ソフトバンク・メディア・アンドマーケティング(SBMM)は、同社が「おはなし絵本クラブ」で採用している電子書籍「FlipBook」についてのカンファレンスを開催した。カンファレンスでは、既存の電子書籍との違いなどについて説明が行われたほか、FlipBookならではの機能をいかした事例についての紹介が行われた。
FlipBookはビューワーソフト「FlipViewer」を用いる電子書籍フォーマット。動画や音声の再生も可能でハイパーリンクを埋め込むことも可能になっているほか、サーバとの連係機能によって、ページごとの閲覧状況などをトラッキング・分析することもできる。また、ページめくりも自動/手動を切り替えることができ、手動の際にはマウスを“ページをめくる”ように動かせばその通りに画面が切り替わる。
「紙の本を(コンピュータの中に)そのまま持ち込むことも重要だが、紙の本では体験できないことを提供したいと考えているときに出会ったのがFlipBook。提供を始めている絵本に限らず、さまざまな多様性があることに気が付いた」(SBMM 代表取締役社長 岡崎眞氏)
しかし、紙以外の媒体を情報の“入れ物”として利用する電子書籍は、既にFlipBook以外にも多く存在する。岡崎氏はこれまでの電子書籍との違いについて、「徹底的に紙の本の操作感に近づけたこと」「音楽や写真、動画との組み合わせるが可能なこと」「“めくる”という操作を取り入れたことによる、偶発的な出会いがあること」の3点を挙げる。
なかでも岡崎氏が強調するのは偶発的な出会い。現在、オンラインで買い物をする場合、購入者はある程度買いたいものを決めた状態でストアを訪問し、そこで商品を選択することが多い。町中を歩いているときのように、ふらっとストアをのぞき込み、購入に至るというケースは少ない。
しかし、FlipBookはページを複数単位でめくる「パラパラめくり」とも呼べる機能が搭載されており、通販カタログを何気なしにめくるような見方をすることができる。これによって、“本人が意識していない(いなかった)、「潜在的に求めている商品」への出会いを実現する”という。
また、ページをめくるという構造になっているため、大きなスペースを取る全面広告についてもユーザーへの心理的抵抗感を減らすことができるという。「インターネット上で一般的な広告はバナー広告。ページにコンテンツがあり、それを見に来たユーザーに同時に広告も見せるという仕組みだが、多くのサイトではバナーの大きさは限界に達している」(岡崎氏)
FlipBookがこれまでの電子書籍と大きく異なる点のひとつに、各種サーバとの連係機能が挙げられる。ライセンス管理を行うサーバやアクセス記録を保持するサーバ、動的な広告表示を行うサーバが、SBMMとFlipBookの開発元であるE-BookSystemsとの合弁会社であるイーブック・システムズから用意されている。
これらを組み合わせることによって、FlipBookを紙の持つ閲覧性の高さとインターネットならではのハイパーリンクを融合させた電子カタログとして利用することが可能になる。玩具小売り大手のトイザらス・ドット・コム・ジャパンでは、FlipBook形式の電子カタログ「わくわく X'mas カタログ」を用意、「カタログをめくり、欲しい商品が見つかればオンラインストアで購入する」という流れを作り出している。
カタログとして利用する場合には、データベースとFlipBook上のコンテンツをダイナミックに連動させることも可能で、常に最新の製品一覧や価格を配布したカタログに反映させることができる。
イーブック・システムズでは、FlipBookに関して各種サーバの提供のほか、ライセンス提供、ビューワやオーサリングソフトの提供を行っていく。同社では、来年第1四半期中のFlipBook販売サイト立ち上げを計画しているが、「販売サイトにどのようなコンテンツや機能を用意するかは検討中」(イーブック・システムズ COO 亀井朗氏)だという。
同社では今後、絵本や雑誌、カタログ以外にも写真集やミュージック・ブック、会報誌、学習教材などに向けた普及を目指す。
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