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「PS3」のGPUは“GeForce6以上”になる“あの次世代機”の描画性能をズバリ予想(2/5 ページ)

» 2004年12月09日 01時45分 公開
[トライゼット西川善司,ITmedia]

 PS2のGPUである「Graphic Synthesizer(GS)」はSCEと東芝との共同開発であったわけだが、今回は東芝は蚊帳の外になるのだろうか。

 実はそうでもなく、現時点ではさすがにNVIDIAの論理設計を元に開発している……という情報までは得られていないものの、東芝がPS2の時と同じようにPS3のGPUの開発に参加しているといった旨の情報の断片を筆者も聞き及んでいる。特にGPU内部の半導体の物理設計部分に関しては、PS2の時のGS同様にかなり東芝側の手が入ったものになると思われる。

 「NVIDIAはPS3のチップセット、サウンドやネットワーク、その他のI/Oブリッジチップといった部分も担当するのか」といった質問に対しては「今は何も言えない」と否定も肯定もしなかった。

 ちなみにXbox1では、nForce相当の機能を持つチップセットと、MCP(Media Communication Processor)と呼ばれる、いわゆるサウスブリッジチップ+周辺I/Oの担当までをNVIDIAがこなした。PS2では、I/O関連をPS1エンジンが担当するデザインを採用していたわけだが、この流れを踏襲すればPS3ではPS2エンジン部がこれを担当するというアイディアは十分ありうる。

 登場時は巨大だったPS2エンジンも、2004年9月に発表されたばかりの新型PS2(SCPH-7000)ではCPU(Emotion Engine:EE)とGSが1チップ化され、90ナノメートルプロセスルールにて製造された効果もあり、その大きさは1センチ四方にも満たない小ささとなった。PS2エンジンがPS3に搭載されると聞いても、今や驚く人は少ないことだろう。

 ちなみに、PS2でPS1エンジンにI/Oを担当させたことには、PS1用ソフトの互換性を維持する目的も兼ねていた。PS1用ソフト動作時には、このPS1エンジンがPS1用ソフトを走らせていたのだ。これまでの一連のPS3関連の発表でも、SCE社長の久夛良木健氏は「PS3における互換性維持は最重要課題」と述べており、互換性維持のためにPS2エンジンをPS3に搭載する可能性は高く、結果、どうせならこれにI/O関連を任せるというソリューションは十分考えられるわけだ。もっとも性能的にかなり上を行くPS3の場合、互換性に関してはエミュレーションという選択肢もないわけではないが。

プログラマブルシェーダ時代にやっと到達できるPSフォーマット

 PS3がNVIDIAベースのGPUを活用することで何が起こるのか。

 まず、ひとつ確実かつ当たり前に言えるのは、そのグラフィックス処理系が「プログラマブルシェーダ」ベースになるということだ。すでにPCやXbox1では導入ずみの概念だが、プレイステーションというフォーマットでは初導入の概念となる。

 このチャンネル(LifeStyle)の読者はこの分野に詳しくない人も多いと思うので、もうちょっとかみ砕いて解説しよう。

 プログラマブルシェーダの概念が登場以前の3Dグラフィックスでは「そのGPUの機能を利用した表現以外はできない」という大原則があった。PS2のGSも(基本的には)この世代のグラフィックス処理系に位置している。これがプログラマブルシェーダベースになると、そのグラフィックス表現そのものを開発元自身が自由に創造できるようになる。

 仮に「リアルな水面の表現をしたい」とする。プログラマブルシェーダ・アーキテクチャベースのGPUでは、このリアルな水面に見えるようなシェーダプログラムを作成して、これにその材質表現を行わせるような方針を採る。

 例えば水面は一般に周りの情景を映し混むわけだが、ただこれを均一に行うと、水面というよりも水銀みたいな質感になってしまう。水面は視線から遠くに行けばいくほど周りの情景を強く映し、近くなればなるほど周りの情景よりも水面下、すなわち水底の情景が見える傾向がある。こうした反射系を広義に「フレネル反射」というが、こうした反射モデルをプログラムして実装すれば、リアルな水面の反射表現ができるようになるのだ。

 このフレネル反射の効果は、自動車のボディ表現などのリアリティ向上にも貢献する。作成したシェーダはアイデアやセンス次第で様々な使い方が見出すことができ、このシェーダプログラム蓄積とそのアイデアとセンスのコンビネーションこそが、そのゲーム開発スタジオの資産となっていくわけだ。もちろんプログラマブルシェーダはリアリティ向上だけでなく芸術的効果が増すような使い方もでき、実際、PCの世界では油絵調や鉛筆画風シェーダなどのシェーダプログラムの例も発表されている。

photo PCゲーム「Half-Life2」の水面表現もフレネル反射に配慮したシェーダが活用されている。近場は水底がよく見え遠くに行くにつれて周りの情景の映り込みが強くなっている。この他、水面のさざ波表現はプログラマブルシェーダによるバンプマッピングを駆使して実現している。

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