Audioで導入するのか、それとも新たなCD規格を作って導入するのか。このあたりは分かりませんね。

――エイベックスもCCCDの弾力的な導入を図っていくと発表したなかで、SACD、DVD-Audioの普及を目指すと述べてます。

津田:浜崎あゆみの新譜はSACDとDVD-Audioでも発売されています。SACDはCD-DAとのハイブリッド。DVD-AudioはDVD-Videoプレーヤーでも再生できるハイブリッドですが、いろいろ面倒なんですよ。SACDハイブリッドは日本国内に生産ラインが少ないということもありますし、マスタリングの手間は2倍になります。5.1ch収録なんてことになれば、さらにコストがかかります。レコード会社からすれば、正直、ハイブリッドにはしたくはないでしょうね。

 エイベックスとしては、CCCDをやめてノンパッケージのビジネスにシフトし、曲をガンガン配信してビジネスしていく、という考えを持っているんじゃないでしょうか。

――とすると、今後、CDという流通手段を使うパッケージビジネスは衰退していくのでしょうか?

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