「ADSLはビジネスモデルとして確立できた」――11月10日、2004年4月−9月中間期の連結決算を発表したソフトバンクの孫正義社長は胸を張った(関連記事)。
最終損益は60億4500万円の赤字で、前年同期の773億3800万円の赤字から大幅に改善した。Yahoo!BB事業で付加サービスの利用が拡大するなどして販売額が伸び、赤字幅が縮小した。
営業損益は、同325億円改善して67億9000万円の赤字だった。ECや金融事業が伸びたほか、イー・トレード証券などの株式売却による売却益463億1400万円も、赤字幅縮小に寄与した。
売上高は同34.7%増3037億600万円。主力のブロードバンド事業の売り上げ高が同75%伸び、959億9400万円となったことが大きく貢献した。
Yahoo!BBのユーザー数は、前年10月末の339万人から今年10月末には454万人に伸びた。ユーザー情報漏えい事件も、新規ユーザー獲得にはほとんど影響しなかったという。
さらに、高速サービスへの移行や、無線LAN、IP電話など付加サービスユーザーが増えたため、ユーザー1人あたりの平均収入(ARPU)が増加。9月単月での連結の営業損益は、「Yahoo!BB」開始以来初の黒字を達成したという。
第2四半期のARPUは4190円。1ユーザー・1カ月当たりの粗利は約2500円と「他ISPの2倍以上ではないか」(孫社長)。今後はYahoo!BB独占配信のオンラインゲームや、ソフト配信サービス「BBソフト」、VODサービス「BBTV」など付加サービスをさらに拡充し、ARPUを引き上げたい考えだ。
ただ、中間期のブロードバンド分野は346億7800万円の営業赤字を計上した。「Yahoo!BB 光」の設備投資などがかさんだほか、顧客獲得に600億円弱かけたためだ。孫社長は「ユーザーを増やそうとしなければ、四半期ごとに100億円レベルの利益を出せる」とし、当初の目標だった600万ユーザーを獲得するまでは、顧客獲得の手綱を緩めない姿勢だ。
金融やECも好調だ。金融事業は、ワールド日栄証券を子会社化して売り上げが伸びたほか、イー・トレード証券の収益が伸び、営業利益は同775%増の71億3500万円となった。
EC事業は、セキュリティ関連ソフトや法人向けアプリケーションが好調。コスト削減効果も手伝い、営業利益は同128%増の25億8000万円だった。
ヤフーを含むインターネットカルチャー事業の営業利益は同57%増の221億9600万円。猛暑による飲料業界の特需などで、広告売り上げが過去最高となった。
9、10月に相次いで申し込み受け付けを始めた日本テレコムの直収型固定電話サービス「おとくライン」、FTTHサービス「Yahoo!BB 光」にも、ADSL事業と同様のビジネスモデルを適用する。まずは大量のユーザーを囲い込み、高付加価値サービスで収益を伸ばす作戦だ。
おとくライン1日当たりの申し込み数はADSLのペースを大幅に上回っているという。「おとくラインの利益はADSLより大きく、儲かるサービス」(同)。このペースでユーザーが増えれば、来年度中には先行投資コストを吸収し、連結で単月黒字化できるという。
おとくラインのビジネスモデルにはADSLの教訓を生かした。「ADSLは、先行投資が大き過ぎ、連結での単月黒字化に3年かかった」が、おとくラインはバックボーンの共通化などで設備投資を減らしたほか、申し込み時のインセンティブも少なくして先行投資を抑える。
Yahoo!BB 光は「まだ助走段階」でユーザー数は非公表。Yahoo!BBのスタートダッシュでつまづいた経験を活かし、FTTHでは慎重に滑り出す。「ADSLの時は、インフラやサポート体制が整わないままスタートしてユーザーに迷惑をかけた。光はすべてを整えてから本格的にプロモーションする」。
このため、FTTHでユーザー拡大を本格化するのは来春の予定。地上波アナログTVの映像を、宅内のPCに無線/有線LAN伝送する「無線TVパック」など専用の付加サービスをアピールし、一気に拡販する計画だ。「ソフトバンクはどこまでいっても顧客獲得。トータルでナンバーワンになるまで続ける」。
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