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低価格DLP機の実力は?――HP初のホームプロジェクター「ep7100シリーズ」レビュー:劇場がある暮らし――Theater Style(2/5 ページ)

» 2004年11月26日 14時26分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 一方、単板式DLPプロジェクターにはマイナス面もある。

  • 1枚の素子でカラー表現するため、時分割制御で各色の階調を作る。このためカラーブレーキングというノイズが見える場合がある(個人差がある)
  • 階調表現が苦手で疑似輪郭が出やすい
  • (ホームシアター向けDLPの場合)光の利用率は低めで、より大光量のランプが必要
  • MEMSの一種であるDMD素子はまだ高価で低価格化が難しい

 言い換えれば、カラーブレーキングノイズがあまり見えず、階調表現も十分だと考えるならば、DLPの方が(現時点では)コントラストや色バランスの点で優れる場合が“多い”(決して絶対的なものではないが)。

 ただしよく言われる寿命に関しては、透過型液晶パネルの改良もあって、実用上の差はさほど大きくない。フロントプロジェクターはテレビとは異なり、一日あたりの利用時間が少ないという背景もある。

 優れた面があるにもかかわらず、透過型液晶プロジェクターが市場の中心にある理由は、素子のコストが高いためだ。たとえばep7122が採用するXGA解像度のDMD素子を用いたホーム用プロジェクターは、これまで実売で30万〜50万円程度と高価だった。

 ところが本機はホーム用にコントラストや色純度を重視した作りながら、20万円台前半の低価格を実現し、解像度720pの透過型液晶プロジェクターとの価格差はかなり縮まっている。

絵画的な鮮烈さを感じる画質

 さて、実際に本機を動かしてみると、まずはその鮮烈な色に驚かされる。方式を問わず、他社のホームシアター向けプロジェクターとは全く異なる異次元の色だ。彩度やコントラストが伸長され、絵画的なほどに派手な画が出てくる。

 画質を語るときテレビ調、あるいはフィルム調といった表現が使われる事があるが、本機はそのどちらにも当てはまらない。ややS字を描くトーンカーブはフィルム的な表現とも言えるが、彩度強調した画はテレビライクでもある。もっとも印象的に近いのは、北米のカラー印刷物。北米で発刊されているカラー写真を中心にフィーチャーした雑誌は、コントラストや彩度が高く、コッテリとした色ノリのものが多い。本機の画像はそれに近い印象である。

 色温度設定はデフォルトで違和感なく、赤くも、黄色くも、青くもないニュートラルなもので好感を持ったが、色再現の派手さに関しては強い違和感を感じた。アナログの地上派放送は、それでもさほど気にならないが、ハイビジョン放送や映画のDVDでは彩度を控えめにカスタマイズした方がいいだろう。基本的な絵作りはきちんとしているので、派手な色遣いを抑え込めば、DLPらしい立体感のある画を楽しめるはずだ。

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